新たな長期失業者向け就労支援策の導入

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2014年5月

政府は4月末、長期失業者向けの新たな支援策「ヘルプ・トゥ・ワーク」を導入した。従来から実施されている長期失業者支援策「ワーク・プログラム」の終了後も仕事を得られていない失業者が対象で、ジョブセンタープラス(公共職業紹介機関)に毎日来所して求職活動の支援を受けるほか、地域でのボランティアなどを義務付ける。ただし、複数の非営利団体が不参加を表明するなど、プログラムには批判的な意見も見られる。

アドバイザーとの毎日の面談など義務付け

長期失業者向けプログラムとして、民間事業者への委託を通じて実施されている「ワーク・プログラム」は、所定の期間を超えて求職者手当を申請している成人及び若年層(18-24歳)等を中心に、就労支援を提供するもの注1。2011年6月の導入以降国内でおよそ148万人がジョブセンタープラスから事業者に紹介され、うち約25万人がプログラムを通じて所定の期間(6カ月または3カ月)以上注2就業した。

新たなプログラムの内容は、昨年9月にオズボーン財相が公表したものだ。ワーク・プログラムによる2年間(半年間の延長が可能)の支援策によって仕事を得ることが出来なかった失業者は、ジョブセンター・プラスによる支援に戻ることになるが、その際、ジョブセンター・プラスのアドバイザーは3つの選択肢から最も対象者に適したものを選ぶことができる。一つは、ジョブセンターに毎日来所し(通常は2週間に1度)、職探しの頻度や求人への応募件数、あるいはスキル向上のための活動状況など、求職活動の進捗に関してアドバイザーとの面談を義務付けるというもの。二つ目は、就業経験の不足している失業者に対して、週30時間、最長6カ月間のコミュニティ労働(地域の非営利組織等でのボランティア)及び週4時間の求職活動を義務付け、職場で働く上でのスキルと経験を身につけさせる。最後に、学習困難者など就労に困難を抱える失業者に対しては、アドバイザーがより集中的な支援を行い、必要な訓練への参加や面談のための交通費や衣服の支給、あるいは就業体験の提供など、個人に合わせたより柔軟なオプションを提供する。アドバイザーは、ワーク・プログラムを提供した事業者からの個々の求職者に関するレポートなどを元に、最適と考えられる手法を選択する。なお、プログラムに参加しない場合、手当の支給停止(一回目は4週間、二回目は13週間)を伴う制裁措置が適用される。政府は、年間3億ポンドを投じ、20万人の支援に充てるとしている。現地報道によれば、国内の70組織がプログラムを通じた求職者の受入れに合意しているという。

このほか、今年中に試験的な実施が決まっている新たな長期失業者支援策として、アドバイザーが週35時間、6カ月間にわたり求職活動を監督するというプログラムが一部地域で導入される予定だ。長期失業者および相対的に就業が容易とみられる求職者、各3000人が対象となるとみられる。

図表:主要カテゴリ毎の就業実績の達成件数(千件)

図

  • 注:求職者手当受給者(18-24歳及び25歳以上層)は就業期間が6カ月、他は3カ月に達した件数。
  • 参考:DWP Tabulation Tool新しいウィンドウ

就業促進の効果には疑問の声も

「ヘルプ・トゥ・ワーク」の内容は、政府が過去に導入を検討したものの、就労促進の効果がないとの結果注3から、本格的な導入が保留となっていた「コミュニティ活動プログラム」と同じ内容であり、このため本プログラムについても、効果を疑問視する意見がある。加えて、求職者手当の受給の条件として無給でのボランティアを義務付け、これに違反したとみなした場合には制裁措置を課すという政府の手法に反対する非営利団体や労働組合などが、プログラムによる求職者の受け入れを行わないよう非営利団体等に働きかけるキャンペーンを実施している。現地報道によれば、既にオックスファム、YMCA、救世軍などの一部の非営利団体がプログラムへの不参加を表明している。また地方自治体でも、リヴァプール市が受け入れは行わないとの方針を示しているという注4

参考資料

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