派遣労働、業務厳格化や罰則強化へ
―労働契約法を改正、7月に施行―
全国人民代表大会常務委員会は昨年12月28日、労働契約法の一部修正を決定した。修正点は派遣労働関係に集中し、曖昧だった派遣可能業務の厳格化や派遣元企業に対する罰則強化などを盛り込んでいる。労働契約法は2008年に導入されたが、改正は初めて。改正法は今年7月に施行される。
同一労働同一賃金の規定、事業参入の管理など強化
今回の主な改正点は4点で、派遣可能業務の明確化、同一労働同一賃金の強化、派遣事業参入の管理強化、そして罰則の強化である。
派遣可能業務の明確化は、これまで「派遣労働が可能な業務は、臨時的・補助的・代替的業務に限る」という曖昧な基準であった。これを「臨時的」は「在続期間が6ヶ月を超えない業務」、「補助的」は「主要な業務のためにサービスを提供する業務」、「代替的」は「労働者が学習・休暇等のため就労不可能な期間に、それを代替する業務」と、それぞれより詳細な規定に変えた(第66条)。
同一労働同一賃金の強化については、「派遣労働者は派遣先の労働者と同一の労働に対して同一の賃金の権利を有する」との記載にとどまっていた。改正法は「派遣労働者は派遣先の労働者と同一の労働に対して同一の賃金の権利を有する。派遣先企業はこの労働者に対して、同等の職務を行うものと同一の労働報酬の分配(賃金支給)をしなければならない。派遣元企業が被派遣労働者と締結する労働契約、および派遣先企業と締結する契約は、この規定に適合するものでなければならない」とし、派遣元・派遣先の順守を求めている(第63条)。
また派遣事業を行うための最低登録資本金を50万元から200万元に引き上げ、事業参入の管理強化を図る。行政許可の申請も必要とする(第57条)。
罰則はこれまで「労働契約法が定める規定に違反した場合、派遣元企業に是正を命令する。程度が重大な場合は派遣元企業に対して一人につき1,000元以上5,000元以下の罰金を課す」と規定していた。それを、「労働契約法が定める規定に違反した場合、派遣元企業に期限付きで是正を命令する。期限を越えて是正しない場合は、派遣元企業に対して一人につき5,000元以上1万元以下の罰金を課す」とし、罰金の金額を引き上げた(第92条)。
国有企業の強い反対を押し切って
労働契約法の改正にはかねてより国有企業が強く反対していた。国有企業はかつての「国有企業改革」の結果、大規模な人員の削減を余儀なくされた。その減少した人員を補填するために、派遣労働者への依存を高めた。大手の国有企業では、派遣労働者が全労働者の3分の2を超えるケースもある。
さらに2008年に労働契約法が施行された後は、正規労働者の保護強化の副作用として、派遣労働者が国有、民間を問わずそれまで以上に増加した。人的資源社会保障部によれば、2008年の労働契約法施行前の派遣労働者数は約2000万人であったが、施行後の2009年には約2700万人にまで急増した。
こうした状況下、国有企業は企業経営を厳しくするとして「工資条例」の導入、「収入分配改革」の促進、そして「労働契約法」の改正のいずれにも反対していた。しかし人的資源社会保障部は、改正案に55万件以上のパブリックコメントが寄せられるという、社会の高い関心を呼んだ労働契約法の改正を、国有企業からの反対を押し切って実施した格好だ。
派遣労働者数の比率も制限、具体的数字は今後に
労働契約法の改正法は派遣労働者の人数制限にも言及している。「派遣先企業は派遣労働者の人数を厳格に管理しなければならず、全労働者数に対して一定の比率を超えてはならない。具体的な比率は国務院の労働行政部門が規定する」とした(第66条)。その具体的な数値は7月の施行までに決定する見通しだ。派遣労働者の人数制限については、既に地方政府が先行して取り組んでいる。重慶市が2011年に施行した「重慶市職工権益保障条例」
では、派遣労働者は全労働者の30%を越えてはならないとしている。また広東省は昨年「広東省労務派遣管理規定」の制定案を公開した。その中で重慶市と同様に、派遣労働者は全労働者の30%を越えてはならないとしている。
参考資料
- 中国経営報、北大法意、新華新聞、北方新報、西安晩報、人的資源社会保障部
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