SNSの活用、企業の採用活動に不可欠
―90%以上の人事担当者らが回答

カテゴリー:職業相談・職業情報・職業適性

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  • 国別労働トピック:2012年8月

フェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を従業員の採用活動に活用する企業が増えている。採用ソフトウェアの開発・販売などの事業を展開しているジョブバイト社が7月9日に発表した調査によると、企業の人事担当者らの92%がSNSの活用について採用活動で必要不可欠になっていると答えている。

ソーシャル・ネットワーキング・サービスとは?

SNSのうち、フェイスブックは全世界でおよそ9億5000万人の登録者数を数える。ツイッターと並んで2010年から11年にかけての中東から北アフリカ諸国で起きた民主化運動「アラブの春」の有力な原動力となったことで有名だ。その知名度にもかかわらず実際に利用したことがない者にとっては内容が理解しにくい。

若干の説明を加えよう。

ソーシャル・ネットワーキング・サービスとはPC、スマートホン、携帯電話などによりインターネットを通じて特定、不特定の複数の利用者との情報共有を行うものだ。

そのうちの代表格がフェイスブク、リンクトイン、ツイッターだ。これらは専用のソフトウェアもしくはインターネットのウェブサイトという形で提供される。サービスを利用するためには登録が最初に必要となる。その際に、フェイスブックとリンクトインは名前だけでなく住所、性別、趣味、年齢、出身大学、勤務先などの個人を特定する情報を登録することが推奨される。一方、ツイッターは匿名かどうかを問わない。

情報共有の方法も異なる。フェイスブックとリンクトインでは互いに承認しあった利用者の間での情報共有が前提となっている。つまり、自分が発信する情報を他の利用者と共有する場合と、他の利用者が発信した情報を共有する場合のどちらも登録者同士の閉じられた形で行われる。一方、ツイッターは他の利用者が発信した情報を共有する場合に許可をとる必要はなく、また自分が発信する情報も特定の誰かに向かう必要もない。

この特徴は両者の力点の違いによる。

ツイッターが発信された情報に力点があるのに対して、フェイスブックとリンクトインはそれに加えて利用者の個人情報や交友関係を含めたものを情報として価値を見出しているところである。これらの利用方法はその目的によって異なる。フェイスブックは主として企業の広告宣伝活動が目的であり、リンクトインは企業の採用活動や労働者の転職を支援することが意識されているのである。

したがって、リンクトインは単なる個人情報にとどまらず、勤務先情報やこれまでの職歴と業績、スキルなど、企業の採用担当者からみて有益な情報が入手可能となっているのだ。利用者側には、どの企業の採用担当者が自分の情報を見たのかという情報も提供される。これにより、利用者はどの企業の採用担当者が自分に関心があるのかを知ることができる。

このようなソーシャル・ネット・ワーキング・サービスによる採用活動はアメリカだけでなく日本でも行われるようになっている。たとえば、それは、就職活動の略称である「就活」をもじった「ソー活」という用語が近年使われるようになってきたこととしてあらわれた。

全ツールで企業の利用が増加

調査を実施したジョブバイト社は、インターネットを通じた採用支援ソフトウエアの関発・販売や採用候補者の調査支援などを行う企業。調査は2008年から毎年実施し、今回で5回目。5月から6月にかけて、企業の人事担当者および採用担当者800人以上から回答を得た。

前年2011年との比較では、フェイスブック、リンクトイン、ツイッターのそれぞれで「活用したことがある」とする回答が増えている。リンクトインは87%から93%へ、フェイスブックは55%から66%へ、ツイッターは47%から54%へ増加した。

このようなツールが採用活動において「必要不可欠となっている」とする回答は調査を開始した5年前の78%から92%へと大きく伸びた。

採用候補者のより詳細な情報を把握

採用担当者は得られた情報にどのような判断を下しているのか、調査はそのようなことも聞いている。

情報から悪い印象を受けるとしたのは、「不法薬物使用」が78%、「同性愛」が67%、「文法上の間違いやスペルミス」が54%だった。

中立的な印象としたのは、「政治的および宗教的な意見」で、それぞれ62%と53%。

肯定的な印象を受けるとしたのは、「ボランティアなどの活動」で66%だった。

実際にこれらのツールを活用して採用したことがあると回答した企業の数も増加傾向にある。その割合は、2010年に58%、11年に63%、12年には73%となった。内訳は、リンクトインを通じた候補者のうち89%、フェイスブックのうち25%、ツイッターのうち15%が採用へ結びついたとする。また、43%がこれらのツールを活用することによって採用候補者の質が向上したと回答した。

ソーシャル・ネットワーキング・サービスというツールを利用することで、採用候補者の交友関係やより詳細な個人情報、日常的な情報発信など、全方位的な評価を行う傾向が強まってきていると言える。

参考

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