雇用維持支援金の申請事業所数が9月末で前年通期の約53倍に増大

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

韓国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2020年12月

新型コロナウイルス感染症の影響により、日本の雇用調整助成金に相当する「雇用維持支援金」の申請事業所数が2020年9月末時点で前年通期の約53倍に達した。政府は、雇用維持支援金の予算規模を当初予算の約75倍に拡大した。雇用維持支援金の概要及び新型コロナウイルス対策として講じられた制度拡充措置について紹介する。

雇用維持支援金制度の概要

雇用維持支援金は、景気の変動、産業構造の変化等による事業規模の縮小、事業の廃業または転換により雇用調整が避けられなくなった事業主が、労働者に対する休業、休職、職業転換に必要な職業能力開発訓練、人材の再配置等を実施し、またはその他の労働者の雇用安定のための措置(雇用維持措置)を講じた場合、雇用労働部長官がその事業主に対して人件費の一部を支援する制度である。

支援対象は、雇用維持措置の実施初日の属する月の直前の月(基準月)の在庫量が50%増加、売上高・生産量が15%減少など、一定の要件を満たす事業主である(表1)。

支援水準は、事業主が労働者に支給した休業・休職手当の3分の2(大企業は2分の1)で、1日6.6万ウォン、年間180日までを限度としている(表1)。

表1:支援条件および支援水準
画像:表1

出所:雇用労働部「雇用維持支援金制度の案内」(2020年2月)

事業主は、経営の悪化などで雇用維持措置(休業ᆞ休職)を実施する1日前までに「雇用維持措置計画書」を雇用センターに提出する必要がある。事業主が雇用維持措置計画に基づいて休業又は休職を実施して休業ᆞ休職手当を支給した場合、雇用維持支援金を雇用センターに申請できる。申請手続きは、雇用保険のホームページ新しいウィンドウで行うことができる。雇用センターは事実関係を確認した後、雇用維持支援金を事業主に支給する(表2)。

表2:雇用維持支援金申請手続き
画像:表2

出所:雇用労働部「雇用維持支援金制度の案内」(2020年2月)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う制度拡充措置

新型コロナウイルスが原因で操業が中断された事業所は、2020年1月29日から「国家感染症危機警報」の解除時まで、生産量の減少などの要件を証明する必要なく、雇用調整が避けられなくなった事業主として認定されることとなった。

新型コロナウイルス感染症の被害を受けた企業に対する支援水準は、2020年9月30日までの間、優先支援対象中小企業(産業別に、常時使用する労働者数が100~500名以下の企業及び中小企業基本法上の一定の要件を満たす企業)は休業・休職手当の90%、大企業は同67%に引き上げられた(表3)。

表3:雇用維持支援金の支援水準(2020年)
画像:表3

出所:雇用労働部報道資料(2020年7月14日付)

政府は、旅行業、観光運送業、観光宿泊業、公演業、航空機取扱業、免税店、展示・国際会議業、空港バスの8つの観光関連業種を「特別雇用支援業種」に指定し、事業所の規模にかかわらず、2021年3月31日までの間、支援水準を休業・休職手当90%(1日当たりの上限は7万ウォン)に引き上げた。2020年8月24日からは、この8つの特別雇用支援業種の企業の支援期間を60日延長した(最大180日→240日)。

さらに、政府は2020年10月20日、一般業種を対象とする雇用維持支援金の支援期間も2020年内は60日延長することとした(最大180日→240日)。雇用保険法施行令の改正前に、雇用維持支援金の支援期間(180日)が満了した事業主も、雇用維持措置計画を雇用センターに届け出て実施した場合は、延長期間の支援金を受け取ることができる。

その他の新たな特例措置

韓国の国会が2020年7月3日に可決した第3次補正予算により、雇用調整が避けられなくなった事業主が無給休職を実施する場合、無給休職期間中の労働者に雇用維持支援金(最大50万ウォン×3カ月)を支給する「無給休職迅速支援プログラム」が新設された。これにより、無給休職実施前に講じなければならない有給雇用維持措置の期間要件が、特別雇用支援業種(旅行業、観光運送業、観光宿泊業、公演業、航空機取扱業、免税店、展示・国際会議業、空港バス)は1カ月から0カ月に、一般業種は3カ月以上から1カ月に短縮された。

また、資金不足により休業手当(平均賃金の70%以上)の支払能力がない事業主を対象に、雇用維持資金を融資する制度が新設された。事業主が融資を通じて休業手当をまず支給し、雇用維持支援金で融資金を後で償還するしくみである。

さらに、労使が雇用維持に関する合意を締結して一定期間雇用を維持した場合、最大6カ月賃金減少分の一定割合(50%)を支援する雇用安定協約支援金が新設された。

申請件数の大幅増加と予算規模の拡大

雇用維持支援金の申請事業所数は9月末時点で81,351件に達した(表4)。これは2019年通期の申請事業所数(1,514件)の約53倍に相当する。

表4:雇用維持支援金の申請事業所数
画像:表4

出所:雇用労働部資料を基に作成

申請事業所数の増大に伴い、雇用調整助成金の予算規模は、2020年当初予算の351億ウォン(対象者2.2万人)から、第4次補正予算(2020年9月22日成立)までの増額分を合せて総額2兆6,476億ウォン(対象者161万人)に拡大(約75倍)された。

参考

  • 雇用労働部ウェブサイト

参考レート

関連情報