55歳以上の労働力率が上昇、年金制度改革が影響
―国立研究所が推計

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2011年8月

フランス国立経済統計研究所(Incee)は4月、労働力人口推計を発表した。それによると、2060年には労働力人口は3,120万人と推計。また、2010年の退職年金制度の下限年齢変更の影響で、55歳以上の労働力率は上昇する、と予測している。

労働力人口、2060年に3,100万人強

2010年の労働力人口(ILO定義による労働力人口、フランス本土)は2,835万人。うち、2,570万人が就業者で265万人が失業者であった。労働力人口は10年間で210万人増加した。労働力人口の予測は、最新の観測値により更新された労働力率を基に、制度的変化要因を加味して求められる。今回はとりわけ、2010年における公的年金改革の影響が考慮された。予測は人口構成の動きと労働市場の傾向を勘案して推計されるが、これには人口構成のさまざまな変化や労働市場の構造的変化を反映して複数のバリエーションが存在する。

今後の予測の中心的シナリオによると、2025年には労働力人口は約170万人増加して3,000万人に達する可能性がある(図1)。これは年間11万人の増加に当たる。労働力人口はこの水準辺りで一時安定し平行推移するが、2035年からはゆっくりしたペースで再び増加を始め、2060年には3,120万人になる(年間4万5,000人の増加)。

図1 中心的シナリオでの労働力人口統計
図1 中心的シナリオでの労働力人口統計(1975-2060年)

しかしながら一方で、60歳以上の非労働力人口に対する労働力人口の比率(非労働力の高年齢者1人を支える現役労働者の人数)は、高齢者人口が今後大幅に増加するために低下を続ける。60歳以上の非労働力人口1人に対する労働力人口は、2010年には2.1人であるが、2060年には1.5人になる。同時に、多くの年代がこの年齢区分に達するため、労働力人口の平均年齢は上昇を続ける。55歳以上は2010年には12.4%を占めているが、2060年には17.9%に達するのに対し、25歳から54歳の占める割合は5ポイント低下する。25歳未満の占める割合は10%で横ばいである。

55歳以上男性の労働力率、2060年に80%に

労働力資源の見通しは、何よりも就業行動の推移に左右される。中高年労働者の労働力率は法改正の影響を直接受けるため、その予測は他の年齢層よりも複雑である。特に退職行動と密接にリンクする年金に関する制度改変は重要な変化要因となる。

例えば、1993年、2003年および2010年の公的年金改革は、保険料納付期間を長期化し、年金受給開始年齢を引き上げ、年金の算定方法を変更した結果、予測対象の全期間にわたり中高年の就業行動に影響を及ぼすこととなった。60歳から64歳の労働力率はこういった施策に最も敏感に反応する。この年代の労働力率は1975年から一貫して低下していたが、2000年代の初めから上昇している。公的年金改革と就業期間の長期化との影響が相俟って、この増加は継続する模様である。この年齢区分の女性の労働力率は、2015年に1975年の観測値28%を追い越し、2025年頃40%を超えた辺りで安定するが、男性の場合、一貫して上昇し、再び1970年代半ばの観測値に達する。

55歳から59歳の区分では、2010年の改革によって導入された退職年金制度の下限年齢の変更が、労働市場での行動を大きく変えると予想される。退職年齢が引き延ばされることにより、被用者と使用者の間には一層の雇用維持努力しようと駆り立てられる「水平線効果」(注1)があると考えられるからだ。この影響を想定したこの年齢区分の労働力率は、2010年には女性が61%と男性が69%だったものが、2060年には女性が77%、男性が80%となる。さらに、これまで非常に低かった65歳から69歳の労働力率も、主に2010年の退職年金改革の影響を受けて、女性が3.4%から13%へ、男性が5.5%から18%に上昇するものと予測されている。

出所

  • フランス国立経済統計研究所(Insee)、海外委託調査員

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