若者の高失業、傷跡は数十年に
―ILOが2013年版報告書
国際労働機関(ILO)は5月18日、2013年版報告書『世界の雇用情勢-若者編』を発表した。世界的な景気回復の鈍化による若者(15~24歳)の失業率の高止まりは、貴重な就業体験の喪失や職業技能の衰退などの長期的な結果を招き、数十年も傷跡を残す可能性が高いと指摘している。同報告書の概要は以下のとおり。
13年の失業率12.6%、失業者7340万人
報告書によると、世界の若年失業率は、09年の12.7%から11年には12.3%に低下し、12年は再び12.4%に上昇した。13年は07年の経済危機前の水準(11.5%)を1.1%ポイント上回る12.6%に上昇し、18年までに12.8%に達すると予想される。13年の世界の若年失業者数は、07年より350万人、11年より80万人多い、7340万人に上るという。
世界の若年就業率は、若者の失業増加と労働力率の低下により、07年の44.8%から13年は42.3%、18年には41.4%に低下すると予想される。若年失業率は近年、成人失業率のほぼ3倍の状況が続いており、13年の若年失業率も成人失業率の2.7倍と見込まれる。
12年の先進国の若年失業率18.1%、15年まで17%強
先進国・欧州連合における12年の若年失業率は、過去20年間で最も高い18.1%となっている。若年失業率は15年まで17%を上回る状況が続き、その後18年までに15.9%に低下すると予想される。
08~12年にかけて、先進国の若年失業者数は200万人(約25%)以上増加した。12年第2四半期には、先進国の3分の2で若年失業率が15%を超えていた。
08~10年にかけて、就業、学業、訓練のいずれにも就いていない若者の割合、すなわち「ニート」率は、OECD諸国平均で2.1%ポイント上昇し15.8%に達した。若者の6人に1人が仕事にも学業にも就かず、訓練も受けていない。
先進国では、若者の失業危機が求職期間の長期化や雇用の質の低下を招いている。OECD諸国の大半で、若年求職者の3分の1が6カ月以上失業している。
欧州では、臨時雇用やパートタイム雇用を含む非正規雇用に従事する若年就業者の割合が上昇している。この上昇のかなりの部分を非自発的に非正規雇用に就く若者が占めている。11年の欧州の若年就業者のうち、パートタイム雇用が25.0%、臨時雇用が40.5%を占めていた。
地域差が大きい途上国の失業率
12年に若年失業率が最も高かった地域は中東(28.3%)と北アフリカ(23.7%)で、最も低かった地域は東アジア(9.5%)と南アジア(9.3%)であった。12~18年にかけて、若年就業率は先進国・欧州連合を除くすべての地域で低下すると予想される。低下幅は南アジア1.1%ポイント、東アジア2.5%ポイントとアジア地域で最大となる。
貧困率や不安定雇用の比率が高い国・地域では、失業問題と並んで、悪質な雇用が若年者雇用の課題となっている。例えば、南アジア地域とサブサハラアフリカ地域の若年失業率は比較的低いが、これは貧困率が高く、多くの若者が働かなければならないことを意味する。インドでは、所得が1.25米ドルの貧困ラインを上回る世帯の若年失業率が、所得が貧困ラインより低い世帯のそれよりも高い。
先進国、進学率上昇で高学歴者が低技能職に
先進国では教育ピラミッドの底辺層の人々の方が技能の供給と需要のミスマッチ・リスクが高く、高技能者と比較して低技能者の失業率の方が高い。このタイプのミスマッチは10~11年にかけて増加し、低技能の若者の労働市場での地位を低下させた。
また、自らの学歴に相応しい職よりも低位の職に就かざるを得ない若者も増えている。こうした「教育過剰」の若者の比率は02~10年にかけて1.5%ポイント上昇した。その一因は進学率の上昇にある。過去2年間では、経済危機の影響により「教育過剰」の若者の比率が1.4%ポイント上昇した。教育ピラミッドの底辺層の若者は、たとえ自分に最適な資格の仕事に就いたとしても、行列の後ろに追いやられる。
途上国、若者雇用の大半がインフォーマル部門
発展途上国の若者は不完全就業やワーキングプアの課題に直面し、農村部、都市部ともに、インフォーマル経済に従事する若年労働者が大半を占めている。低所得国の若者は、先進国の若者が失業中に享受できる社会的保護制度の恩恵も受けられない。
発展途上国では、質の悪い雇用が主流である。若年労働者の多くが非正規雇用に従事し、就業中の仕事に見合った資格を持たず、そのことが企業の生産性や労働者の安全にも影響を及ぼしている。
若者対象のディーセント・ワーク決議
ILO加盟185カ国の政労使代表は、12年6月のILO総会において、決議「若年雇用の危機:行動の要請」を採択した。この決議は、若者を対象とするディーセントワークを促進するための政策として、(1)総需要を増やし、資金調達環境を改善する雇用・経済政策、(2)学校から仕事への移行を容易にし、労働市場のミスマッチを防ぐ教育と訓練、(3)不利な条件に置かれた若者の雇用を対象とする労働市場政策、(4)潜在的な若年企業家を援助する企業家精神と自営、(5)若者が平等な待遇を受けられるようにするための国際労働基準に基づく労働の権利――の5つを盛り込んでいる。
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2013年 > 6月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > ILOの記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 若年者雇用
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > ILO
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > ILO