AFL-CIO会長、組織化の新戦略呼びかけ
―「伝統的な組合主義の外へ」

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2013年4月

アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)のトラムカ会長は3月に開かれた会議で、新たな組織化戦略を提起した。伝統的な組合主義の外に出ようという内容で、労働者の権利擁護などに取り組む労働組合以外の新組織との連携、雇用労働者とは相違した形態の労働者を包含する組織づくり、労組パッシングに対抗するための地域住民との協力強化などを打ち出した。

労働運動の外にある労動者を包括するための3つの戦略

会議は3月7日、イリノイ州大学とAFL-CIOイリノイ州支部シカゴ労働組合連盟が共催で開いた。同会長は新たなモデルとして、「伝統的な組合主義の外にある」方法であり、現在、様々な形で全米中で実験中だと指摘した。

会議の冒頭でトラムカ会長は、「アメリカ国内の組合員が前年とくらべて40万人減少したことを危惧する」と発言した。

AFL-CIO単独では昨年一年間で組合員が約7万人減少している。アメリカ全体では、2011年の11.8%の組織率、組合数1476万4000人から、2012年の11.4%の組織率、組合員数1436万6000人になった。1983年の組織率20.1%、組合員数1770万人から、30年でおよそ330万人も減少したことになる。

このような状況にあっても、トラムカ会長は組織化の対象とすることができる労働者がおよそ6000万人いるとする。そして、彼らをこれまでの雇用労働の枠組みに必ずしもとらわれない「新世代労働者(New Generations of Workers)」と表現した。そのうえで、「もはや法的な制約にとらわれる時期ではない」と述べて、3つの戦略を提示した。

  • 戦略1:労組でなくとも労動者を代表する組織と手を組む。
  •  アメリカには、現在、労組ではないが労働者の権利を擁護したり、職業訓練を行ったり、健康保険や年金といったサービスを提供する組織が地域や職業別のコミュニティや宗教組織を基盤として発展している。これは、労組が伝統的に頼ってきた合法的な団体交渉以外の道である。
  • 戦略2:雇用労動者以外も包括する。
  •  現代は、正規雇用という伝統的な雇用形態以外の、請負や家内労働といった労働者の数が拡大している。このような労働者を取り込むことが必要であり、すでに実験的な試みが始まっている。労組では、サービス従業員労組(SEIU)や、州郡市町村職員連盟(AFSCME)やライターズギルドなどのほか、労組ではない組織であるワーカーセンターにもそのような動きが拡大している。そこには、家内労働者や独立自営業者のタクシー運転手などを含む。
  • 戦略3:団結力を効果的かつ能率的に活用するための労組内部構造の改革
  •  近年のアメリカではライト・トゥ・ワーク法NEWが拡大する動きや州法によって州公務員労組の権利制限の動きNEWがあるなど、労組バッシングが拡大している。その対応策として、地域との協力関係が不可欠になってきている。

トラムカ会長は、「言い訳を言い続ける時は終わった」と述べ、地域と連携するために労組内部構造を改革しなければならないとした。それにより、効果的に人々を活動に巻き込み、事態を動かすとする。

新しい戦略の具体例

会議では、いくつかの組織による現在の取り組みも紹介された。

低賃金労働者を支援する活動を行っているアライズ・シカゴ(Arise Chicago)からは、宗教組織と低賃金労働者を代表する組織との連携について報告があった。その内容は、イリノイ州における家内労働者法の創設、賃金未払いを行った使用者の事業免許取り消しを市議会に働きかける、最低賃金制度に関する教育を数千人の低賃金労働者に対して実施する、労組組織化支援、などである。

全米食品商業労組(UFCW)からは、「ウォルマートに変化を起こすキャンペーン(Making Change at Walmart)」が紹介された。これは、これまで労組による組織化を拒んできたウォルマート社の従業員組織の活動を支援するものである。これらの組織は合法的な団体交渉権を持つ労組ではない。しかし、賃上げや労働条件改善のための活動を行なっている。そのために、労働者が宗教組織やコミュニティ組織、UFCWと協力している。

そのほかの新しい連携―モンドラゴンとUSW

今回の会議で取り上げられていない新しい連携の動きもある。

全米鉄鋼労組(USW)とスペイン・バスク地方の労働者協同組合モンドラゴンとの提携による新しいプログラムというものだ。

USWとモンドラゴンは2009年にアメリカ国内で労働者協同組合を立ち上げるための提携契約を締結した。それに基づいて、オハイオ州クリーブランド市、シンシナティ市、ペンシルバニア州ピッツバーグ市で事業体が立ち上がっている。太陽光発電などのグリーン・ジョブと連携し、市の病院からクリーニング事業を請け負う業務などである。出資者は提携先の病院や地元の基金などが中心であり、市、州、連邦レベルの政治家も参画している。その様子は動画サイトでもみることができる。

参考

  1. Bologna Michael, Trumka Calls on Labor Movement To Adapt to New Models of Representations, Daily Labor Report, March 7, 2013.
  2. Amy Dean, Why Unions Are Going Into the Co-op Business The steelworkers deal that could turn the rust belt green.Yes!, March 5, 2013.
  3. Remarks by AFL-CIO President Richard L. Trumka, 2013 Conference on New Models for Worker Representation, Chicago, March 7, AFL-CIO Webサイ
  4. 動画サイトのリンクリンク先を新しいウィンドウでひらく

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