AFL-CIOの組織員数840万人弱
―2012年、前年比で約10万人減少
AFL-CIO(米労働総同盟・産別会議)の2月末の発表によれば、傘下組織の2012年の組合数は834万4725人で、前年に比較して約7万人減少した。11年の対前年比の減少数は10万1000人だったので、それに比べれば、わずかながらも減少の度合いに歯止めがかかったといえそうだ。
減少目立つ公共サービス関連の組織
AFL-CIOに加盟する組織数は57を数える。そのうち16組織で組合員数が8万2183人増加した。その一方で、25組織で組合員数が15万2500人減少した。 そのほかの16労組は変化がなかった。
増加した組織は上から、UNITE-HERE(縫製・繊維労組・ホテル・レストラン従業員組合)の2万2297人、National Nurses United(全米看護師連合)の1万23人、AFGE (米国行政府職員連合)の9050人、IAM( 国際機械工・航空宇宙産業労働者組合)の5610人だった。5000人以上増加したのは、看護を含めサービス産業が中心だった。
減少した組織は上から、AFT(米国教員連盟)の3万513人、AFSCME(米国州郡市町村職員連盟 )の2万5847人、 ILA(国際港湾労働者協会)の2万5395人だった。アメリカの教員は州、市、郡といった地方政府によって雇用されている。したがって、AFSCMEと合わせると、2012年の1年間だけで、地方政府において公共サービスに従事する組合員のうちおよそ6万人が組合から離れたことになる。
つまり、増加の中心はサービス産業であり、減少の中心は地方政府における公共サービスだった。
過去5年間で減少トップはUAW
2007年からの12年までの5年間をみると、組合員数を最も減らしたのは、UAW(全米自動車労組)の14万552人だった。ついで、CWA(全米通信労組)の13万8939人、IAMの6万5551人の順となった。
反対に、この5年間で組合員数を増やした上位は、AFGEの6万1255人とIAFF(国際消防士協会)の3万人だった。
米国の労組組織とは
この調査結果はAFL-CIOが2月26、27の両日にわたってフロリダで開催した中央執行委員会の場で公表された。これはもともとは内国歳入庁に報告するためのものだ。 内国歳入庁の目的は労組が一会計年度に何人の組合員から何カ月間、組合費を集めたかを把握することだ。そのため、組合員数は年間平均の延べ人数として公表される。
なぜ内国歳入庁が労組の活動を管轄するのか。アメリカには日本の労働組合法のように労働組合について規定している法律はない。税制上の優遇措置を受けるために内国歳入法上の規制があるのみである。これは、たとえばNPOや大学などの教育機関などにもあてはまる。
団体交渉については全国労働関係法(NLRA)があり、合法的に団体交渉を行うための手続きが記載されている。しかし、合法的に団交を行うことができない労組の存在が否定されるわけではない。したがって、NLRA上では合法的に団体交渉が行うことができないが、労働問題を扱う組織として内国歳入法で税制上の優遇措置を獲得することは理論上可能なのである。
労組員の範囲拡大―職場から地域への動き
しかしながら、従来は労働組合といえば合法的に団体交渉を行うことができるもののみをさしていた。その動きが近年変わりつつある。
たとえば、UFCW(食品商業労働組合)はスーパーマーケット・チェーンのウォルマートの従業員を事実上組織化している。組合員から組合費を徴収しているが、使用者側との合法的な団体交渉権はない。たとえ団体交渉ができなくとも一定の数の従業員が労組に組織化されることによる実質的な発言権の向上が狙いだ。
また、労組ではないものの労働者の権利擁護や法的扶助、職業訓練などを実施するワーカーセンターが1990年代以降、多く誕生してきているが、これらの組織もAFL-CIOは取り込む努力を続けている。
さらには、2008年の大統領選挙にあわせてワーキング・アメリカというNPOをAFL-CIOは立ち上げている。組織化する場所は職場ではなく地域である。その数は300万人を超えている。
また、420万人の退職者もAFL-CIOのメンバーである。彼らは医療保険や年金などの労組が勝ち取ってきた社会保障制度の恩恵に与るためにAFL-CIOにとどまっている。それらの数を総合すれば現状の倍にのぼると思われる。
なお、AFL-CIOから分離したChange to Winや独立系労組のほか世界産業労組(IWW)などがあり、アメリカ全体の組織率は2012年で11.3%、組合員数は1440万人を数える。
参考
- AFL-CIO Membeship Report, ?AFL-CIO Executive Council Meeting February 26?28, 2013 Orlando, Fla.
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