最高裁、下請企業労働者の直接雇用を認める
―派遣保護法のみなし雇用規定を適用―
大法院(最高裁判所(注1))は2月23日、現代自動車の工場で2年以上働き、解雇された下請企業労働者を実質的な派遣労働者と認定し、派遣労働者保護法のみなし雇用規定に基づき、現代自動車との直接雇用関係を認める最終的な判決を下した。
「禁止業務」「2年超」で、直接雇用義務
韓国の労働者派遣制度は、「派遣労働者の保護等に関する法律(派遣労働者保護法)」に規定されている。同法は、労働者派遣の対象業務を専門的知識、技能、経験を必要とする大統領令で定める業務(現在は191業務)に限定している。しかし、自動車産業のような製造業の直接生産工程業務への労働者派遣は禁止されている。
派遣期間は最長2年で、2年を超えて派遣労働者を使用した場合、使用者には当該派遣労働者を直接雇用する義務(みなし雇用規定)が課せられる。派遣禁止業務で派遣労働者を使用した場合は、2年を経過せずとも直ちに直接雇用義務が生じる。
裁判の経緯と判決内容
裁判の原告のC氏は現代自動車の下請企業に入社し、2002年3月から現代自動車の工場で働き始めた。現代自動車で2年以上勤務したC氏は、派遣労働者保護法に基づき、同氏を直接雇用するよう現代自動車に要求した。下請企業は2005年2月、労組活動を行ったことを理由にC氏を解雇した。
C氏は、不当解雇及び不当労働行為救済を求め、2006年に労働委員会、2007年にソウル行政法院、2008年にソウル高等法院に提訴した。しかし、いずれも現代自動車が不当解雇及び不当労働行為の主体である使用者とは認められず、C氏は大法院に上訴した。
大法院は2010年7月、C氏の主張を支持する判決を下し、ソウル高等法院に事件を差し戻し審査するよう命じた。ソウル高等法院は2011年、C氏勝訴の判決を下したが、現代自動車はこれを不服とし、大法院に再び上訴した。
大法院は2月23日、たとえ製造業への労働者派遣が禁止されているとしても、現代自動車が原告の下請企業労働者を直接指揮・監督していた事実に基づき、原告が実際には派遣労働者として働いていたと認定した当初の判決を是認する裁定を下した。大法院は、派遣契約が2年を超えた場合、派遣先企業に当該派遣労働者を直接雇用する義務を課す派遣労働者保護法の規定に基づき、原告は現代自動車に直接雇用されていたとみなされると判示した。ただし、禁止業務への違法派遣のため、現代自動車での勤務開始時に遡って、みなし雇用規定が適用されるとした原告の主張は認められなかった。
判決の影響、甚大と予想
社内下請契約は、製造業の大企業の職場で広範に利用されており、判決が産業に与える影響は甚大であると予想される。
雇用労働部の2010年の調査によると、従業員300人以上の1,939事業所のうち、41.2%が社内下請企業を利用しており、社内下請企業の労働者数は32万6,000人(調査対象労働者の24.6%)にのぼる。産業別には、造船で61.3%、鉄鋼で32.7%、自動車で16.3%を占めている。
造船業と鉄鋼業の関係者は、今回の事例において現代自動車の管理者が社内下請企業労働者を直接監督・指揮していた点に注目している。それは、自動車産業の場合、正規労働者と社内下請企業労働者が発注元企業の管理者に指揮され、同じベルトコンベヤーで一緒に仕事をしているが、造船業や鉄鋼業では、社内下請企業労働者が分離された職場でまとまって働くか、または、正規労働者と別個の製品を生産しており、発注元企業の管理者に直接監督されていないからである。
労使の反応
経済界は、「現代自動車が生産ラインに従事する労働者の20%に相当する社内下請企業労働者8,000人全員を直接雇用に転換することは不可能である。大法院判決は、産業現場や労働市場の変化を反映しておらず遺憾であり、多様な生産方法の選択肢が尊重されるべきである」と主張した。
韓国労働組合総連盟(FKTU)は、「製造業で慣行となっている違法な労働者派遣を禁止する扉が開かれた。現代自動車は社内下請企業労働者を速やかに直接雇用すべきである」と声明を出した。韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)も、「政府や巨大複合企業は、社内下請労働の形態に偽装された間接雇用を拡大する政策を取りやめ、すべての非正規労働者を正規労働者に転換すべきである」と主張した。
注
- 韓国の裁判制度では、大法院(最上級審)、高等法院(控訴審)、地方法院(第1審)及び特別の機能を果たす特許法院、家庭法院、行政法院の6つの法院が設置されている。
参考
- 韓国労使発展財団・国際協力センター(KOILAF)web情報
- 委託調査員レポート
2012年4月 韓国の記事一覧
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