20代後半女性の雇用率の改善と女性雇用政策の方向性
韓国の青年(15~29歳)層の雇用率は2004年以降女性が男性を上回っており、2017年は女性(44.0%)が男性(40.1%)より3.9%ポイント高かった。25〜29歳層の雇用率も2017年は女性(69.6%)が初めて男性(67.9%)を1.7%ポイント上回った。20代後半女性の雇用率を今後も維持拡大していくためには、積極的雇用改善措置の実効性の強化、育児休職制度の改善、仕事と生活の均衡、社会的保育の拡大など、労働市場における男女平等政策を推進する必要があると指摘されている。
青年女性の雇用率は2004年以降青年男性を上回る
韓国雇用情報院が2018年3月に発表した「20代後半女性雇用率の逆転と雇用政策の示唆点(雇用動向ブリーフ)」によると、韓国の青年(15〜29歳)層の雇用率は2004年の45.4%をピークに減少していたが、2013年以降改善傾向にある(図表1)。2004年以降の青年層の雇用率の減少は、主に青年男性の雇用率の減少によるものである。青年層の雇用率は2004年以降女性が男性を上回っており、2017年は女性(44.0%)が男性(40.1%)を3.9%ポイント上回った。
図表1:青年(15~29歳)層の雇用率の推移 (単位:%)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査」
25〜29歳層の雇用率も2017年は初めて女性(69.6%)が男性(67.9%)を1.7%ポイント上回った(図表2)。25~29歳層の雇用率の男女逆転現象は、女性雇用率の急速な上昇と男性雇用率の低下によるものである。
30~39歳層の男性の雇用率は90%の水準でほとんど変化していない。30代層の女性の雇用率は2009年以降上昇し、2017年は59.4%に達した。
高学歴化と雇用状況の悪化により青年層の労働市場への参入が遅れる中、高学歴青年女性の労働市場への進出は増加している。
最近は、30~34歳層の女性の雇用率も急速に改善しており、2012年3月の53.0%から2018年3月には61.4%まで上昇した。これにより、出産育児によるキャリアブレイク現象が緩和される傾向にある。この現象は、1990年は20代後半を中心にみられたが、2016年は30代に中心が移ってきている。これは、女性の出産年齢が20代後半から30代前半や30代後半に移動した結果である。
図表2:年齢階層別雇用率の推移 (単位:%)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査」
女性は30代前半から非正規雇用比率が上昇
非正規労働者比率を男女別にみると、男性は2009年以降減少しているが、女性は2014年以降、緩やかに上昇している。2009年から2017年までの間、男性の非正規労働者比率は28.1%から26.3%に低下した。女性の非正規労働者比率は2009年の44.0%から2014年には39.9%に低下したが、2017年は41.2%に上昇した。
2017年の20~29歳層の非正規労働者比率は、女性33.5%、男性32.6%である(図表3)。男性の非正規労働者比率は2012年以降、急速に上昇した。女性の非正規労働者比率は2009年以降、32%台で推移していたが、2015年以降上昇傾向にある。
2018年8月の女性の非正規労働者比率は、25~29歳層が24.5%と最も低く、同年齢の男性(23.7%)と大差ない(図表4)。女性は30代前半から非正規労働者比率が上昇し、男女間格差が拡大する。男性の非正規労働者比率は50代前半から上昇する。
図表3:青年(20~29歳)層の非正規労働者の割合 (単位:%)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査雇用形態別追加調査」
図表4:年齢階層別非正規労働者比率(2017年8月) (単位:%)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査」
女性の相対賃金比率は30代前半から大幅に低下
女性の相対賃金比率(男性の賃金に占める女性の賃金の割合)は全体で2017年8月現在、月平均賃金基準で63.2%、時間当たり賃金基準で70.3%である(図表5)。
雇用形態別にみると、男性の正規労働者と比べた女性の正規労働者の相対賃金比率は、月平均賃金基準での68.8%、時間当たり賃金基準で71.3%である。男性の正規労働者と比べた女性の非正規労働者の相対賃金は、月平均賃金基準で38.9%、時間当たり賃金基準で53.8%である。
全体 | 正規労働者 | 非正規労働者 | 女性非正規労働者/男性正規労働者 | |
---|---|---|---|---|
月平均賃金基準 | 63.2 | 68.8 | 64.7 | 38.9 |
時間当たり賃金基準 | 70.3 | 71.3 | 80.2 | 53.8 |
注:相対賃金比率=女性賃金/男性賃金
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査雇用形態別追加調査」
年齢階層別にみると、男性と比べた女性の相対賃金は30代前半から大幅に低下する(図表6)。月平均賃金基準では、25~29歳層の91.7%から30~34歳層は83.7%に低下する。時間当たり賃金基準では、30~34歳層の96.3%から35~39歳層は79.7%に低下する。女性の非正規労働者比率が増える30代後半から男女別賃金格差も大幅に拡大する。
図表6:年齢階層別相対賃金比率 (単位:%)
出所:韓国統計庁「経済活動人口調査雇用形態別追加調査」
女性雇用政策の方向性
韓国雇用情報院は、韓国の女性労働者に対する雇用政策について次のように分析している。
これまでの女性雇用政策は、キャリアブレイクの事前防止よりも事後対策に焦点を当てていた。キャリアブレイク女性に対する事後対策としては、パートタイム労働の促進、職業訓練と再就職支援、企業への雇用助成金支援などがある。キャリアブレイクを防止するための事前対策としては、積極的雇用改善措置の実効性の強化、育児休職など母性保護制度の盲点の解消、仕事と生活の均衡、社会的保育の拡大など、労働市場における男女平等政策がある。
現在の20代後半女性の雇用率の改善傾向を今後も維持拡大していくためには女性雇用政策をキャリアブレイク女性のための事後対策から労働市場の男女平等政策に転換していく必要がある。労働市場の男女平等が先行されてこそキャリアブレイクの事後対策や女性の非正規雇用問題などの社会的負担を軽減することができる。
高学歴青年女性を対象とする労働市場における男女平等政策と出産子育て費用の社会的分担を推進する必要があり、①積極的雇用改善措置の実効性の強化、②育児休職制度に関する幅広い盲点の解消、③同一価値労働同一賃金の実効性の強化、④乳幼児公共保育施設の拡大と質的向上――などの対策が求められている。
参考資料
- 韓国雇用情報院「20代後半女性雇用率の逆転と雇用政策の示唆点」(雇用動向ブリーフ、2018年3月)
2018年7月 韓国の記事一覧
- 20代後半女性の雇用率の改善と女性雇用政策の方向性
- 定期賞与と福利厚生費の一部を最低賃金の算入範囲に含める最低賃金法の改正
関連情報
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