DGB組合員数と協約適用率の動向

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2023年9月

ドイツ労働総同盟(DGB)によると、2022年の組合員総数は、前年から約8.5万人減少し、564万3762人となった。採用数の増加により組合員数が増えた警察官労組(GdP)をのぞき、全ての産業別労働組合(産別労組)の組合員数が減少した。なお、2021年の労働協約の適用率(就業者ベース)は、旧東独地域で45%、旧西独地域で54%と、それぞれ前年比で1ポイントずつ上昇した。

警察官労組(GdP)は増加、総数では減少

DGB傘下の8つの産別労組のうち「警察官労組(GdP)」では組合員数が増加したが、残り7組織では軒並み減少した(図表1)。

図表1:DGB加盟産別の組合員数の推移(2020-2022)
画像:図表1

出所:DGB(2023).

最大産別である「金属産業労組(IG Metall)」の組合員数は、2011年に増加に転じて以降、当該産業の底堅い需要を背景に毎年逓増していたが、2019年の不況や2020年からのコロナ禍の影響でここ数年減少している。また、「警察官労組(GdP)」の組合員数は、国家安全保障の観点から採用を大幅に増やしており、前年から2229人増の20万3941人だった。

しかし、この増加分を含めても、DGB全体の組合員数は前年比で8.5万人以上減少しており、この傾向が今後も続けば、国内の労働条件改善闘争が徐々に収縮する恐れもある。

労働協約適用率は下落傾向だが、21年は若干持ち直し

図表1は、「産業別労働協約」と「企業別労働協約」を合わせた労働協約の適用率(就業者ベース比率)の推移を示している。過去23年間に産業構造の変化や、外国企業の参入等の影響を受けて、労働協約の適用率は低下している。1998年から2021 年までの間に、旧西独地域で76% から54%、旧東独地域で63% から45% まで低下した。ただ、直近の2021年は、旧西独地域、旧東独地域ともに、前年比で1ポイント、2ポイント上昇した。

図表1:労働協約の適用率(就業者ベース)の推移(1998年~2021年) (単位:%)
画像:図表1

出所:Statistisches Bundesamt (Destatis), 2023新しいウィンドウ

ハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)の4月の発表資料によると、労働協約のない事業所で働くフルタイム労働者は、労働協約のある事業所と比較して、週平均で54分長く働いており、収入は10.8%少なかった。WSIは、労働協約が長期的に低下している背景には、工業や大企業が中心だった時代から徐々にサービス業や小規模企業に労働市場の中心が移行する中で、労働組合の組織化や組合員の維持が徐々に難しくなっていることがあると分析する。その上で、こうした状況が続くと労働市場における不平等な配分が拡大し、労働者の就業条件(労働時間や収入など)に良くない影響を及ぼすと警告している。

ドイツでは、労働協約の安定と強化を図るため、2015年1月1日に「協約自治強化法(Tarifautonomiestärkungsgesetz)」が施行され、一般的拘束力宣言(注1)の基準要件を大幅に緩和したり、法定最低賃金を導入するなどして、労使協約の適用が及ばない低賃金労働者の労働条件改善を図っている。

参考資料

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