超過勤務手当への所得税免除廃止など見送りへ
―首相、財政赤字削減策を発表

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2011年9月

フランスで財政赤字問題が深刻化している。国債の格付け引き下げが取り沙汰される中、フィヨン首相は8月24日、財政赤字削減策を発表した。主な内容は、高額所得者への課税引上げなどで、予想されていた超過勤務手当にかかる所得税の免除措置などの廃止は見送られることとなった。

富裕層への課税引上げを軸に

フランスの財政赤字は、GDP比5.7%に達しており、EUの安定・成長協定がユーロ導入国に求めている基準の同3.0%を大幅に上回っている。ヨーロッパでは、8月はじめ、アメリカの財政赤字問題が深刻化すると同時に、フランス国債の格付け引き下げ観測が流れた。その結果、パリ市場の株価が続落するなど、市場に動揺が広がった。こうした中、市場の懸念を払拭するため、フィヨン首相は8月24日、財政赤字削減策を発表した。

財政赤字削減策の主な内容は、高額所得者(勤労収入及び資産収入が50万ユーロを超える者)への課税の3%引き上げや、タバコやアルコール(ワインや地酒などは除く)、清涼飲料水への課税の強化、テーマパークにおける消費税(付加価値税)の税率引き上げなど。政府は、これら一連の施策により、2011年に10億ユーロ、2012年に110億ユーロの財源が確保できるものと見込んでおり、2012年の財政赤字は、GDP比4.6%から同4.5%に下がると予測している。ただ、同時に、GDPの伸び率は、2011年、2012年ともに、1.75%へ低下するとの予想も明らかにした(経済成長率の政府目標は、2011年が2.00%、2012年が2.25%)。これらの財政赤字削減策は、法整備を急ぎ、順次、実施される予定だ。

TEPA法の措置は継続

一方、政府の発表前に予想されていた、超過勤務手当にかかる所得税の免除および社会保険料の軽減措置の廃止については、同制度を実質的に維持しながら、他の税・社会保険料軽減策に組み込んで運用することとなった。

現行では、「勤労・雇用・購買力のための法律(通称:TEPA 法)」の下で、被用者の週35時間を超える超過勤務給与に係る所得税が免除されるほか、使用者負担分の社会保険料が軽減(注1)される。

2008年と2009年には年間900万人を超える被用者がこの措置の適用を受け、この措置によって家計は年平均約5万ユーロ節約できたとされる。2011年第2四半期には、超過勤務の増加が続いた(2011年第1四半期の+5.7%に続き、年+5.8%)。その結果、TEPA法に従って負担免除が適用された超過勤務時間数は第2四半期には1億8,600万時間になり、2009年以降最も多くなった。

今回の提案では、TEPA法で定められた税・社会保障負担に関する措置は実質的に見直されない。継続措置が決まった背景には、これまでの施策の効果に一定の評価が与えられたのと同時に、赤字削減策による内需の冷え込みを防ぎたいとの配慮があったものと思われる。新たな施策は2012年PLFSS(社会保障財源法案)に盛り込まれ、2012年1月1日から施行される。

参考

  • Les Echos誌、海外委託調査員

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=102.94円 (※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2011年9月26日現在)

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