上海市が労働者の確保・雇用安定策を発表

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2023年2月

「ゼロコロナ」政策撤廃後、景気回復を目指すなか、上海市政府はこのほど、労働者の確保や雇用安定を図るための一連の対策を打ち出した。具体的には、慢性的な人手不足が続く特定業種や農村からの出稼ぎ労働者(農民工)を雇う企業へ補助金を支給したり、配車や配達などに従事するフレキシブルワーカーの支援を強化する。

補助金の支給

上海市政府は2022年12月に、「雇用安定及び労働者の確保を図るため、市内の関連産業及び企業の秩序ある運営を支援する一定の政策措置に関する通知」を発表した(注1)。2022年12月25日に発効し、有効期限は2023年6月30日までとする。EC(電子商取引)プラットフォームや宅配業、建設・工事業、あるいは、農村からの出稼ぎ労働者(農民工)を雇う企業を中心に、労働者の確保と雇用安定のための補助金を支給する。補助金の費用は、上海市と区の行政が共同で負担する。

ECプラットフォームや宅配業では、2022年12月25日から2023年1月27日までの期間中、実働人員1人当たり毎日60元の補助金を企業に対して支給する。新年期間(2022年12月31日~2023年1月2日)および春節期間(2023年1月21日~27日)は、実働人員1人当たり毎日150元の補助金を同じく支給する。

建設・工事業においては、重要な建設プロジェクトが操業停止に陥らないよう支援する。このため支援期間中に、当日の実働人員が2022年11月末の実働人員の80%以上に達した重要な建設プロジェクトに対して、実働人員1人当たり毎日100元の補助金を支給する。

農民工に関しては、春節後の職場復帰を支援する。例えば、企業がチャーターバスをレンタルし、地方から上海市の職場へ復帰する農民工を送迎する場合、一企業あたり、チャーター実費の50%(上限額30万元)を補助する。

「フレキシブルワーカー」への支援

さらに、上海市政府は2023年1月20日、景気回復を目指し、経済・社会の発展を促すため、「自信を高め、需要を拡大し、成長を安定させ、発展を促進するための上海市行動方案」を発表した(注2)。企業の減税や負担軽減をめぐり、10項目、32措置を提案している。2023年2月1日に発効し、有効期限は同年12月31日までとする。また、労働者の確保と雇用の安定を図るため、以下のような措置をあげている。

まず、2023年12月31日まで、雇用主の社会保険料の延滞を分割または月割りで補填できるようにし、期間中の延滞金を免除することで、企業の雇用コストの削減を図る。

雇用安定補助金を一括で給付し、企業の雇用の安定と拡大を支援する。具体的には、失業登録後3か月以上経過した者や2023年の新卒者と、1年以上の雇用契約を締結した上で社会保険料を支払った企業に対し、一人当たり2000元の雇用安定補助金を支給する。

このほかオンライン配車、ネットデリバリーといった「フレキシブルワーク」などの新しい就業形態の労働者の権益を保障するため、労働災害保険制度の試行を引き続き推進し、末端の宅配業者の労働災害保険加入を優先的に促進する。また、こうした労働者が利用できる公共的な休憩所を拡充するなど、労働環境を改善するためのサービスや設備の設置を促進する。

参考文献

  • 上海市人民政府網、NNA

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