デトロイト市、職員の年金削減策で協議難航

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  • 国別労働トピック:2014年3月

昨年7月に連邦破産法を申請したデトロイト市では、歳入増加と歳出削減をどう進めるかが焦点となっている。歳出削減策の一環として、市職員の年金額を平均34%削減する提案がされており、協議が難航している。

1950年代の黒人暴動から続く慢性的な人口低下と産業の空洞化に歯止めがかからないことが背景にあるが、ミシガン州政府が年額2億5千万ドルにのぼる助成金をカットしたことが直接の原因となったとする指摘もある()

平均34%の年金支給額削減を提案

デトロイト市緊急財務管理者ケビン・オーア氏は、2月21日、財政破綻にともなう歳出削減策として、市職員年金額の平均34%削減を提案した。

警察と消防の職員のみ、削減幅を4%と圧縮し、そのほかの職員は26%を削減する。削減額はそれだけではなく、年金積立額が向こう10年間で80%に達しなかった場合、インフレ調整額は支給されない。

必要な財源は、ミシガン州政府が年額3億5千万ドルを20年間以上にわたり助成する。この助成金額はデトロイト市美術館の存続に向けた資金と合算で年額4億6千500万ドルになる予定である。

デトロイト市の再生プログラムにより、歳入増加が見込み通りとなれば、現役職員の将来の年金支給額は削減額から20%ほど回復するとしており、市職員側が提案を受け入れれば、州知事はさらに8億2千万ドルの助成を行うとしている。

政治的な対立も絡み、難航する協議

市職員の年金を管理する「デトロイト総合年金システム(Detroit’s General Retirement System)」は、オーア氏の提案する削減が不必要なものであり、長年にわたり市の行政に貢献してきた退職者を報いることができるはずだとして、提案を受け入れずに協議を続ける意向を示した。

また、ミシガン州選出連邦下院議員(民主党)ジョン・コーニー氏は「公共サービスに従事した労働者の貢献に報いるものではない」として提案に失望の意を表明した。

年金縮減についての関係者との調整とは別個に、連邦高等裁判所では破産処理に関する審理が進んでいる。

ミシガン州リック・シュナイダー州知事は共和党であり、州知事就任以降、労働組合に対する権利の制限を進めてきた。チャタヌーガ州は、労働組合の勢力が伝統的に強いが、労働者に労働組合に入らない権利を認めることで労働組合の組織力を弱めるライト・トゥ・ワーク法を州法で成立させることや、労働組合に組織された企業に公的な契約を優先するといった州法を変更するといった施策を進めてきた。

デトロイト市の破産申請もそうした流れの一つにあるとみることもできる。破産処理以前から、州政府は市に多額の助成金を支出してきたが、数年前にそれをいったん止めた。年金支給削減のために提案している州政府の助成金はこれまでに支出してきた年額を上回ることが予想されるなど、不合理な点も多い。

州や市といった公共部門の労働組合の権利制限をめぐる共和党と民主党の攻防は、2010年の中間選挙後のウィスコンシン州に始まり、現在も続いている。

(山崎 憲)

参考

  • Macaluso, Nora, Detroit Pensions Cut in Restructuring Plan, With Incentives for ‘Timely Settlement’, Daily Labor Report, Feb. 21.

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