新政権に重い足かせ
―雇用情勢、さらに悪化

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2012年7月

フランス労働省の発表によると、今年4月末時点の失業者数は、前月末比で0.1%増加(前年同月末比では7.5%の増加)し、288.9万人となった。これで、失業者数の増加は、12カ月連続となる。25歳未満の若年失業者の増加に歯止めがかかる一方、50歳以上の中高年失業者の増加や、失業期間が1年以上の長期失業者の増加が続いている。前政権の置き土産ともいえる失業の増大は新政権の重い足かせとなっている。

失業者数、12カ月連続で増加

失業者(カテゴリーAの求職者、注1)数は、今年4月末時点で288万8800人(フランス本土のみ、以下同様)となり、前月比で4300人(0.1%)、前年同月末で20万1200人(7.5%)増加した。これにより、失業者数の増加は昨年5月以降12カ月連続となった。

また、カテゴリーBの求職者(注2)数は57万5500人で、前月比で1.2%増、前年同月比では5.6%増だった。さらに、カテゴリーCの求職者(注3)数は85万4200人となり、これは、前月比では0.2%の減少となったものの、前年同月比では4.1%の増加となった。

その結果、今年4月末時点で積極的に就職活動を行なっていた求職者(カテゴリーA + B + Cの求職者)数は、前月比で9200人(0.2%)、前年同月比で26万5200人(6.5%)増加し、431万8500人となった。今年4月末までの1年間で、積極的に就職活動を行った求職者のうち就業していない者(カテゴリーAの求職者)の比率が増加しており、また、就業している者でも、長時間就業した者の比率が低下している。つまり、単なる求職者数の増加ではなく、求職者の置かれた状況に厳しさが増していると捉えることができる。

他方フランスでは、例えば職業訓練中の者は、積極的な求職活動を行なっていなくても求職者登録が認められる。このような無職で、積極的な求職活動を行っていない求職者(カテゴリーDの求職者)数は、今年4月末時点で23万8100人だった。これは、前月比で0.5%の減少であったが、前年同月比では1.3%の増加である。また、特殊雇用契約を締結して就業している者など、就業しつつ求職者登録をしているが積極的な求職活動は行なっていない者 (カテゴリーEの求職者)は同様に36万9200人で、前月比で0.7%減、前年同月比では5.3%増であった。

従って、今年4月末時点で、公共職業安定所に求職者登録をしていた者の総数(カテゴリーA + B + C + D + Eの求職者数)は492万5800人に上り、これは、前月比で5400人(0.1%)増、前年同月比で28万6800人(6.2%)増だった。

男性、高齢者層に厳しく

今年4月末時点でのカテゴリーAの求職者は、男性が149万3300人、女性が139万5500人だった。カテゴリーAの求職者数の増加率は、前月比で男性が0.1%増、女性が0.2%増であったものの、前年同月比では、男性が7.7%増、女性が7.3%増だった。したがって、カテゴリーAの求職者は、若干ではあるが、男性の方が労働市場の悪化の影響をより大きく受けたことがわかる。

また、カテゴリーAの求職者数を年齢階層別にみると、25歳未満が45万200人、25歳以上50歳未満が182万3600人、50歳以上が61万5000人だった。これを前月比でみてみると、25歳未満の若年層で0.4%の減少となったのに対して、25歳以上50歳以上の年齢層でほぼ横ばい(200人の増加)、50歳以上の年齢層で1.0%の増加だった。同様に、前年同月比では、25歳未満が5.0%の増加、25歳以上50歳未満が5.6%の増加、50歳以上が15.6%の増加だった。従って、ここ1年で全ての年齢階層においてカテゴリーAの求職者数が増加しているが、特に高い年齢層で顕著であるといえる。

長期失業が増加

求職者登録の期間別にみると、カテゴリーA + B + Cの求職者のうち、1年未満の者は265万6600人で、これは、前月比で0.3%の減少、前年同月比で5.6%の増加だった。同期間が1年以上の者は166万1900人で、前月比1.0%の増加、前年同月比では7.1%の増加だった。特に、求職者登録の期間が3年を超える「超長期失業者」は、前月比で1.7%、前年同月比で23.1%それぞれ増加し、今年4月末時点では、45万900人に達している。

また、今年4月末時点でのカテゴリーA + B + Cの求職者の求職者登録期間は、平均で467日間であり、これは、前月比で3日増、前年同月比で18日増だった。また、今年4月の1カ月間に求職者登録から外れた者(再就職者など)の平均求職者登録期間は255日間で、これは、前月比で4日の短縮、前年同月比では11日の増加だった。つまり、長期失業者の増加が目立ち、特に、長期間求職者登録をしている者の雇用復帰がより困難になっているといえる。

連帯制度の利用者が増加

フランスの失業保障制度は、「失業保険制度(Régime d’assurance chômage)」と「連帯制度(Régime de solidarité)」から構成されている。この「失業保険制度」は、被用者と雇用主の保険料を主な財源とする社会保険方式で運営されており、失業保険手当は、原則として4カ月以上就労し、保険料を拠出した失業者に一定期間支給され、その額は従前賃金を基準に算出される。一方「連帯制度」は、「失業保険制度」を補足する役割を担っており、国が行う扶助制度の一つである。主な財源は租税で、失業保険給付の支給期間を満了した求職者などに対して一定額が支給される。「連帯制度」における手当受給には収入基準があり、世帯収入が一定額を超えると支給が減額されるか手当の受給権を失う。

求職者(カテゴリーA + B + C + D + Eの求職者)のうち、失業保障制度の失業手当を受給していたのは243万800人で、これは、前月比で0.4%増、前年同月比で11.1%増だった(失業保障制度に関するデータのみ3月時点)。このうち、「失業保険制度」による失業手当受給者は207万7700人で、残りの35万3100人が「連帯制度」による手当受給者であった。「失業保険制度」による手当の受給者数は、前月比で0.3%増、前年同月比で10.3%増、「連帯制度」による手当受給者数は、それぞれ、1.1%増、16.3%増だった。従って、長期失業者の増加などを原因とする「連帯制度」による失業手当の受給者数の増加率は、「失業保険制度」によるそれより高い。

また、カテゴリーA + B + C + D + Eの求職者のうち、失業保障制度による失業手当を受給していた者の割合は49.4%だった(うち、「失業保険制度」による手当の受給者数が42.2%、「連帯制度」が7.2%)。およそ半数の求職者が失業保障制度による手当を受給していたことになる。

ILO基準失業率も上昇

他方、フランス国立統計経済研究所(INSEE)は、国際労働機関(ILO)の定義による失業率を、四半期ごとに発表している。最新の失業率は2012年第1四半期のもので、6月7日に発表された。

それによると、2012年第1四半期の失業率(フランス本土のみ)は9.6%で、2011年第4四半期と比べて0.3ポイントの上昇、2011年第1四半期を比べて0.4ポイントの上昇となった。(海外県も含むフランス全体の失業率は、10.0%に達した)

失業率を男女別にみると、男性も女性も9.6%だった。ただ、男性の失業率が、前四半期と比べて0.5ポイント、前年同時期と比べて1.0ポイント上昇したのに対して、女性のそれは、前四半期と変化なく、また、前年同時期と比べると、0.2ポイントの低下であった。

年齢階級別の失業率は、15歳以上25歳未満が22.5%に達しており、25歳以上50歳未満が8.9%、50歳以上が6.6%だった。どの年齢階級も、前四半期と比べると、0.2ポイントから0.3ポイント上昇したが、前年同時期と比べると、15歳以上25歳未満の若年層では0.2ポイント低下している。

出所

  • 海外労働情報協力員

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