失業率は改善するも雇用は二極化
―雇用アウトルック2017

カテゴリ−:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2017年8月

経済協力開発機構(OECD)は6月13日、加盟国の雇用情勢をまとめた「雇用アウトルック2017」を公表した。それによると、OECD諸国の失業率は、危機前の水準まで改善したものの、依然として労働生産性と賃金の伸びは低いままで推移していることが判明した。また、技術革新とグローバル化によって雇用の二極化や脱工業化が進む状況も分析している。日本については、就業率が上昇した反面、新たな雇用の大部分が非正規である点などを指摘している。

危機前の水準近くまで失業率回復

報告書の中でOECDは、「2008年から2009年にかけて起きた世界経済危機は、OECD各国の労働市場にとって、厳しいストレステスト(注1)だった」と振り返っている。その上で、OECD加盟国の失業率は、経済危機前の水準近くまで改善したが、危機の時に発生した大量の失業がもたらしたコストは多くの国にとって過剰な負荷となり、回復までに長い時間がかかったと分析している。さらに、雇用面の改善に比べて生産面の回復が弱いため、依然として労働生産性と賃金の伸びが低いままで推移しており、引き続き適切なマクロ経済政策と積極的な労働市場政策の実施が欠かせないとしている。

技術革新・グローバル化で雇用が変貌

OECDはまた、技術革新とグローバル化によって、過去20年間に雇用の二極化や脱工業化が進み、労働者の生活に深刻な格差と混乱を招いている点に言及。ほぼ全てのOECD加盟国で、技能および賃金水準が中程度である雇用の割合が低下した代わりに、高技能・高賃金と低技能・低賃金の雇用割合が高まったことを明らかにしている。この二極化と関連する雇用シフトの動きは、3分の1は製造業からサービス業への雇用シフトを反映したものだが、残りの3分の2は、同一産業内における職業シフトを反映したものだった。今後は、このような雇用の変貌に対応するため、適切な現状分析や労働者の技能向上策、新たな社会保障制度への移行策などが必要だと分析している。

日本は就業率上昇、しかし質の改善を

日本については、国別報告の中で、労働市場に対する世界経済危機の影響は諸外国と比べて相対的に小さかったとしている。その要因として「雇用調整助成金(注2)」の政策スキームが大量失業の防止に貢献したことをあげている。経済危機後は、女性や高齢者の労働市場参加が増えたことを反映して、OECD平均よりも早いペースで、日本の就業率が上昇していることを評価している。なお、この就業率の上昇は、2018年末まで緩やかに続くとOECDは予測している(図1)。

しかし、雇用量が増加した一方で、近年創出された雇用の大部分は非正規である点を指摘。さらに、多くの労働者が長時間働いている点やジェンダーギャップが未だに大きい点などをあげ、継続して改善するための施策が必要だと提言している。

図1:日本の就業率の推移(15-74歳人口に占める就業率)
図表1:画像

  • 出所:OECD(2017)

参考資料

  • OECD Employment Outlook 2017, Country Report(Japan), OECD 日本政府代表部,OECD東京センター

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