求職者手当の支給停止件数が増加
―制裁措置の厳格化以降、初の統計

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2013年12月

求職者手当受給者に対する制裁措置の統計が、半年にわたる遅延の末、11月に公表された。昨年10月に制度が厳格化されてから今年6月までにのべ58万人が制裁措置の対象となった。このうち、手当の支給停止を伴う制裁措置の件数は、制度改正前後で4割増えている。

初回の違反で4週間の手当支給停止

求職者手当申請者に対する制裁措置に関する統計の公表は今年2月以来となる。本来は5月に公表が予定されていたが、データの精度が不確実との理由で延期が続いていた。特に、2012年10月に行われた制度改正(図表1)以降の制裁措置の状況を初めて明らかにする統計であることから、影響をはかる意味で関心が寄せられていた。主な改正内容は、手当の支給停止期間を従来の1~26週間から4~156週間に大幅に延長したこと、またこれまで手当の支給停止が適用されていなかった中度の違反(従来は受給資格が一旦停止するが、すぐに再申請が可能)に対しても、新たに4~13週間の支給停止期間を設けたこと、などだ。

今回公表されたデータによれば、制度改正以降、2013年6月末までのおよそ8カ月間で制裁措置の対象となったのはのべ58万人(注1)で、件数としては改正に先立つ8カ月間(のべ56万人)とほぼ変わっていない。ただし、手当の支給停止をの適用件数としては約4割の増加となった。これには、中度の違反の一環として新たに手当の支給停止の対象となった「積極的に求職活動を行っていない」(アドバイザーが課す求人への応募件数に達しない場合など)ことを理由とする制裁措置件数の増加の影響が大きく、「雇用プログラム・訓練への参加義務違反」と併せて件数を押し上げている。一方で、従来は最多の適用理由であった「アドバイザーとの面談への参加義務違反」(注2)や、「紹介された仕事を拒否」などによる制裁の適用は、制度改正と前後してむしろ件数が減少した(図表2)。

なお、10月以降の制裁措置の8割は初回の違反に対するもので、また全体の半数以上を軽度の違反が占める。旧制度下では1~2週間であったこうしたケースに関する給付停止期間が4週間に延長されることで、広範な層がより長い期間、影響を受けることとなった。その多くが、25歳未満の若年層だ(全体の4割強)。

制裁措置の理由に関するこうした変化の原因は、明らかにされていない。グラスゴー大学のウェブスター博士は、「紹介された仕事の拒否」に関する制裁措置の件数の減少が、求職者側の行動の急激な変化によるものとは考えにくいと指摘。考え得る要因として、ジョブセンタープラスが公的な求職・求人ウェブサイト「ユニバーサル・ジョブマッチ」(昨年11月から、手当申請者に対して登録が要件化された)にマッチングを委ねて職業紹介を積極的に行わず、むしろ訓練や雇用プログラムへの参加に失業者を誘導している可能性を指摘している。また「面談への不参加」については、件数こそ減少しているものの、制裁措置の期間は従来より延長されていると述べ、厳格化の側面を強調している。

さらに、制裁措置の期間中に失業者が給付申請を停止することによる制裁措置の中断・解除の件数が急速に増加している。うち一部は、期間中に職を得たために申請を停止した層とみられるが、シンクタンクCESIは、失業者数の相応な減少が伴っていない(注3)ことから、失業者が求職者手当の受給から締め出されている可能性を指摘している。同様の特徴は、併せて公表された就労困難者向け手当(雇用・生活補助手当)の受給者に対する制裁措置のデータにも見られる。

なお、近年の各種就業体験スキームやその評価に関して議会図書館がまとめた資料によれば、厳格な条件を伴う支援策は、受給者の就業のチャンスを高めないまま、給付からの離脱のみを促す結果に終わりがちであり、特に雇用状況が低迷している場合、有効性は低いとの評価が一般的だという。

  • *1 なお、制裁対象となる違反から2週間以内に別な違反が発生した場合、制裁期間は加算されない。
  • *2 数日の待機期間後に再申請が可能。
  • 出典:DWP "Overview of revised sanctions regime"

図

出典:DWP Tabulation toolおよびDWP "Jobseeker’s Allowance and Employment and Support Allowance Sanctions - decisions made to June 2013, GB"

参考資料

参考レート

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