最低賃金未満で働く労働者222万人
韓国労働研究院(KLI)が2006年から2015年までの最低賃金未満で働く労働者の実態に関してレポートを発表している。その概要を紹介する。
高水準の最低賃金、高い最低賃金未満率
韓国では1989年に最低賃金制度が導入されて以降、段階的に適用対象が拡大され、2000年には全ての賃金労働者が適用対象となった。最低賃金引上げ率は、アジア通貨危機の影響を受けた1998年と1999年、そして世界金融危機の影響を受けた2010年を除けば、高い水準を維持しており、ここ数年も7%台の引上げが続いている。
しかしながら、2015年のデータによれば、最低賃金(時間当たり5580ウォン)未満で働く労働者は222万人に上り、全労働者の11.5%を占め(注1)、高い水準にあると言える(注2)。
中小企業、若年者・高齢者、非正規職で高い最低賃金未満率
最低賃金未満労働者の高い事業所は従業員数300人未満の中小企業事業所で、特に5人未満の零細事業所で高くなる傾向にある。従業員数5人未満の零細事業所の労働者10人中約3人は最低賃金未満で働いていることが明らかとなった。2006年と2015年の比較では、従業員数5人未満の事業所において、最低賃金未満の労働者数は34万7000人増加し、そのうち卸小売業で10万3000人、宿泊飲食店業で13万8000人増加した。
最低賃金未満の労働者を年齢別に見ると、労働市場への進出年齢となる25歳未満の若年層と、反対に労働市場から退出する65歳以上の年齢層で多くなる。特に25歳未満の年齢層では、学生アルバイトによる時間制雇用の最低賃金未満比率が高くなる。
近年、非正規職の割合自体は減少傾向にあるものの、非正規職の最低賃金未満率は、近年高水準で推移しており、2015年は22.5%であった。中でも、KLIは週当たりの労働時間が15時間未満という極端に短い労働時間である超短時間労働者の間で最低賃金未満の労働者が急増しているという見方をしている。
改善には最低賃金制度の趣旨の理解が必要
2015年の最低賃金未満率(11.5%)は、前年の12.1%からわずかに減少しているものの、依然として高い水準であると言える。これを改善していくためには、徹底した管理監督とともに、労働弱者の保護という最低賃金制度の趣旨に対する社会全般の理解が必要であると本レポートは指摘する。
注
- 最低賃金未満率のデータはいくつかあるが、本レポートでは統計庁「経済活動人口調査」のデータに基づいている。(本文へ)
- OECD主要国の中で、最低賃金未満率が高い国は、スペイン34.5%(2013年)、トルコ19.0%(2015年)、カナダ6.7%(2013年)等。一方、低い国は英国0.8%(2014年)、日本1.9%(2013年)、米国2.2%(2015年)等である。ただし、韓国の最低賃金には、同居する親族を使用する事業、障害者を使用する場合、家事使用人等の適用除外や減額措置があり(JILPT「データブック国際労働比較2016」参照)、最低賃金未満が全て違法となるわけではない。(本文へ)
参考
- 「月刊労働レビュー2016年7月号」(韓国労働研究院)
参考レート
- 100韓国ウォン(KRW)=9.40円(2016年11月22日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
2016年11月 韓国の記事一覧
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- 2017年最低賃金が決定 ―7.3%引上げ、6470ウォン
関連情報
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