OECD諸国への移民、05年以来の高水準
 ―OECD国際移民アウトルック2023

カテゴリ−:雇用・失業問題外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2023年11月

経済協力開発機構(OECD)は10月23日、『国際移民アウトルック2023 (International Migration Outlook 2023)』を発表した。報告書によると、2022年は日米欧など加盟38カ国への新規永住移民が610万人に達し、2005年以来の最多を記録した。このほかロシアによるウクライナ侵攻によって、何百万ものウクライナ難民が発生したことなどを伝えている。

移民・難民申請ともに高水準

2022年のOECD諸国への新規永住移民は610万人(前年比26%増)に上り、2005年以来の高水準となった。人の移動が新型コロナによって大幅に制限される前の2019年と比較しても14%増加した。増加の主な要因は、OECD諸国における労働力不足や技能人材不足である。ドイツ、オーストラリア、スペインなど複数の国では、労働力不足が特に顕著で、労働力移民の受入れ制度の改正が計画されている。

移住先を国別に見ると、アメリカが104万人(前年比25%増)と最多で、次にドイツが64万人(同21%増)、イギリスが52万人(同35%増)と続く。日本は10.6万人(同58%増)だった。

また、2022年は、難民・庇護申請も増加しており、OECD諸国―特に米国・欧州―で200万件以上の新規申請があった。増加の主な要因は、ロシアによるウクライナ侵攻で、2015年(欧州難民危機)の170万件を大きく上回り、前年水準のほぼ2倍となった。OECD諸国に逃れたウクライナ人は、侵攻以来23年6月時点で約470万人に上り、このうちドイツが100万人強、ポーランドが100万人弱、アメリカとチェコが各40万人弱を受け入れている(図表1)。

図表1:OECD諸国におけるウクライナ難民の受入れ状況(2022年)
画像:図表1

出所:OECD(2023).

移民の母特有の課題

報告書は、特集として「移民の母親の就労状況」にも焦点を当てている。それによると、総じて移民は男女ともに就業率が上昇(2022年の移民の就業率はOECD全体で72.3%)しているが、子のいない移民女性や受入国生まれの母親と比較すると、育児中の移民の母親は、大きな不利益や困難に直面している。受入国生まれの母親と移民の母親の就業率の差はOECD平均で20ポイントに上り、保育サービスへの早期アクセスを促進するなどの措置が求められている。OECDは報告書の中で、「移民の統合政策においてジェンダー問題に取り組むことのメリットは大きく、受入れ国と同等水準にまで男女格差を縮小することができれば、さらに580万人の移民女性の就労が可能になる」と指摘している。

日本―新たに「J-Skip」、「J-Find」を導入

日本については、国別報告の中で、2023年4月から学歴又は職歴と、年収が一定の水準以上に達していれば、「高度専門職」の在留資格を付与する「特別高度人材制度(J-Skip)」や、優秀な海外大学等の卒業者に対する求職・起業準備のための最長2年間の在留資格を付与する「未来創造人材制度(J-Find)」が新たに導入されたことを伝えている。さらに、外国人技能実習制度(TITP)と特定技能制度(SSWS)の見直しが進められていることや、2022年7月に日本とラオス両政府が特定技能に係る協力覚書(MOC)を交わしたことなどが紹介されている。

参考資料

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