12年の生産年齢人口、建国以来初めて減少
―「人口ボーナス」の終焉告げる―

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2013年3月

国家統計局が1月に発表した最新のデータによると、中国当局が「生産年齢人口」とする15~59歳層の人口は2012年、建国以来初めて前年を下回った。経済成長の推進力の一つだった「人口ボーナス」の終了を予告する数字といえそうで、今後、労働力不足の事態への対応も迫られる。中期的には、労働力の質的向上のために、教育水準の高度化と労働技能の向上を必要としている。一人っ子政策の見直しも加速する可能性がありそうだ。

労働力不足で、潜在成長率の低下へ

統計局の発表によると、2012年の生産年齢人口は9億3727万人で、前年から345万人減少した。減少は、1949年の建国以来、初のことだ。生産年齢人口の減少は当然ながら労働人口の減少に直結する。工業化の過程で農業部門の余剰労働力が尽きて、賃金が上昇し始める、いわゆる「ルイスの転換点」は既に通過したものと見られていたが、今回の公表で生産年齢人口の減少も確認された。

生産年齢人口が減少に転じる、いわゆる「人口ボーナスの終了」は2010年代前半にも迎えるだろうと言われていたので、今回の結果は予測の範囲内と言える。

生産年齢人口が減少することの問題点の一つに、潜在経済成長率の低下が挙げられる。図1は経済成長率と都市部での求人倍率の推移を示している。一般に、実際の成長率が潜在成長率を大きく上回るほど、労働需給は逼迫する。成長率が低下すると労働需給は緩和され、求人倍率も低下する。しかし2012年時点では、成長率が大幅に下がっているにもかかわらず、求人倍率が高水準を維持している。これは労働力の供給不足などに制約されて、潜在成長率が従来の水準から大幅に低下していることを示唆している。

図1:実質GDP成長率(左軸:%)と都市部求人倍率(右軸:倍)

図:実質GDP成長率(左軸:%)と都市部求人倍率(右軸:倍)2001-2012年

  • 出所:IMF、人的資源社会保障部
  • 注:実質GDP成長率は前年比

求められる教育水準と労働技能の向上

人口ボーナスが終了した今後は、従来の労働集約型産業から、付加価値の高い資本・技術集約型産業への転換が必要といえる。そのためには、教育水準の向上、労働者の技能向上の双方が必要である。2010年に実施された人口調査によると、農村部における最終学歴が中学卒業以下の割合はおよそ9割を占めている(表)。こうした層の引き上げによる教育水準の向上、および労働技能の向上が、労働力人口が減少する中での重要な課題である。しかしながら、直近の状況としては労働力不足と賃金上昇を背景に、若年者を中心に就学意欲が低下しているとの声もある。

表:農村部の最終学歴
最終学歴 人数(人) 比率(%)
小学校 15,063,255 36.45
中学校 22,363,544 54.12
高校 3,179,742 7.70
専門学校 567,292 1.37
大学 141,620 0.34
大学以上 6,078 0.01
合計 41,321,006 100.00

出所:統計局、2010年第6回人口調査

一人っ子政策見直しの可能性も―政府は厳正策を堅持の方針

人口ボーナスの終了とともに「一人っ子政策」を見直す声も出てきた。2010年に10年ぶりに中国で実施された大規模な人口調査「人口センサス(2010年)」では、中国の出生率がこれまでの予想(1.8程度)を大きく下回る1.18にまで低下していることが明らかになった(図2)。

「一人っ子政策」は確かに社会的負担の低下をもたらしたが、その反動として高齢化の加速の一因となった。また男女比のアンバランスも問題視されており、国家人口・計画出産委員会の最新統計によると、中国の出生人口性別比は女子100人に対し、男子118人と極めてアンバランスな状態となっている。それにより、2020年には結婚できない男性が3000万人に上ると予想されている。それゆえに、目下「一人っ子政策」の修正が議論になっている。現在、地域によっては第2子を持つことが認められている。

こうした中、3月17日に閉幕した第12期全国人民代表大会では、一人っ子政策を主導してきた国家・人口計画出産委員会の解体が発表された。1998年以来の大規模な政府機構再編の一環であるが、これにより32年間一人っ子政策を主導してきた国家人口・計画出産委員会の計画出産管理機能は、衛生部との統合で新たに創設される国家衛生・計画出産委員会に委譲される。機構再編で一人っ子政策の行方に注目が集まったが、指導部は基本国策としての立場を再編後も堅持すると断言している。同委員会メンバーの楊玉学氏は、「今後も依然として国策である計画出産を継続することが、人口問題に関する基盤であり前提でもある」とし、「計画出産は高齢化要因の一つに過ぎず、主因ではない」とする見方を示した。

図2:地域別出生率

図2:2010年第6回人口調査における地域別出生率

出所:2010年第6回人口調査

参考資料

  • 人的資源社会保障部、統計局、IMF、人民日報、中国証券網

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