OECD諸国への移住、前年比4%減も高水準を維持
―『国際移民アウトルック2025』
経済協力開発機構(OECD)は11月、『国際移民アウトルック2025(International Migration Outlook 2025)』を公表した。報告書によると、2024年のOECD諸国への新規恒久移住者数は前年比4%減となったものの、620万人に達し、依然として歴史的に高い水準を維持している。背景には「家族の呼び寄せ」や「人道的移住」の増加がある。他方、労働移住は前年比21%減少した。多くの国で難民庇護制度の厳格化が進む一方、医療分野などでは外国人材への依存が高まる傾向もみられる。
2024年の外国人労働市場の動向
2024年時点でOECD諸国に居住する外国人は1億6,000万人を超え、人口の11.5%を占めていた(2014年の9.1%から10年間で2.4ポイント上昇)。多くのOECD諸国(EU諸国、イギリス、ニュージーランドなど)で恒久移住が減少する一方、アメリカでは引き続き増加し、前年比20%増となった。
コロナ禍を経て国際的な人的移動が再び活発になる中、2024年のOECD諸国への新規恒久移住者数は前年比4%減となった。しかし、新規移住者総数は620万人と歴史的に高い水準を維持しており、コロナ前の2019年を15%上回った。この高水準を支えている主要因は「家族の呼び寄せ」である。また、人道的移住も、近年の庇護申請数の増加などを背景に23%増加した。一方、2020年以降、増加基調にあった労働移住は21%減少した。OECDはこの減少が一時的なものなのか、今後も継続するのかについて、動向の注視が必要としている。
外国人(移住者)の労働市場はコロナ禍を経て改善傾向が続いたが、2024年は国によって状況が異なる。外国人の就業率が改善したのはOECD加盟国の約半数にとどまったが、総じて就業率は7割を超え、失業率は10%未満であった。特に外国人女性の就業率改善が顕著で、OECD諸国の3分の1で女性就業率が上昇し、男女格差は近年で最も小さくなった。
受入れ抑制と庇護・留学生政策の見直しが進展
OECD諸国への移住者の高水準の流入が続く中、多くの受入れ国では、総受入数を抑制したり、不足人材の確保に向けて特定分野に対象を絞り込む傾向が強まっている。
一方、難民庇護制度では審査の迅速化や給付の削減、家族呼び寄せ制限などが導入され、厳格化が進む。OECD諸国への庇護申請は約300万件で、そのうち半数以上がアメリカで登録された。その主な出身国はベネズエラ、コロンビア、シリア、アフガニスタンなどである。
留学生政策も見直しが行われており、一部の国では入学要件を厳格化する一方、他の国では留学生の就労移行を促すため在留資格を継続するための制度整備が進んでいる。
新規移住者は国内労働者より34%低い賃金水準でスタート
OECDが2000~2019年に実施した15カ国のパネル調査の分析によれば、新規移住者の賃金は、同年齢・同性の国内生まれ労働者より34%低い水準からスタートする。これは新規移住者が低賃金分野に偏りがちな構造によるものだが、移住後5〜10年で格差は縮小し、一部は高賃金職へ移動することが示されている。
この職業移動を促進するには、求職情報提供、キャリアカウンセリング、住宅支援、地域交通網の改善などが重要とされる。
医療分野で外国人医師・看護師への依存が継続
高齢化が進むOECD諸国では、医療分野における外国人材への依存が続く。2020〜21年のコロナ禍では、外国生まれの医師は83万人、看護師は175万人に達し、医師の約4分の1、看護師の約6分の1を占めた(図表1)。外国で研修を受けた医療人材も増加しており、同期間におけるその人数は、医師60万6,000人、看護師73万3,000人に上る。
| 2000年~2001年 | 2010年~2011年 | 2020年~2021年 | |||||||
| 総数 | 外国生まれの人数 | 外国生まれの割合(%) | 総数 | 外国生まれの人数 | 外国生まれの割合(%) | 総数 | 外国生まれの人数 | 外国生まれの割合(%) | |
| 医師 | 2,295,653 | 415,936 | 18.1 | 2,744,058 | 590,650 | 21.5 | 3,772,752 | 829,651 | 22.0 |
| (22カ国) | (27カ国) | (29カ国) | |||||||
| 看護師 | 6,708,570 | 711,877 | 10.6 | 9,099,789 | 1,281,355 | 14.1 | 10,429,713 | 1,745,254 | 16.7 |
| (23カ国) | (29カ国) | (30カ国) | |||||||
出所:OECD(2025).
日本への移住状況と制度変更
日本は2024年、長期または恒久的な在留資格で17万7,000人を新規に受け入れた(前年比8.6%増)。内訳は、労働移住63%、家族呼び寄せ34%、人道移住1%。国籍別ではベトナム、中国、インドネシアが上位3カ国を占め、特にインドネシアからの増加(+1万6,000人)が顕著であった。
外国人総人口は340万人(日本人口の2.7%)で、2014年比65%増となった。このほか、留学生の在留許可は16万7,000件、一時滞在ビザは10万2,000件、技能実習生は16万5,000件であった。日本からOECD諸国への移住は2万2,000人で、主な移住先はドイツ、アメリカ、オランダなどである。
制度面では、2024年6月に技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する法律が成立した。これは特定技能制度への移行を前提とする仕組みで、2027年4月施行予定である。特定技能制度も拡大し、自動車運送業、鉄道業、林業、木材産業が追加され、16分野となった。受入れ・共生分野では、2018年策定の「総合的対応策」が毎年見直されており、2022年には「外国人との共生社会実現に向けたロードマップ」が策定された。2024年には出入国在留管理庁が外国人支援コーディネーター育成の6カ月研修(第1期)を開始した。また各地で「共に生きる社会づくり推進月間」が設けられ、啓発活動が実施された。加えて、同年4月から「定住支援プログラム」が始まり、日本語教育や生活ガイダンスが提供されている。
参考文献
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2025年 > 11月
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- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 外国人労働者
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