職務満足度の実態調査

カテゴリー:勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2015年11月

韓国職業能力開発院(KRIVET:Korea Research Institute for Vocational Education and Training)が行った職務満足度に関する調査によれば、満足度は年齢別では、職場で中核的な役割を担う30代、40代で高い反面、50代では最も低く、職場類型別では、大学や各種団体・協会といった職場で高く、職業別では、クリエーター、文化財保存員といった職業で高い――という結果になった。

また本調査によって「賃金水準」「福利厚生」「自己啓発の機会」「社会的評価」「使命感」といった要素が、職務満足度と深く関わっていることが明らかとなった。以下にKRIVETが実施した職務満足度調査の分析結果の概要を紹介する。

職務満足度調査の意義と測定方法

KRIVETによれば、職務満足度は職務行動に大きく影響を及ぼすばかりでなく、多くの時間を職場で過ごす職業人にとっては、個人の幸福そのものをも左右するという意味で、非常に重要である。

KRIVETは2013年から2014年にかけて実施した『韓国の職業指標研究(2013~2014)』を基に、本調査項目中の職務満足度について分析を行った。分析対象は355の職業に従事する12,566人で、職務満足度は〈職業に対する満足度〉〈仕事内容に対する満足度〉〈収入に対する満足度〉の3つの観点から、それぞれ5点満点の尺度で測定されている。すなわち、「とても不満足(1点)」「不満足(2点)」「普通(3点)」「満足(4点)」「とても満足(5点)」である。

職業人の属性別職務満足度

まず、男女別に見てみると、〈職業に対する満足度〉においては、「満足である」と回答した割合は(注1)、女性が50.1%、男性が44.4%であり、女性の方が男性よりも5.7ポイント高かった。また、〈仕事内容に対する満足度〉においても、「満足である」と回答した割合は、女性が47.4%と男性の44.5%を上回った。なお、〈収入に対する満足度〉においては、女性28.2%、男性26.1%という結果であった。

次に年齢別に見ると、〈職業に対する満足度〉においては、「満足である」と回答した割合は、30代の48.7%が最も高く、続いて40代の47.9%、30歳未満の44.4%、50歳以上の42.5%という順序であった。〈仕事内容に対する満足度〉においては、「満足である」と回答した割合は、40代の48.0%が最高で、続いて30代の47.3%、30歳未満の43.3%、50代の41.4%の順であった。更に、〈収入に対する満足度〉においては、同割合は30代で29.0%、40代で27.8%、30歳未満で26.4%、50歳以上で23.9%という結果が表れた。退職、引退、雇用調整等を身近に感じ、それに対処しなければならない可能性が高い50歳以上の年齢層において、全般的に満足度が低く表れている点が目を引く。

本調査では、学歴別の分析結果を見ることも可能である。〈職業に対する満足度〉の場合、「満足である」と回答した割合は、博士学位所持者で74.2%、修士学位所持者で63.6%、4年制大学卒業者で52.0%、専門大学卒業者で45.4%、高等学校卒業者で32.6%、中学卒業以下で30.6%と、学歴の高さと満足度が比例する結果が出た。なお、この順序は〈仕事内容に対する満足度〉〈収入に対する満足度〉においても同様であった。

次に、職場類型別の結果である。職場を、①大学 ②各種団体・協会 ③公共機関及び政府投資企業 ④外国系企業 ⑤政府機関 ⑥個人事業体または民間会社 ⑦その他、に分類し、これらの分類ごとに、〈職業に対する満足度〉〈仕事内容に対する満足度〉〈収入に対する満足度〉の3つの観点から満足度を測定している。その結果、〈職業に対する満足度〉では、「満足である」と回答した割合が最も高かったのは、大学に勤務する教職員の74.2%であった。次に各種団体・協会の60.8%、これに続くのが公共機関及び政府投資企業の59.9%、外国系企業の52.7%、政府機関の51.1%、であった。個人事業体または民間会社の42.4%は分類中で最も低い結果となった。

〈仕事内容に対する満足度〉においてもやはり、大学に勤務する教職員の69.3%が最も高い数値となっている。その次が公共機関及び政府投資企業の60.2%と、上位の2つはこの部門であったが、〈収入に対する満足度〉においては、外国系企業の33.3%が最も高い数値であり、次が各種団体・協会の31.7%、これに公共機関及び政府投資企業の30.8%、大学30.7%、個人事業体または民会会社26.5%、政府機関22.2%、という結果となった。

最後に職業別の結果を見てみる。調査対象355種の職業中、満足度を前述の5点満点の尺度で測ったところ、上位10職業と下位10職業の平均点数は、下表のとおりである。

表:職業満足度上位・下位10職業 (単位:点)
上位
職業名 平均点数
クリエーター及び文化財保存員 4.26
アナウンサー及びレポーター 4.23
室内装飾、デザイナー 4.22
美術その他文化、芸術関連従事者 4.21
航空機操縦士 4.17
判事及び検事 4.15
漢方医 4.11
俳優及びモデル 4.09
奨学官(注)、研究官及び教育関連専門家 4.09
大学教授 4.08
下位
職業名 平均点数
建設及び鉱業単純従事者 2.35
プラスティック製品生産機操作員 2.52
溶接工 2.57
塗装工 2.57
宅配員 2.59
化学物質加工装置操作員 2.64
化学製品生産機操作員 2.64
物品移動装備操作員 2.64
製造関連単純従事者 2.65
車台組立及び設置員 2.66
  • 出所:韓国職業能力開発院(KRIVET)資料を基に作成。
  • 注:教育関連事務に携わる公務員。

職務満足度と関係する基本的要素

本調査では、職務満足度と職業における基本的要素との関連性についても分析している。KRIVETは、基本的要素として、「賃金水準」「福利厚生」「雇用創出」「雇用成長」「就職競争」「正規雇用」「雇用維持」「自己啓発の機会」「昇進の機会」「職場異動」「勤務時間」「勤務時間の規則性」「物的環境」「精神的ストレス」「肉体的ストレス」「専門知識」「業務自律性」「業務権限」「社会的評価」「社会奉仕」「使命感」「男女平等」「高齢者への親和性」の23種を列挙し、これらと職務満足度との相関関係を分析した。

その結果、「賃金水準」「福利厚生」「自己啓発の機会」「社会的評価」「使命感」の要素が職務満足度と強い相関関係にあることを明らかにした。とりわけ〈職業に対する満足度〉と〈仕事内容に対する満足度〉には「使命感」が、〈収入に対する満足度〉には「福利厚生」が深く関連することを示した。

職務満足度にはその他、「社会奉仕」といった要素が深く関わっていること、更には「業務自律性」といった仕事の専門性に関わる要素とも相関関係が見られることが明らかとなった。以上の分析結果から、KRIVETは働く者の職務満足度を引き上げていくためには、賃金、福利厚生の充実ばかりでなく、継続的に自己啓発のチャンスを与えるなど、各人の職務の専門性を向上させていく取組みが企業と政府には求められることを、示唆点として挙げている。

参考資料

  • 『KRIVET Issue Brief』(韓国職業能力開発院2015年82号)

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