急増の大卒、好調な就職率の裏で問題山積
―戸籍・出身家庭で就職先に差、雇用ミスマッチも―

カテゴリー:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2012年9月

中国社会科学院付属の社会科学文献出版社から出版された「中国大学生就業報告2012」によると、2011年の大卒者の就職率は90.2%で、前年より0.6ポイント上昇した。大卒者数が近年急増しているにもかかわらず、就職率は高水準だ。しかし、その裏で問題が山積している。戸籍や出身家庭の所得の違いによって就職先に差が出たり、大卒者に対応した求人が十分とはいえない雇用のミスマッチも目立つ。中央・地方政府もいくつか対策を講じている。

2011年の就職率は90.2%

報告によると、大卒者の就職率(注1)は2008年から連続して上昇している。大卒者は2002年の145万人から2011年には660万人と大幅に増えている。それにもかかわらず、就職率は高水準を維持している。

また新規学卒者の失業率は低下傾向にある。2011年の新規学卒者失業率(卒業して半年以内に、フルタイムまたはパートタイム雇用についていない者の割合)は9.8%で、2008年の14.5%から低下し続けている。

給与についても継続して上昇しており、2011年の新規学卒者の月額給与の平均は昨年比11.6%増の2766元であった。2008年値と比べると、46.3%上昇している。

低就業者が増加、頻繁な離職も

就職率が好調に推移する一方で、就職率には表れてこない問題が山積している。その例として、格差の固定化と労働市場での需給ミスマッチを挙げる事が出来る。

格差の固定化については、学生の出身地や家庭の所得が学生自身の就職にも影響している。清華大学中国経済社会データセンターの調べによると、大学進学前に都市戸籍を有していた学生は、農村戸籍を有していた学生よりも、卒業直後の平均収入が8%高い。また、家庭の収入が上位20%に属する学生の就職後の収入は、下位80%の学生の就職後の収入より25%高くなっている。つまり、都市・農村格差や家庭間の格差が世代を超えて移転しており、その影響が大学生の就職にも表れている。

ミスマッチについては、ここ10年での労働市場の変化によるところが大きい。2001年と2011年を比較すると、製造業の発展に伴って、求人数は第2次産業で13%上昇し、第3次産業で13%低下している。こうした産業構造の変化を反映して、中学専門学校や専門技術院の卒業生に対する求人は増加しているが、大卒はそれに比べたら低調だ。急増する大卒にマッチした仕事の求人が十分とはいえず、大卒にとっては不本意な職につくケースも少なくない。これが、いわゆる低就業者(注2)の増加の一因となっている。また、大卒者の頻繁な離職傾向にもつながっている。先述の「中国大学生就業報告2012」によると、2008年に大学を卒業して就業した者は、その後3年以内に平均して2、3箇所の勤務先を経験している。

中央政府・地方政府、多様な対策

こうした状況を背景に、中央政府や地方政府は新規学卒者の就業対策に取り組んでいる。

国務院は昨年、「大学卒業生の就業対策を強化することに関する通達」を公表した。通達は、大学生の問題を就業問題全般の最優先課題と位置づけ、取り組むべき対応策として、雇用創出の推進、就業先の誘導、起業支援、インターンと訓練、就職活動の支援の5点を示している。

雇用創出の推進では、知識・技術集約型産業の中でもとくに雇用創出能力の高い新興産業(アニメ、情報技術、現代農業)に重点を置く。また、大卒者の採用を促すために、採用した中小企業に対して、社会保険料を免除し、融資面で優遇する。農村・中西部・貧困地域へ就職先を誘導するために、公務員試験とその後の昇進・昇給での優遇策をとる。起業支援では、小額担保融資や税額優遇を講じる。政府が認定した企業へインターンする学生に対する最低賃金額を上回る生活費を支給し、受け入れ企業を税制面で優遇する。企業合同説明会の開催、ネットでの情報活動などの提供など就職活動の支援を強化する。

一方、地方政府レベルでも多種多様な政策が行われている。例えば天津市では規定の専門資格を取得した者に対して、訓練費用および受験費用の全額相当分を地方政府が負担することで、専門技術者の確保に取り組んでいる。また天津市内にある国家職業教育改革実験区である海河教育園区では企業の需要を反映したオーダーメイド型の人材育成を行っている。学校が提供する専門科目や訓練プログラムは企業からの要望に基づいて策定される。海河教育園区の昨年の卒業生1.67万人の就職率95%であった。

参考資料

  • 中国大学生就業報告2012、清華大学中国経済社会データセンター、チャイナデイリー

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