オンライン求人数が28州で過去最高を記録
― 一方で、男性の就業率低下、労働力の高齢化が進展
インターネットを通じたオンライン求人数が5月、28州のそれぞれで2005年の調査開始以来、過去最高を記録したと全米産業審議委員会(The Conference Board)が公表した。その一方で、リッチモンド連邦準備銀行は男性の就業率が歴史的な低下をみせるとともに、労働力の高齢化が進展し、2015年までの推計ではさらに労働市場からの退出者が継続するとしている。また、労働力の高学歴化も進展している。
全米産業審議委員会の調査は、約1000のインターネット求人サイトへの調査に基づくもので、2005年5月から実施されている。対象は全米50州、および52大都市圏。従来は紙媒体による求人数も合わせて調査対象としていたが、2008年4月にはオンライン求人数に一本化した。数字にはすでに求人していないものも含まれる。調査は毎月行っており、前月から継続している求人と新規求人のそれぞれを算出している。
求人数、中西部で急速に回復
オンライン求人数の増加は中西部が目立っている。2007年-09年の景気後退期と比較すると、ミシガン州が53%増、ノースダコタ州が46%増、インディアナ州が44%増、オハイオ州が41%増と概ね40%以上もの増加となっている。
景気後退期以前の水準を上回ったのは28州にのぼり、中西部以外にも、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ペンシルバ二ア州といった中大西洋岸地域も求人数が回復している。
コンピュータなどの求人数が減少
一方、求人数が減少している職種と地域がある。
コンピュータ・数理科学職の求人数は減少しており、需給率も0.3とオンライン求人の中で最も低い数値にとどまる。
地域別では、アラスカ州を含んでカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州といった西海岸およびハワイと、メリーランド州からフロリダ州にいたる南大西洋岸地域で求人数が減少した。
全米レベルでは4月と比較してわずかに減少して470万の求人数となった。
男性の就業率、過去最低に
前述のように28州で景気後退期前と比較してオンライン求人数が伸びている一方で、男性の就業率が過去最低を記録したとリッチモンド連邦準備銀行が5月15日に調査結果を公表した。調査では、主要労働年齢(Prime Working Age)である25歳から64歳に関し、2010年と1983年を比較している。その理由はどちらの年も失業率が9%程度だったからである。
主要労働年齢における男性就業率は2010年が76%だったが、1983年は80%であり、4ポイント低下した。つまり非労働力がそれだけ増加したことになる。その割合は1983年の11%から2010年の15%へと4ポイント増加した。
高齢化、高学歴化する労働力
2010年の非労働力人口を年齢別にみると、55歳から64歳の男性がおよそ30%、45歳から54歳が13%、35歳から44歳が8%、25から34歳が10%となっており、高齢層にその割合が高い。
主要労働年齢における労働力人口を2010年と1983年とで年齢別に比較すると、55歳から64歳が3%増、45歳から54歳が8%増と増加している。一方で、35歳から44歳で1%減、25歳から34歳では9%減となるなど、中高齢層が増加して若年層が減少するというかたちで労働力の高齢化が進展している。
主要労働年齢における労働力人口を学歴別にみると、高校しか出ていない者は1983年の58%から2010年の44%へと14%低下した。
その一方で2010年の非労働力人口を学歴別にみると、高卒のみが1983年の14%から2010年の19%へと5ポイント上昇し、高卒以上大卒未満では1983年の8%から15%へとおよそ倍増した。
この点から、学士以上かそれ未満かで労働力にとどまるかどうかを分けている。つまり、1983年と2010年との比較では労働力がより高学歴化していると言えよう。
婚姻が男性を労働力に留める
婚姻の状態別の分析もある。男性の主要労働年齢における労働力を1983年と2010年で比較すると未婚男性の割合が上昇している。
その一方で、男性非労働力人口をみると婚姻している男性の割合が11%となり過去最低を記録した。離婚している男性は21%、死別が33%、未婚が19%だった。
したがって、婚姻が男性を労働力として留める一つの要因になっている可能性があると言えよう。
調査では、2015年までの推計も行っており、2010年で15%だった労働市場からの退出者が16%まで上昇するだろうとしている。その原因は45歳から64歳までの中高齢人口が増加することにあるしている。
参考
- Online Labor Demand Dips 45,000 in May but Upward Trend Remains Strong, May 30, 2012, The Conference Board
- Richmond Fed's Economic Quarterly Examines the Trend of Working-Age Men Leaving the Labor Force, May 15, 2012,The Federal Reserve Bank of Richmond
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