ストライキ権はILO条約で保護
―国際司法裁判所が見解
国際司法裁判所(ICJ)は5月21日、労働者のストライキ権が国際労働機関(ILO)条約で保護されているとの見解を、勧告的意見で示した。「ストライキ権が国際法上どこまで保障されているか」という長年の労使間の解釈の違いに、国連の最高司法機関が見解を示したことになる。法的拘束力はないが、国内外のストライキ権をめぐる労働法の議論に一定の影響を与える可能性がある。
労使で相違する解釈
ICJの岩沢雄司所長(裁判長)は5月21日、オランダ西部ハーグにあるICJの法廷で、「労働者のストライキ権はILO第87号条約で保護されている」との見解を勧告的意見で示した。
ILO第87号条約(結社の自由及び団結権保護条約)は、労働者の結社の自由や団結する権利を保障している(注1)。第3条で「労働者団体及び使用者団体は、その規約及び規則を作成し、自由にその代表者を選び、その管理及び活動について定め、並びにその計画を策定する権利を有する」と規定しているが、この条文に「ストライキ」という文言は使われていない。
このため、使用者側は、同条約がストライキ権を保障しているとは言えないと主張していた。一方、条約の履行を監視するILOや労働者側は、「活動や計画を立てる権利」の中に、労働者がみずからの利益を擁護するための重要な手段であるストライキ権も含まれると主張し、長年対立が続いていた。
こうして条約の解釈を巡って労使間の対立が続いてきたことを受け、ILO理事会は2023年11月、ICJに対して本件について正式に法的見解(勧告的意見)を示すよう求めていた。
ストライキ権の保護は「結社の自由」に内包
岩沢裁判長が読み上げた主な見解によると、労働者が自らの利益を擁護するための「活動」の中にストライキは含まれており、ストライキ権の保護は結社の自由を保障するうえで内包されていると結論づけた。ただし、この判断は「ストライキ権が条約で保護されているか否か」という原則に答えたものであり、どのようなストライキが合法かといった具体的な内容、範囲、行使の条件について細かく定義したものではない、と付け加えている。
ICJは14人の裁判官による審理を経て、10対4の多数決で労働者側の主張を支持する判断を下した。反対した裁判官4人の出身国はスロバキア、フランス、中国、ヨルダンだった。
ICJの勧告的意見には、判決とは異なり法的拘束力はないが、国際労働法および国内労働法に一定の影響を与える可能性がある。ICJの諮問意見を受領したILOは、2026年11月の第358回会合でこの問題を検討する予定としている。
なお、ILOが国際労働条約の解釈を求めて訴えるのは今回が2回目であり(注2)、国際司法裁判所に付託するのは初めてとなる。
今回の見解を受けて、国際労働組合総連合(ITUC)のリュック・トライアングル書記長は、「この勧告的意見についてICJに感謝する。ICJは、国際法が、労働組合のみならずILOシステムの大部分で数十年にわたり共有されてきた長年の理解を支持していることを確認した」と評価(注3)。一方、国際使用者連盟(IOE)は、勧告的意見が、ストライキ権の「正確な内容、範囲、条件についての決定を伴ったものではない」とされたことに注目しているとの見解(注4)を示している。
注
- 1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号) | International Labour Organization
(本文へ) - 最初の要請は1932年に、1919年の夜間労働(女性)条約(第4号)(2017年にすでに廃止)の解釈に関して法的見解を求めていた。(本文へ)
- ITUCウェブサイト
(本文へ) - IOEウェブサイト
(本文へ)
参考資料
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