政府発表「公共部門時間選択制活性化対策」

カテゴリー:労働条件・就業環境非正規雇用多様な働き方

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  • 国別労働トピック:2016年4月

韓国政府は2015年12月21日、「公共部門時間選択制活性化対策」を発表した。女性のキャリアブレーク(経歴断絶)問題や少子高齢化問題等に対する取組みとして、更には雇用創出への取組みとして、韓国では2013年より時間選択制雇用が推進されているところであるが、今後その一層の拡大のために、公共部門において先導的な役割を果たしていこうとするものである。政府は目標として2018年までに、中央省庁、地方自治体等、全ての公共機関において時間選択制を導入することを掲げた。

本対策の背景にある2013年の「時間選択制雇用活性化推進計画」の評価

今回の「公共部門時間選択制活性化対策」の背景にあるものが2013年に発表され、スタートした「時間選択制雇用推進計画(注1)」である。時間選択制雇用とは、労働者本人が働く時間帯を選んで勤務できる制度で、パート等で見られるような雇用が不安定で、労働条件も保障されないというものとは異なり、1日4~6時間程度の短い時間で働いても、社会保険の加入をはじめ、福利厚生面でも正規職員と同じ待遇を受ける雇用である。時間制雇用は、女性のキャリアブレークの防止、更には良質な雇用の創出にもつながるとの期待から、朴槿恵大統領の就任以来の目標である「就業率70%」達成の切り札として、本推進計画に基づいた対策が実行されてきた。

時間選択制は、就職時から時間選択制で勤務する“新規採用型時間選択制”と全日制で勤務している者が、出産、育児等のために時間選択制に転換する“転換型時間選択制”の2タイプに区分される。時間選択制雇用が推進される中、この度2015年12月に発表された「公共部門時間選択制活性化対策」は、これまでの推進策の困難を克服しようとする内容となっている。

まず政府は、時間選択制雇用の推進状況に対して、国民の認識が深まってきている点、また公共部門、民間部門ともに時間選択制雇用の導入実績が次第に増加している点を高く評価している。例えば、公共部門では2015年に、新規採用型時間選択制の公務員を、目標の981人を上回る1706人を採用したこと、また転換型時間選択制で働く公務員が、2014年の169人から2015年(9月末時点)の311人に増加したこと、更には、時間選択制に転換した教員の満足度が高いこと――等を高く評価した点として挙げている。

一方で、不十分な点として挙げられていることとしては、時間選択制に適合する業務を見出すことが難しい点、業務を代替する人材を補充することが難しい点、またそれに起因し、業務の空白が生じてしまう点――等である。

制度導入の困難克服を目指した「公共部門時間選択制活性化対策」

2015年12月に発表された「公共部門時間選択制活性化対策」は、これまでの時間選択制雇用の推進状況及びその評価を踏まえ、ファン・キョアン首相主宰の第75回国家政策調整会議での議論を経て確定したものである。主な柱は次のとおりである。

  • 適合業務発掘のためのサポート

    時間選択制に適合する業務を見出すことが難しい点を克服しようとするもので、業務の再分類や調整、また、コンサルティング、優秀事例の紹介、マニュアルの作成等を通じて、人事担当者に対し時間選択制に適合する業務の発掘をサポートしていく。

  • 代替人材プールの整備

    時間選択制の活用があった場合、業務を代替する人材を補充するため、公共機関の人材プールを整備しようというものである。これによって、必要な時にタイムリーに代替人材を採用できるように支援する仕組みを作る。

  • 転換型時間選択制の代替人材採用の活性化

    時間選択制に転換する労働者の代替人材として、時間選択制で勤務する労働者の採用を活性化していくというものである。そのための制度改善として、定員を上回る採用も一定条件の下、認めていく。

  • 転換型時間選択制の促進

    時間選択制に転換する理由は、労働者によって様々に異なるため、労働者それぞれの都合に合わせて活用できる多様な支援とするため、パッケージ制度での導入を促進するというものである。例えば、女性のライフサイクルに合わせて[出産休暇]→[育児休暇]→[転換型時間選択制]→[全日制に復帰]といったパッケージでの活用を考えていくもの。

以上のほか、時間選択制の導入が不振な省庁、機関に対しては、実態調査やコンサルティング等を通じて、認識改善プログラムを実施していくこと等も今回の対策には盛り込まれている。

2018年までに全ての公共機関での導入を達成

政府は、今回の対策を通じて、2018年までにはすべての中央省庁、地方自治体、公共機関が時間選択制を導入し、また部署別・機関別の定員の1%以上が転換型時間選択制を活用することを目標として定めた。

雇用労働部のイ・ギグォン長官は、「全日制で勤務した後、結婚、出産、育児期には時間選択制で働きながら、仕事と育児を並行し、育児が終わった後再び全日制勤務に戻ることができる転換型時間選択制に政策力量を集中していかなければならない」と強調するとともに、「仕事と家庭の両立が可能な時間選択制雇用によって、出産・育児期間に夫婦が全日制+時間選択制で働くという1.5人の雇用モデルが定着すれば、労働市場は『労働を通じた国民幸福』が可能な市場となることができると考えている」とコメントした。

参考資料

  • 「公共部門時間選択制の活性化対策」関係部署合同(2015年12月21日) 雇用労働部ウェブサイト

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