政府負担を見直し雇用維持スキームなど延長へ

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2020年6月

政府は、新型コロナウイルスに関連した企業支援策の一環として実施している賃金助成制度につき、10月末まで延長するとの方針を示した。労働者の職場復帰を促すため、適用条件を緩和するとともに、雇用主負担の段階的な引き上げを予定している。併せて、自営業者の所得補助スキームについても延長を決めている。

雇用主負担を段階的に引き上げ

政府は企業向け支援策の一環として、事業に支障が生じた雇用主が従業員を一時帰休(furlough)にして雇用を継続する場合、月2500ポンドを上限に賃金の8割を補助する制度「コロナウイルス雇用維持スキーム」を4月下旬に導入、支給を開始している。導入当初は、3~5月の3カ月間を対象期間としていたが、順次延長され、最終的に10月末までとすることを決めたもの。現行制度は、3週間以上連続した一時帰休が適用の要件だが、7月以降はこれを緩和して、短時間勤務する労働者についても補助対象とするとしている。ただし、6月末までにスキームの適用を受けた雇用主のみ、7月以降のスキームに申請を認める。また、雇用主が労働者に支払うべき賃金水準は引き続き8割とされるが、政府補助の比率を段階的に削減し、雇用主による負担を引き上げるとしている。加えて、現在政府が全額を補助している社会保険料等についても、雇用主による支払いを再開する見込みだ。

なお、同制度を所管する歳入関税庁によれば、4月20日の導入以降、5月31日時点までに雇用主約110万社が申請、およそ870万人の労働者が対象となり、補助の総額は175億ポンドと見込まれている。

雇用維持スキーム ―10月までの変更点

  • 6-7月:政府が賃金の80%(月2500ポンドが上限)と社会保険料等を補助
  • 8月:政府が80%(同上)を補助、雇用主が社会保険料等を負担(一時帰休を行わなかった場合の人件費の5%相当)
  • 9月:政府が70%を補助(月2187.50ポンドが上限)、雇用主が賃金の10%(政府補助との合計で2500ポンドが上限)と社会保険料等を負担(賃金負担と合わせて人件費の14%相当)
  • 10月:政府が60%を補助(月1875ポンドが上限)、雇用主が20%(政府補助との合計で2500ポンドが上限)と社会保険料等を負担(賃金と合わせて人件費の23%相当)

出所:Gov.uk ‘Claim a grant through the coronavirus (COVID-19) Self-employment Income Support Scheme’ (26 March, 2020)

自営業者向けスキームも延長

また、同様に事業に支障が生じた自営業者に対する所得補償制度として、5月半ばから申請受付が開始された「自営業者所得補助スキーム」(過去3年間の収入額の年平均から月当たりの収入額を算出、その8割を月2500ポンドを上限に3カ月分支給)についても、8月から3カ月間を対象とした新たなスキームを導入するとの方針が5月末に発表された。新スキームは、月当たりの平均収入の7割を、3カ月分で6570ポンドを上限として支給するもの。新制度のより詳細な内容は、6月上旬に示されるとみられる。なお、歳入関税庁の集計によれば、現行スキームには5月31日時点で250万人が申請、総額72億ポンドが支給される見込みだ。

制限緩和をめぐる議論

政府は、5月上旬に公表した「復興計画」において、段階的な活動制限の緩和の方向性を示している。労働者については、引き続き可能な限り在宅就業を奨励しつつ、これが難しい場合(注1)は、公共交通機関をできるだけ避ける形での職場復帰を促している。また雇用主には、職場の安全確保に関するガイドラインの順守を求めている。

これに対して、労働組合などは反発を強めている。公共交通機関を使わずに通勤が可能な労働者は限定的とみられ、ソーシャル・ディスタンスを維持するとの原則に反すること、職場などの安全性に懸念を感じつつも、解雇を恐れて出社せざるを得ない状況に置かれうること、などが理由だ。

参考資料

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