雇用労働部が公共部門における非正規労働者の正規雇用(無期契約)への転換状況を発表
韓国政府の国家政策調整会議(2013年9月開催)において決定した公共部門における非正規労働者の正規雇用(無期契約)への転換対策について、雇用労働部は、2014年4月14日、対策後の実施状況を発表した。
雇用労働部によれば、2014年4月の時点で、公共部門合計で、3万1782人の非正規労働者が正規雇用に転換した。正確に言えば、無期契約に転換したということだが、目標値を上回る結果となった。更に、2014年中に、1万9908人を、2015年には1万4899人を転換し、最終目標値である6万5711人の転換の達成を見込んでいる。
雇用労働部は、公共部門における非正規労働者の正規雇用(無期契約)への転換対策を、具体的な転換目標人数を掲げたうえで推進してきた。転換目標、転換計画については、下表のとおりである。
表:公共部門におけるセクター別の転換計画と転換実数 (単位:組織、人)
組織数 | 非正規労働者の 転換目標数(合計) |
転換計画 | 転換実数 (2014年4月時点) |
|||
2013年 | 2014年 | 2015年 | ||||
合計 | 810 | 65,711 | 30,904 | 19,908 | 14,899 | 31,782 |
中央行政機関 | 47 | 7,166 | 2,499 | 3,388 | 1,279 | 3,677 |
地方政府 | 246 | 8,035 | 2,683 | 2,584 | 2,768 | 2,756 |
公的機関 | 302 | 13,141 | 5,485 | 4,942 | 2,714 | 5,726 |
地方公共企業 | 138 | 2,840 | 929 | 950 | 961 | 1,166 |
教育機関 | 77 | 34,529 | 19,308 | 8,044 | 7,177 | 18,457 |
- 出所:雇用労働部、韓国労使発展財団のデータを基に作成
また、雇用労働部は、労働者を転換させる際には、公正な手続きを踏ませるといった指導対策も講じている。例えば、一定のスケジュールに沿ったうえでの転換を進めているか、ガイダンスを実施しているか、関係省庁と協議しているか等、各セクターにおける転換手続きをチェックしている。
特に公的機関セクターにおいては、転換のためのガイドラインでも示しているように、常時・継続的な仕事に従事させる場合には、正規雇用とする原則を尊重するように指導している。また、教育機関セクターにおいては、多くの非正規労働者が働いているという実態に鑑みて、学校現場での労働条件について調査を行い、当該セクターで働く人たちのためのガイドラインを新たに制定していくことも予定している。
バン・ハナム雇用労働部長官は、「常時・継続的な仕事に関しては正規労働者を雇用するという原則を確実に実行するため、公共部門がイニシアチブをとっていくべきである」と述べている。
労働組合の評価
公共部門における非正規労働者の正規雇用(無期契約)への転換対策について、韓国の二大ナショナルセンターはどちらも、否定的な見方をしている。
韓国全国民主労働組合連盟(KCTU)は、非正規雇用問題の実質的な解決にはつながらないと考えている。実際の現場には、常時・継続的な性質の仕事に、多くの間接雇用の形態が見られる――と述べる。またKCTUの構成組織である保健社会福祉部関係の単組は、無期契約への転換は、「無期限非正規労働者」という別形態の非正規雇用を量産する制度となるに過ぎないと言い、全ての非正規労働者を無条件で正規労働者に転換する必要があると話す。
韓国労働組合連盟(FKTU)も、政府の対策によって、非正規労働問題が解決するとは考えていない。現に、対策後も、公的機関や公共企業セクターにおいては、非正規労働者数は増えているという報道もあり、これについて、FKTUは、「公的機関や公共企業セクターで非正規労働者数が増えているのは、経営効率化が原因であるが、効率化が安全管理部門の人員削減にまで及ぶと大事故を招くおそれがあり、その損害は国民が被ることになる」とコメントしている。
また、非正規労働問題の解決策については、FKTUは次のような考えを示している。
「非正規労働問題には、有期雇用契約の他にも、請負や派遣といった間接雇用の問題があり、こちらの方が深刻である。政府の今回の対策は、間接雇用の問題を除外している。また、企画財政部(日本の財務省に相当)は、公共部門の業務をアウトソーシングして、民間の雇用創出に貢献するよう促進しているが、我々は、真の非正規労働問題の解決のためには、全てを直接雇用としなければならないと考えている」
韓国の二大ナショナルセンターが、この度の政府の転換対策に対してこのように厳しい評価を与える理由は、韓国における非正規雇用の形態には主に、(1)有期契約雇用 (2)短時間契約雇用 (3)間接雇用(派遣・請負等)――の3タイプがあるが、今回の対策は、単に(1)のタイプを無期契約に転換するにとどまっているためである。また、有期契約を無期契約へ転換したといっても、給与体系等は正規職員と同一化されることになるという保証もないため、韓国の二大ナショナルセンターは、政府の対策は、真の非正規雇用問題の対策と呼べるものからはほど遠いと考えている。
注
- 公共部門の正規雇用(無期契約)への転換対策の詳細については、国別労働トピックの2013年9月記事を参照。
参考資料
- 労使発展財団、韓国全国民主労働組合連盟、韓国労働組合連盟 ほか各ウェブサイト
2014年6月 韓国の記事一覧
- 雇用労働部が公共部門における非正規労働者の正規雇用(無期契約)への転換状況を発表
- 中小企業の東南アジア展開
関連情報
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