就労者一人もいない世帯が減少
―統計局調査、政府「制度改革の成果」
統計局は8月、世帯ごとの就業状況に関するレポートを公表した。就労年齢層(16-64歳)を含む世帯のうち、就労者が一人も居ない世帯(非就労世帯)の比率は前年から0.8ポイント減少して17.9%となった。一方で、全員が就労している世帯についても0.3ポイント減の53%となり、就労者と失業者が混在する世帯が増加傾向にある。政府は非就労世帯の減少について、近年の給付制度改革の成果を示すものであるとしている。
就労者と非就労者の混在世帯が増加
レポートは、1996年以降の各年4-6月時点の世帯における就労年齢層の状況をまとめている。これによれば、世帯ごとの就労年齢層の全員が就労している世帯は1089万1000世帯と全体の53%、前年同期比で3万6000世帯の減少となった(図1参照)。また、就労者と非就労者(失業者または求職もしていない者)が混在する世帯は、前年から24万6000世帯増加して597万世帯となっており、特に一方が非求職者の世帯が顕著に増加している。
図1 就労・非就労世帯比率の推移(%)
出典:"Working and Workless Households, 2012 - Statistical Bulletin" (Office for National Statistics)より作成。
非就労世帯は、前年から15万3000世帯減の367万6000世帯となった。このうち失業者を含む世帯(全員が失業者、または失業者と非求職者(注1))は93万1000世帯で、こうした世帯は不況以降は増加傾向にある。残る274万5000世帯が非求職者のみの世帯だ。世話の必要な子供を持つ一人親世帯では、非就労世帯の比率が37%と高いが、1996年の51.9%からは大きく減少している。また、子供の年齢が高くなるにつれて比率が急速に減少する(注2)。なお、非就労世帯のうち26万5000世帯(全世帯の1.3%)は、構成員がこれまで一度も就労(ボランティアや臨時の仕事を除く)したことがないと回答している。
また、非就労世帯に属する就労年齢層の構成員のうち、29%にあたる144万5000人が障害や健康上の問題を理由に就労していないと回答しているほか、103万1000人(21%)が失業、90万5000人(18%)が退職、77万9000人(15%)が家族の看護・家事、54万3000人(11%)が就学を理由に挙げている。年齢階層別には、非就労世帯に属する就労年齢層の44%を50-64歳層が占めており、こうした層が早期退職や健康上の理由などで労働市場から離脱しているとみられる。なお統計局によれば、退職や就学を理由に就労していない世帯を除く非就労世帯数は292万世帯だ。
グレイリング雇用担当大臣は非就労世帯の減少について、「現政府による給付制度改革の結果、より多くの人々が仕事に就いた」と成果をアピールしつつ、経済は引き続き困難な状況にあることから、非就労者に適正な就業支援を行う必要があると述べている。
不況でも雇用改善、今後悪化の可能性も
直近の雇用関連統計は、雇用状況の改善を示している。2012年4-6月期の就業者数は前期から20万1000人増の2947万6000人となり、ほぼ4年ぶりの水準に回復している。また失業率も、前期から0.2ポイント下降して8%(失業者数は対前期比4万6000人減の256万4000人)となった。昨年後半の大きな落ち込みから、パートタイム雇用や自営業者ばかりでなくフルタイム雇用にも回復の傾向がみられる(図2参照)。既に昨年から経済が縮小傾向にある中で、相応の雇用悪化が生じていない点には専門家は首をかしげている。この間の失業者の減少がロンドンに集中しており、飲食店スタッフや清掃、警備などのテンポラリー雇用で10万人強の増加があったことから、オリンピック関連の雇用拡大も寄与しているものとみられている。専門家の間では、今後も顕著な景気回復は見込めないとの予想から、雇用状況は再び悪化に転じるとの見方が強い。またシンクタンクのCIPDは、企業が人材流出を恐れて余剰労働力の保蔵を行っていることが一因ではないかとみており、今後、人員の整理解雇が始まる可能性を示唆している。
図2 フル・パートタイム被用者及び自営業者の対前期増減(千人)
出典:"Labour Market Statistics, August 2012" (Office for National Statistics)より作成。
注
- 学生や、世話の必要な子供(16歳未満、または16-18歳で未婚かつフルタイム就学中の子供)を持つ一人親など、求職していない層。
- 子供の年齢が0-4歳の一人親世帯では59%が非就労世帯だが、5-10歳で35%、11-15歳で23%、16-18歳で16%に減少する(なお、カップル世帯では0-4歳で6%、16-18歳で3%)。一人親に対しては、世話の必要な子供が一定年齢に達する年まで、低所得層向け給付の受給が認められ、求職は免除される。ただし、子供の年齢の上限は近年急速に引き下げられており、2008年には12歳であったが、2009年には10歳、2010年には7歳、さらに2012年5月以降は5歳となっている。
参考
関連情報
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