移民人口、生産年齢人口の約10%に
―失業率は非移民の2倍、政府が報告書

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2013年2月

政府が発表した報告書によると、2011年のフランスの移民人口は400万人にのぼり、同国の生産年齢人口の10%を占めた。失業率は、移民が16.1%と非移民の約2倍の水準となっており、特に北アフリカ諸国出身者の失業率は20%を超えている。パートタイマーや有期雇用契約者、建設業やホテル・レストラン業の就業者で、移民の比率が非移民と比べて高い。

高学歴化進むが、半数近くが中卒程度

フランス本土における15歳以上65歳未満の年齢階層人口のうち、400万人が移民(注1)であった(注2)。これは、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の10%に相当するが、この比率は上昇傾向にある。ちなみに、2003年時点では8.6%だった。同年齢階層の移民の270万人が労働力、すなわち就業者又は失業者(注3)であった。15歳以上65歳未満人口の労働力に占める移民の比率も上昇傾向にあり9.6%となった。15歳以上65歳未満の移民に占める女性の比率は53.1%となっており2003年時の50.7%より上昇した。

15歳以上65歳未満の移民を年齢階層別の分布にみると、15歳以上30歳未満と55歳以上65歳未満の比率がそれぞれ2割弱で、30歳以上55歳未満が6割程度である。移民と非移民との間の年齢構成の違いは、若年者(15歳以上30歳未満)の割合が、移民より非移民の方が高く、逆に中間年齢層(30歳以上55歳未満)の比率が移民の方が非移民より高い。移民の年齢構成は2003年と2011年の間で大きな変化はないが、非移民については中間年齢層の比率が低下するとともに、高年齢層(55歳以上65歳未満)の比率が上昇した。

学歴別にみると、移民、非移民とも高学歴化が進んでいるものの、移民には低学歴の者が比較的多い。移民の半数近くは中学卒業相当の学業修了証以下しか所持していないが、非移民では4分の1程度にとどまっている。移民のうち高等教育(大学以上)の学業修了証を持っている者の比率は21.9%で、非移民の29.5%と比べて依然として低い。

マグレブ3カ国から約3割

15歳以上65歳未満の移民の出身国別の割合(注4)は、モロッコが14.5%、アルジェリアが12.7%、チュニジアが4.4%となっており、旧植民地の北アフリカのマグレブ3カ国だけで移民のおよそ3割を占める。EU加盟国出身の移民についても3割を占めており、中でもポルトガル(移民全体の12.8%)、イタリア(同3.4%)、スペイン(同2.9%)の3国出身者が多い。旧植民地が多いサハラ砂漠以南のアフリカ諸国(注5)は14.4%、トルコは5.1%を占めている。なお、フランスの旧植民地であるインドシナ諸国(ベトナム、ラオス、カンボジアの3国)出身者は2.7%に過ぎない。

平均年齢についてはイタリア及びスペイン出身者が50歳を超えており、ポルトガル、インドシナ諸国が40歳代半ばとなっている。北アフリカのマグレブ諸国出身者は、40歳代前半で、トルコやサハラ砂漠以南のアフリカ諸国出身者は30歳代である。これはフランスへ移民した時期の違いが大きな要因となっている。実際、平均のフランス在住期間は、スペイン、イタリア、ポルトガルのヨーロッパ諸国の移民は30年を超えており、インドシナ諸国が26年、北アフリカのマグレブ諸国が20年以上、トルコが20年、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国が16年となっている。

トルコ・アフリカ出身者、高い失業率

移民の労働力率は67.5%となっており、非移民の70.7%より低い。男女別では移民男性の労働力率が78.0%で非移民男性の74.6%より高いのに対して、女性では移民女性の労働力率が58.0%で非移民女性の67.0%より低い。出身国別の労働力率は、ポルトガルの78.8%を筆頭に、インドシナ諸国やサハラ砂漠以南のアフリカ諸国で7割を超えて高い水準にある。逆にトルコ出身者の労働力率は57.8%と低い。この違いは女性の労働力率によるものとされている。ポルトガル出身女性の労働力率が75.3%に達しているのに対して、トルコ出身女性では32.0%に過ぎない。

移民の失業率は16.1%と高い水準にあり非移民の8.5%と比べて2倍近い。特に、トルコ出身者の失業率は25.8%に達しており北アフリカのマグレブ諸国及びサハラ砂漠以南のアフリカ諸国出身者でも20%を超えている。それに対して、ヨーロッパ諸国失業者の失業率は低く、ポルトガル出身者で5.6%、スペイン出身者で7.4%、イタリア出身者でも8.5%にとどまっている。なお、インドシナ出身者の失業率は11.4%であった。

移民の就業率は56.6%で非移民の64.7%より低い。特に、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国出身者の労働力率は比較的高いのにもかかわらず、高失業率の影響により就業率は58.0%にとどまっている。トルコ出身者は労働力率が低い上に失業率が高いため就業率が42.9%に過ぎない。

他の条件を一定にすると、すなわち、年齢、子供の数、学歴、フランス滞在期間などが同じ場合、移民が失業者となる確率は、ヨーロッパ諸国(イタリア、スペイン、ポルトガルの3国)出身者以外は非移民と比べて高い。特に、北アフリカのマグレブ3カ国の出身者の失業者となる確率は、非移民の2倍を超えている。

長期失業、パート労働、有期労働で比率高く

失業者に占める長期失業者の割合も移民で高い水準にある。長期失業者の割合は非移民で40%であるのに対して、移民は48%となっている。特に、北アフリカのマグレブ諸国出身者の比率は52%となり、さらに女性に限れば、58%に達する(非移民女性の長期失業者の比率は39%)。

パートタイムで就業する者の比率(注6)は、非移民で17.4%であるのに対して、移民では20.4%と比較的高い。男女別に見てもパートタイムで就業する者の比率は、非移民と比べると移民の方が高い。また、パートタイムで就業している最大の理由として、「フルタイムでの仕事が見つからなかったため」としている者は、非移民で29%であるのに対して、移民では41%となっている。特に、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国出身者に関して、この比率が55%に達している。

さらに、有期の雇用契約(有期雇用契約CDD及び派遣)で就業している者の比率は、非移民で13.2%であるのに対して、移民では16.2%となっている。特に、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国出身者では、この比率が21.0%に達している。

移民者が比較的多く就業している業種(注7)は、家事代行・支援業や警備業、建設・土木業、ホテル・レストラン業である。就業者全体では、8.6%が移民であるが、家事代行・家事支援の職では34.7%、警備員では28.6%、建設業の熟練労働者の27.1%、ホテル・レストラン業の従業員(管理職は除く)の19.4%が移民労働者によって占められている。ちなみに就業者に占める公務員の比率は非移民で20.6%であるのに対して、移民では10.4%に過ぎない。

参考資料

(ホームページ最終閲覧日:2013年2月5日)

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