中小企業の東南アジア展開

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  • 国別労働トピック:2014年6月

韓国企業によるベトナムへの直接投資の勢いが止まらない。近年、サムスン電子やLGエレクトロニクスといった大型投資が相次ぎ、それに伴い携帯電話や電子部品関係のサプライヤーの進出が続いた。2014年第1四半期では、韓国企業による対ベトナム投資は日本を抑えて1位となった。

表:国・地域別対ベトナム直接投資(認可ベース、2014年第1四半期) (単位:件、100万ドル)

  新規 拡張 合計
件数 金額 件数 金額 件数 金額
韓国 76 534 22 231 98 766
日本 52 134 14 281 66 414
英領バージン諸島 6 239 6 144 12 382
シンガポール 15 231 4 141 19 371
香港 21 264 3 82 24 346
合計(その他を含む) 252 2,047 82 1,287 334 3,334
  • 出典:筆者作成

韓国による対ベトナム直接投資が増えている理由としては、「べトナムの人件費の安さ」と「ウォン高」が挙げられる。2013年は、サムスン電子の携帯電話(スマートフォン)工場が進出し、サプライヤー工場と合わせると、2014年末には、雇用者数は20万人に達すると見られている。また、LGエレクトロニクスの家電製品工場でも、数万人規模での雇用が見込まれている。

韓国の大企業のベトナム進出が目を引く一方で、注目すべき点は、中小企業の進出・投資が多いことである。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2013年の韓国の対ベトナム新規投資のうち、1000万ドル以上の大型案件の数自体は全体の10%以下に過ぎず、約90%は500万ドル未満の中・小型案件であった。

中小企業のベトナムをはじめとした東南アジア諸国への進出には、韓国政府の積極的な後押しがある。2014年3月、韓国中小企業庁は、東南アジア諸国への中小企業の進出を支援するための総合対策を発表した。

以下、その内容を紹介する。

中小企業の東南アジア進出拡大支援策

東南アジア諸国は、豊富な人口と天然資源、そして急速な産業化を背景に、市場が拡大中である。また、韓国とは、地理的にも比較的に近いという利点もあり、中小企業にとって、進出が容易な市場であり、今後中小企業の主力市場になると思われる。しかしながら、不安定な政治・経済情勢と立ち遅れたインフラという不安要素も抱えている。韓国政府によるこの度の対策は、こうした状況にある東南アジア地域への中小企業の進出を促進するための総合的な支援策となっている。

2013年には、朴槿惠大統領がAPEC会議、ASEAN会議等へ参加、その他、インドネシア、ベトナム等を訪問した。これら大統領によるセールス外交の展開及びFTA、ODAを通じての国家間協力の拡大により、中小企業の東南アジア諸国への進出の基盤が整えられた。

特に、ベトナムのハノイ、タイのバンコク等は、東南アジア市場の主要交易拠点と位置づけられ、輸出事業を支援するためのインキュベータの設置や中小企業振興財団を通じた多様な支援サービスの提供等により、中小企業の進出拠点として拡充化が推し進められる。更には、現地進出にあたり、韓国輸出入銀行による支援活性化といった金融対策も図る。

その他、既に進出している韓国系大企業による中小企業への協力についても、中小企業庁が積極的に後押ししている。例えば、大企業から中小企業への資金援助、建設工事における共同受注、大企業の流通網を活用しての中小企業製品の販売――等である。

とりわけ、急成長する消費市場へ、中小企業の優秀製品の販路を拡大していくため、大手のホームショッピング(テレフォンショッピング、オンラインショッピング)会社の活用や大手スーパーマケットの現地支店に、中小企業製品の専門販売店を設置するといった準備も進めていく。

東南アジア諸国への輸出品として有望と見られている医療機器、建築資材、美容・ファッション用品等については、ハラル認証をはじめ、現地の規格認証の取得のための技術指導も実施する。また、若い消費者層の需要を高めているファッション分野においては、最近、現地でも人気が拡大している韓国ドラマ等の「韓流」コンテンツを重要なマーケティング手段として活用し、輸出支援を推進していく。

また、製品の開発にあたっては、韓国内に居住する東南アジア諸国の人々(約25万人)を製品の体験モニターとして活用する。その他、現地企業への技術移転や現地企業との技術協力による研究開発の支援。FTA、ODAといった枠組みあるいは通常外交によって得られる成果の活用――等が総合支援対策の中には盛り込まれている。

このように、中小企業の東南アジア進出のために、関係省庁、産業界が多面的に協力する、まさに国を挙げての支援対策となっている。

参考資料

  • 通商弘報(日本貿易振興機構)2014年4月23日、韓国中小企業庁ウェブサイト

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