退職後の生活、「不安」増える
―経済危機後に顕著、NPO調査

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2012年5月

「退職後の生活に自信はありますか」。NPO組織の調査によると、退職後の生活に必要な資金について、現役労働者の47%が不足と答えており、この数字は20年前、10年前に比べて、2倍近く跳ね上がっている。不安の中心は医療・介護で、その資金について、「自信がある」と答える人は減ってきている。この傾向は、2008年の経済危機以降、目立つようになっている。

必要な資金、「不足」47%に

「退職自信調査」が調査の題名で、NPO組織・従業員福祉調査機構が1991年から毎年実施し、今回で22回目。20を超える公的・民間の組織からの寄付で、調査費用を賄っている。

回答者は1003人の現役労働者と259人の退職者。25歳以上の米国在住者から無作為抽出し、それぞれ20分間、電話インタビューした。退職後の生活に当たっての生活資金の自信、貯蓄などの状況、望ましい退職年齢などがインタビューの中身だ。

退職後の生活に必要な資金はあるかとの問いに、現役労働者の回答は、「十分でない」24%、「まったく足りない」23%で、両者合わせると47%だった。同種の回答の数字は、1993年=25%、2002年=29%であったため、20年前、10年前に比べて、比率は倍近くまで増えたことになる。

不足とする回答が目立つようになったのはリーマンショックによる景気後退期と重なる。2008年には37%を記録し、翌2009年からは40%を超えた。

財政状況についての問いについても、「自信がある」は1993年=17%、2003年=66%、2012年=52%と減り続けている。

不安の中心、医療と介護

一方、退職後の生活を送るための「基礎的な支出」についての問いでは、「十分ではない」「まったく足りない」とした回答は、1993年=17%、2002年=16%、2008年=21%、2012年=28%で、不安感は大きくなってはいるが、「必要な資金」の設問よりは高い数字を示していない。

しかし、医療費に十分な資金があるかを尋ねた設問では、「自信がある」が1993年で54%、2002年で65%と上昇したが、2008年に55%と再び下降に転じ、2012年には51%となった。また、長期間の介護に必要な資金があるかを尋ねた設問では、「自信がある」が1993年で45%、2002年で49%、2008年で44%だったが、2012年には37%となった。

一方、2012年に「十分でない」、「まったくない」とした回答では、医療費が46%、介護が62%となった。

つまり、基礎的な支出に不安があるとした回答の上昇率は顕著ではないが、内訳をみれば、医療費と介護に大きな不安を抱えるようになっているようだ。

現役よりも小さい退職者の不安感

生活に必要な資金、医療費、介護について退職者に聞いた設問で自信があるとした回答は、生活に必要な資金で80%、医療費で71%、介護で48%となった。これは、現役労働者の52%、51%、37%と比較すれば明らかなように、退職者の方が退職後の財政状況に不安感が小さいことが伺える。

この相違は社会保障制度への信頼感にもある。社会保障制度を退職後の主要な収入源とみる現役労働者が31%にとどまるのに対して、退職者は69%となるなど社会保障制度に信頼を寄せている。

現役、退職年齢の延長望む傾向

現役労働者が退職後の財政状況に不安を感じており、かつ社会保障制度に信頼をおかなくなってきていることから、主要な収入源として退職年齢を延長することを望むようになっている。65歳以降も働きたいとする現役労働者は1991年には11%に留まっていたが、2012年には37%へと急増した。

その一方で、健康上や雇用主側の理由により、退職年齢そのものはあまり変化していない。

参考

  • ISSUE BRIEF, No.369, Employee Benefit Research Instittute.

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