今後10年で6億人の雇用創出が必要
―ILO報告「世界の雇用情勢2012」
国際労働機関(ILO)は1月24日、「世界の雇用情勢2012-仕事の危機の深刻化を防ぐ」と題する報告書を発表した。報告は、今後10年間安定しながら成長し、社会の結束を維持するためには、世界で合計6億人の雇用を創出しなければならないと試算。ILOは各国政府に対し早急な対策を求めている。
報告は、向こう10年の間、毎年4000万人、総計で4億人の労働力増加を見込んでいる。2011年末の世界の失業者数は1億9720万人(実績見込み)。この現在の失業者数2億人と合わせ、6億人の雇用を創出しなければ、労働力人口を吸収することができない計算で、「緊急の課題」とILOは強調している。
世界の雇用情勢の推移を見ると、2008年の世界金融危機の影響を受けて急速に悪化した後、2009年から緩やかな回復が見られたものの、この状況は長くは続かなかった。ILOは、2012年から再び失業者数が増加するという予測を複数のシナリオで示しており、最も基本的なシナリオに沿うと、失業率はさほど変化しないものの失業者数は2012年末までにさらに300万人増加して、初の2億人を突破すると見込んでいる。
図1. 世界の雇用情勢の推移と予測 (2002年-2016年)
注: 2011年は速報値。2012年–2016年は 初期予測.
出所: ILO Trends econometric models, October 2011 (see Annex 4); IMF, World Economic Outlook, September 2011.
特に雇用状況が深刻なのは若年者である。15歳~24歳の若者は世界で約7,480万人(失業率12.7%)が失業しており、就労していたとしてもパートタイムや一時的な雇用契約が多い。そのため失業リスクは上の年齢層と比較して高く、3倍近い。また、仕事が見つからずに求職活動をあきらめてしまい、潜在的失業状態にある若者も約6,400万人いるとILOでは推計している。そのため、若者の雇用情勢は依然として厳しい状況で、近い将来大幅に改善する見込みも立っていない。
ILOは、特に日本やアメリカ、ユーロ諸国などの主要先進国で、危機の対策が十分されていないと指摘。その上で、より深刻な仕事の危機を防ぐために各国政府がより効果的な政策を実施し、成長と雇用を前提条件としながら社会的に責任ある形で財政再建に取り組むことが重要であるとしている。
参考資料
- ILOプレスリリース(1月24日付、英語版)、「Global Employment Trends 2012: Preventing a deeper jobs crisis」(「世界の雇用情勢2012-仕事の危機の深刻化を防ぐ、英語版)、ILO駐日事務所プレスリリース(1月24日付)
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