雇用労働部所管2020年第3次補正予算の内容

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2020年7月

韓国の国会は2020年7月3日、新型コロナウイルス感染症による内需萎縮や雇用減少の克服に向けた対策及びポストコロナ時代の長期戦略である「韓国版ニューディール」事業の着手予算を盛り込んだ、総額35兆1,418億ウォンの第3次補正予算を可決した。雇用労働部が所管する補正予算は7兆118億ウォンで、①在職者の雇用維持及び失業者等脆弱階層の生計・再就職支援、②若年者デジタル雇用、若年者の仕事経験等の直接雇用創出、③デジタル・新技術人材養成等、韓国版ニューディール推進支援、④火災・爆発等高危険現場の事故予防強化――などを内容としている(表1)。

表1:2020年雇用労働部所管第3次補正予算の主な内容(単位:億ウォン)
画像:表1
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出所:雇用労働部報道資料「2020年雇用労働部所管第3次補正予算の主な内容」(2020年7月3日付)を基に作成。

雇用維持支援金による雇用維持支援策の拡大

在職者に対する雇用維持支援策として、雇用維持支援金の予算規模を第3次補正予算成立前の7,963億ウォン(対象者50万人)から1兆3,668億ウォン増額し、総額2兆1,632億ウォン(対象者137万人)とした。当初予算の351億ウォンに比べると約62倍に拡大された。

労働者の失業予防と生計安定を目的として、雇用調整が避けられない事業主が無給休職を実施する場合、無給休職期間中の労働者に雇用維持支援金(最大50万ウォン×3カ月)を支給する「無給休職迅速支援プログラム」を新設する。無給休職実施前に講じなければならない有給雇用維持措置の期間要件を、特別雇用支援業種(旅行業、観光運送業、観光宿泊業、公演業、航空機取扱業、免税店、展示・国際会議業、空港バス)は1カ月から0カ月に、一般業種は3カ月以上から1カ月に、それぞれ短縮する。

優先支援対象中小企業に対する雇用維持支援金の支援水準は、2020年4月から6月までの期間限定で休業・求職手当の90%に引き上げられている。今回この特例期間を9月30日まで延長(表2)し、そのための予算を計上した。

表2:雇用維持支援金の支援水準(2020年)
画像:表2

出所:雇用労働部報道資料(2020年7月9日付)

現行の雇用維持支援金は、事業主が支給した休業手当を事後的に支援する制度であるが、資金不足により休業手当(平均賃金の70%以上)の支払能力がない事業主を対象に、雇用維持資金を融資する制度(予算規模952億ウォン)を新設する。事業主が融資を通じて休業手当をまず支給し、雇用維持支援金で融資金を後で償還するしくみである。

また、労使が雇用維持に関する合意を締結して一定期間雇用を維持した場合、最大6カ月間賃金減少分の一定割合(50%)を支援する雇用安定協約支援金(予算規模350億ウォン)を新設する。

雇用保険未加入者に緊急雇用安定支援金を支給

新型コロナウイルスにより所得・売上が減少した特殊形態労働従事者(契約の形式に関係なく労働者と類似の労務を提供しているにもかかわらず勤労基準法等が適用されない者)、フリーランス(特定の事柄に関してその都度契約を結び、集団や組織の拘束を受けずに自身の判断により独自に働く者)、零細自営業者等を対象に、「緊急雇用安定支援金」(月50万ウォン×3カ月分)を支給する。2020年当初予算の予備費9,400億ウォンで2020年6月1日から事業を開始し、受付後2週間以内に第1回分として100万ウォンを支給する。さらに、第3次補正予算に計上した5,700億ウォンで、第2回分として残りの50万ウォンを支給する。

失業者等の生計及び再就職の支援

失業給付の申請が急増していること等を勘案し、失業給付の予算規模を当初予算の9兆5,158億ウォン(対象者136.7万人)から、第3次補正予算で3兆3,938億ウォン増額し、総額12兆9,095億ウォン(対象者185.6万人)に拡大する。

医療費、子どもの教育資金、少額生計費等の労働者生計費融資制度の限度額を1人当たり2,000万ウォンから3,000万ウォンに増額し、予算規模を1,103億ウォン(対象者1.8万人)から補正予算で1,000億ウォン増額して総額2,103億ウォン(対象者3.8万人)に拡大する。

失業者・無給休職者を対象とする職業訓練を拡大し、予算規模を8,180億ウォン(対象者50.4万人)から、補正予算で1,533億ウォン増額し、総額9,712億ウォン(対象者62.5万人)に拡大する。訓練期間中の生計費貸付制度の対象者に無給休職者、特殊形態労働従事者も含め、予算規模を428億ウォン(対象者0.8万人)から、補正予算で963億ウォン増額し、総額1,392億ウォン(対象者2.6万人)に拡大する。

公共部門及び若年者の直接雇用創出

民間部門においては、若年者のデジタル雇用及び仕事経験を支援する。IT活用可能職務に若年者を採用した中小・中堅企業に6カ月間人件費(月最大180万ウォン及び間接労務費10万ウォン)を支援する(予算規模5,611億ウォン、対象者6万人)。

また、若年者を短期採用して仕事経験の機会を与える中小・中堅企業に6カ月間人件費(月最大80万ウォン及び管理費として人件費の10%)を支援する(予算規模2,352億ウォン、対象者5万人)。

新型コロナウイルスによる雇用条件の悪化で就職が難しい失業者の雇用を促進するため、中小・中堅企業向けの採用奨励金を新設する。採用者1人当たり最大月80~100万ウォンを6カ月間支援する(予算規模2,473億ウォン、対象者5万人)。

公共部門においては、産業安全・社会的経済分野のビッグデータ構築のため、非対面のデジタル分野の雇用を創出する。産業安全分野では、製造業事業所30万カ所の安全保健情報実態調査及びその結果のデジタル化のため、2,250人を直接雇用する(予算規模302億ウォン)。社会的経済分野では、地域別社会的経済資源(サービス・組織状況、地域問題等)の調査及びそのデータベース化のため、約1,700人を直接雇用する(予算規模112億ウォン)。

デジタル・新技術人材養成等、韓国版ニューディール事業の推進支援

文在寅大統領は2020年7月14日、ポストコロナ時代の国家発展戦略として、雇用セーフティーネットの土台の上に、デジタルニューディールとグリーンニューディールの2つを軸とする「韓国版ニューディール事業」の総合計画を発表した。

韓国政府は2025年までに、デジタルニューディールに58兆2,000億ウォン、グリーンニューディールに73兆4,000億ウォン、雇用のセーフティーネット強化に28兆4,000億ウォンの総額160兆ウォンを投資し、190万人の雇用を創出する計画である。

雇用セーフティーネット強化の分野では、①全国民雇用セーフティーネットの構築、②雇用保険未加入者の生活・雇用の安定、③未来適応型職業訓練体系の改編、④産業安全及び勤務環境の革新、⑤雇用市場新規進出及び転換の支援――等の中心的課題に集中的に投資を行う。

雇用労働部が所管する第3次補正予算には、韓国版ニューディール事業のデジタルニューディールに関連して、人材育成、遠隔訓練インフラ拡充などの事業が盛り込まれた。AI大学院(8カ所)等、主要大学と新技術代表企業がデジタル・新技術分野の人材を養成できるよう特化訓練を支援する。現在14関係省庁が21デジタル・新技術分野の62人材養成事業を省庁横断予算で推進しており、これらの事業に補正予算で68億ウォンを追加投入する。また、遠隔訓練インフラを拡充するため、オンライン訓練プラットフォーム(STEP)サーバーを増設(15億ウォン)する。優秀な訓練機関585カ所の民間LMS(オンライン訓練管理システム)賃貸料(6カ月分、1,800万ウォン)の一部(50%)を支援するため、予算を53億ウォン増額する。

火災・爆発等高危険現場の事故予防の強化

韓国では2020年3月4日、韓国化学大手ロッテケミカルの大山工場(忠清南道)において、ナフサを原料にエチレンを生産する「ナフサ分解工場」の爆発事故が発生した。従業員や地域住民などが負傷し、工場の正常化までには設備の設置などに6カ月以上かかると見込まれた。

韓国政府は第3次補正予算に火災・爆発等高危険現場の事故予防策として、火災・爆発予防施設の設置支援策を盛り込んだ。油蒸気換気ファン(300億ウォン、3,000カ所)、可燃性ガス感知器(120億ウォン、3,000カ所)、溶接作業不燃布・避難誘導ライン(80億ウォン、8,000カ所)、猛暑に備えた移動式エアコン(200億ウォン、8,000カ所)の設置にかかる費用を計上した。

また、小規模建設現場・製造業事業所等の事故危険現場を対象に、点検・安全技術支援等の密着管理を強化する(72億ウォン)。

参考

  • 雇用労働部報道参考資料「2020年雇用労働部所管第3次補正予算の主な内容」(2020年7月3日付)
  • 雇用労働部報道参考資料「2020年雇用労働部所管第3次補正予算案の主な内容」(2020年6月3日付)
  • 職合ニュース(2020年7月14日付)「韓国版ニューディール」に14.2兆円 190万人の雇用創出へ」

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