若年対策に80億ユーロ支出
―雇用創出や教育訓練に

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2013年7月

EU各国の首脳は6月末、域内の高失業地域における若年失業者に雇用や教育訓練の機会を提供する施策に対して、2020年までの7年間で80億ユーロを投じることで合意した。とりわけ最初の2年間で集中的に支援を行うため、60億ユーロを前倒しで支出して雇用や教育訓練の提供などに充てる方針だ。

予算を増額、最初の2年で集中的に支出

ユーロ危機以降の急速な雇用状況の悪化により、若年失業者数は過去5年間に加盟国全体で約150万人増加、2013年5月時点では550万人を数え、失業率は23.2%となった(2013年5月時点)。とりわけ厳しい不況が続くギリシャやスペインでは、若年失業率は6割前後に達している(図表)。

欧州委が2012年12月に示した「若者雇用パッケージ」では、アプレンティスシップ(公的に制度化された見習い訓練)やトレイニーシップ(公的制度外の見習い訓練)の実施促進や質の確保とともに、若年支援に関する目標を規定する「ユース・ギャランティー」を盛り込んだ。これは、若年失業率が25%を超える地域を対象に、学校卒業や失業開始から4カ月以内の全ての25歳未満の若者に対する教育訓練や雇用の提供を目標とするもの。公的雇用サービス機関を核として、民間の専門的支援機関や教育機関などと共同での対策の実施が想定されている。

同施策の予算額注1については、2月に各国の担当相理事会が2014~2020年の7年間で60億ユーロ注2を充てることで合意していた。しかし6月末の欧州理事会で、最終的な予算額を80億ユーロに引き上げるとともに注3、最初の2年間にあたる2014-2015年度に60億ユーロを前倒しで支出すること、また2020年までは、各年の予算残額についても特定の若年雇用対策への流用を認めることなどで加盟各国が新たに合意した。施策が本格的に導入される2014年1月に向けて、各加盟国は若年失業者の支援に関するプランを欧州委に提出する。ただし、現地メディアによれば、加盟国の間には予算規模の不足を訴える意見がある反面、施策の有効性に懐疑的な声も見られるなど、温度差がある。

域内の若年失業者支援をめぐってはこのほか、欧州投資銀行が「若者のための仕事(Jobs for Youth)」(若者の訓練に関連して中小企業向けに融資を実施)および「スキルへの投資(Investment in Skills)」(教育訓練機関や訓練プログラム、学生向けローン、他の加盟国への就職支援などに融資)の両プログラムを通じた支援の実施が決まっているほか、域内の求職と求人のマッチングをはかるEURESシステム注4においても若者の就業支援が強化される予定だ。加えて、域内の他国での職業訓練を提供する「エラスムス・プラス」プログラムの2014年からの導入予定も予定されている。

また、アプレンティスシップの活性化をはかるため、7月には行政機関や企業、労使団体、教育訓練プロバイダー、若者の代表などを交えた連携組織(European Alliance for Apprenticeship)を設置、制度の改善や利益に関する調査、予算配分などについて協調をはかる。一方、トレイニーシップに関しても、良質な訓練の促進に向けて、訓練の品質に関する枠組みを2014年より導入する予定だ。

さらにEUレベルの労使団体も、若者の就業支援の枠組み文書において、教育訓練、教育から就業への移行、雇用および起業の4つの分野に関する若者支援に向けた取り組みを加盟各国の労使や行政機関に呼びかけている。

図表:EU各国の失業率と若年失業率(%)2013年5月

注:エストニア、ハンガリーは2013年4月時点、ギリシャ、イギリスは2012年3月時点、ラトヴィアは2013年第1四半期データ。キプロス、スロヴェニア、ルーマニアは若年失業率のみ2013年第1四半期データ。

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