長期失業者等の就労支援プログラム、実績が改善

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2013年8月

長期失業者などの就労支援を民間委託する「ワーク・プログラム」の実施状況に関する新たなデータが6月に公表された。参加者のうち継続的雇用に就いた者の比率は、前年度に比べて2012年度には改善が見られた。ただし、支援の実績は依然として支援の容易な若者・成人失業者に偏っており、健康上の問題などによる就労困難者の支援が滞っている状況が明らかとなった。

就労困難者に対する支援は依然進まず

ワーク・プログラムは、長期の求職者手当受給者(成人で失業期間が12カ月超、18-24歳層で9カ月超など)や、健康上の問題から雇用・生活補助手当を受給している就労困難者などに対して、就労に向けた支援を行うことを目的に、2011年6月に導入された。各地域のジョブセンター・プラスが、当該地域でプログラムの実施を受託した元請事業者に該当者を紹介し、元請事業者はさらに営利・非営利の下請け組織などに実施を委託する形を取る。委託費は支援の困難度などに応じて設定された条件に基づき、継続的な雇用の実績(通常の失業者は6カ月、就労困難者等は3カ月)などに応じて支払われる。支援の具体的内容は、事業者の判断に委ねられている。

昨年11月に初めて公表された実施状況に関するデータは、プログラム委託時に政府が設定した最低限の目標値注1を大きく下回る内容で、とりわけ就労困難者(新規の雇用・生活補助手当申請者のうち健康上の問題が軽度の者)の支援実績が著しく低かったことから、委託方法などをめぐり批判を集めていた注2

今回公表されたデータは、その後の支援実績の大幅な改善を示している。2011年6月以降2013年3月までにジョブセンター・プラスによって紹介された120万人のうち、116万人がプログラムに参加、うち13万2000人(紹介数の11%)が継続的な雇用に就いた。特に若者および成人の求職者手当受給者については、2年目に関する目標値に近い水準に達している。ただし、就労困難者については、同様に実績の改善はみられたものの、依然として目標値の3分の1程度にとどまった。

ホーバン雇用担当大臣はデータの公表に際して、プログラムの実績は昨年度から顕著に改善していること、また委託費は実績に応じて支払われることから、従来の支援プログラムに比して納税者の負担は軽い、とコメントしている。

図表1:月ごとの紹介数と継続的雇用の達成件数(千件)

図1

  • 注:求職者手当受給者(18-24歳及び25歳以上層)は就業期間が6カ月、他は3カ月に達した件数
  • 参考:DWP Work Programme Statistical Release
図表2:継続的雇用の目標値と実績(%)
    1年目* 2年目
求職者手当受給者(18-24歳) 目標 5.5 33.0
実績 1.0 31.9
求職者手当受給者(25歳以上) 目標 5.5 27.5
実績 1.0 27.3
雇用・生活補助手当受給者(新規・就労関連活動) 目標 5.5 16.5
実績 0.6 5.3
  • * 2011年6月~2012年3月の10カ月。
  • 参考:DWP Work Programme Statistical Release

一方、議会雇用年金特別委員会のベッグ委員長は今回のデータを受けて、支援実績の改善を評価しつつも、就労困難者の支援が依然として不十分である点に懸念を示した。委員会は5月にも、ワーク・プログラムに関する評価報告書において多岐にわたる改善案を政府に提示している。これには、受託事業者に対する支払い条件の見直しや、実績の不振によって生じた委託費の「節約」分を用いて追加的な支援策を実施すべきこと、またプログラムを通じて提供されるサービス水準の下限の基準化、次期契約時(2016~)の参加者区分見直しなどを含む。このほか、現在のプログラム参加者の中には、技能水準が不十分な者も含まれており、これが実績不振の一因になっているとして、参加準備のためのプログラムの導入を提言している。

ワーク・プログラム終了後はより専門的・集中的な支援

なお、最長2年間のプログラムの期間を経ても仕事に付くことができなかった参加者は、再びジョブセンター・プラスによる支援を受けることになる。政府は5月、こうした失業者に対して、専門家による重点的支援を実施するとの方針を示した注3。対象者は6カ月にわたり、少なくとも週1回(通常は隔週)のジョブセンター・プラスのアドバイザーとの面談のほか、訓練や無給の就業体験(義務的就労活動)などへの参加を義務付けられる。アドバイザーとの初回の面談で、就職に向けた求職活動計画が作成され、これに反した場合は初回で4週間、違反が繰り返された場合等は最長で3年間、給付停止の制裁措置が適用される注4。さらに、ワーク・プログラムからの参加者については、雇用年金省が開設した求人・求職のマッチング・サイトへの登録が義務付けられ、求職者の同意に基づいてアドバイザーがウェブサイト上での求職活動をチェックする。

なお関連して、ワーク・プログラムに参加する若年失業者などを対象に実施されている賃金助成制度に関するデータが7月に公表された。若年層の就労支援や教育訓練を目的に、2012年に開始された「ユース・コントラクト」(3年間で約50万人の支援が目標)の一環として実施されているもので、雇用主がワーク・プログラム参加者や、求職者手当、雇用・生活補助手当などの受給期間が6カ月を超える18-24歳層の受給者注5を週30時間、26週間以上雇用する場合、賃金助成として最高で2275ポンドを支給するもの注6。政府は、3年間で16万人分の雇用を助成するとの目標を掲げているが、導入から2013年3月までの12カ月間で対象となった若年失業者は4690人、うち6カ月以上雇用が継続した人数は2070人分に留まった。

参考資料

参考レート

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