「活用されていない潜在的労働力」736.5万人と計算
―2011年労働力調査より

カテゴリー:統計

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  • 国別労働トピック:2012年9月

連邦統計局は8月15日に発表した労働力調査分析で、「活用されていない潜在的労働力」の数を計算している。現状よりも長時間働く希望を持つ労働者、就業可能だが求職していないなどの非就業者、それに失業者を加えると、その数は2011年には736.5万人に達するという(図1)。

「不完全労働者」は合計369.5万人

調査は、まず就業者をパートタイム、フルタイムに分けて、それぞれで、今よりも長い労働時間での就業を希望している労働者を「不完全労働者」との概念で括っている。それによると、不完全労働者の数は、パートタイム総数1050.1万人のうち196.2万人、フルタイム総数2913.7万人のうち173.2万人で、合計で369.5万人とカウントしている。

さらに、「就業意欲はあるが、その時点で短期的に就業不可能」と「就業可能であるが一時的に求職していない」の2つの非就業者を「静かな予備軍(Stillen Reserve)」と命名し、その数を116.8万人とはじいている。

以上の「不完全労働者」「静かな予備軍」に失業者250.1万人を合計した736.5万人を「活用されていない潜在的労働力」としている。

図1:活用されていない潜在的労働力(2011年労働力調査より) (単位:千人)
15歳から74歳 ドイツ全体
合計 男性 女性
15歳から74歳までの者 (注1) 63,031 31,437 31,594
 就業者 39,638 21,339 18,299
  パートタイム(注2) 10,501 2,152 8,349
  フルタイム(注2) 29,137 19,186 9,950
失業者 2,501 1,407 1,095
就業可能者(注3) 42,139 22,745 19,394
不完全労働者 3,695 1,806 1,889
 パートタイム(注2) 1,962 549 1,414
 フルタイム(注2) 1,732 1,257 475
静かな予備軍(Stillen Reserve) 1,168 528 641
  就業意欲はあるが、その時点で短期的に就業不可能 578 285 293
  就業可能であるが一時的に求職していない 590 243 348
 その他の非就業者 19,723 8,164 11,559
非就業者(注4) 20,892 8,692 12,200
活用されていない潜在的労働力合計 7,365 3,740 3,624
  • 注1:基礎兵役者および(兵役代替としての)社会奉仕者を除く。
  • 注2:パートタイムとは週31時間未満で働く者を指す。週32時間以上はフルタイムとする。
  • 注3:就業可能者とは「就業者」と「失業者」の総数である。
  • 注4:非就業者は、「静かな予備軍」と「その他の非就業者」の総数である。

パートタイムの潜在的労働力は大半が女性

活用されていない潜在的労働力は、部分的に男女でかなりの相違がある。

例えば、より長い労働時間を希望している「不完全労働者としてのパートタイム」は、196.2万人いたが、そのうち72%(141.4万人)は女性である。

ほかにも、不完全労働のパートタイム女性の数は、フルタイム女性(47.5万人)よりも3倍以上多かった(141.4万人)。なお、図1には示されていないが、同じ不完全労働のパートタイム女性でも、東部地域でより長時間働きたいと希望する者の割合は31.7%で、西部地域の14.3%よりもその割合が2倍以上高かった。

こうした地域の相違について連邦統計局は、東部地域のパートタイム女性の場合、フルタイムを希望しながら仕事を見つけることが出来ず非自発的にパートタイムになっているケースが多いが、西部地域の女性の場合、育児やその他の個人的な家庭的理由によって自発的にパートタイムを選択しているケースが多いと分析している。そのため西部地域の女性がパートタイムに就いている場合、より長い労働時間を希望することは稀で、それが地域差につながると見られている。

フルタイムは逆に男性が主流

一方、「フルタイムにおける不完全労働」は、前述のパートタイムとは異なり、男性が主流となっている。フルタイムにおける170万人の不完全労働者のうち、ほぼ73%(125.7万人)が男性である。その割合は東部よりも西部で高い。ただ、ここで考慮しなければならない点は、フルタイムにおける不完全労働者は、その大部分が「数時間だけ労働時間が増えるのを希望」していることである。

このほか、「静かな予備軍」は116.8万人だったが、女性は55%(64.1万人)、男性は45%(52.8万人)と、わずかに女性の方が多かった。

良好な経済状況を追い風に人出不足が懸念されているドイツでは、今後はこのような潜在的労働力の活用が重要な鍵となる可能性がある。

参考資料

  • Statistisches Bundesamt Pressemitteilung Nr. 279 vom 15.08.2012, Arbeitsmarkt kurz erläutert, “Ungenutztes Arbeitskräftepotenzial in der Stillen Reserve - Ergebnisse für das Jahr 2010―der in Wirtschaft und Statistik, Heft 04/2012”.

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