雇用情勢改善も農民工の約6割が依然出稼ぎ状態
―2010年労働統計

カテゴリー:統計

中国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2011年7月

人的資源社会保障部は5月24日、2010年の労働統計を発表した。2010年の失業率は前年より0.2ポイント低下した4.1%であった。一方、全国の農民工(農村労働者)の総数は2億4223万人であり、その約6割に当たる1億5335万人が出稼ぎ農民工(農村地域から出稼ぎをして働く農民労働者)であった。

失業者数はやや減少

リーマンショックにより雇用情勢は一時的に悪化したが、現在は改善傾向にある。2010年における都市部登録失業率(注1)は4.1%であり、都市部の登録失業者数は908万人であった(図1)。失業率はピークの2009年より0.2ポイント低下しており、失業者数も2009年より13万人減少している。一方全国の農民工の総数は2億4223万人であり、うち出稼ぎ農民工数は1億5335万人であった。

図1

出所:人的資源社会保障部

人材育成を広範囲で実施

現在中国では人材強国戦略(注2)を実施しており、技能の高い人材の育成に取り組んでいる。中国はリーマンショック以降も高い経済成長率を持続しており、優秀かつ高度な技能を有する人材の確保が必須課題となっている。その一環として重点が置かれているのが、帰国した留学生に対する支援策だ。中国では、海外の大学に留学した学生が中国に戻らず、そのまま留学先の国に留まり就労する事が問題となっている。留学生の帰国率は8090年代は4割程度で推移していたものの、ここ数年は25%前後で、4人に3人が中国に帰国しない。中国政府はその対策として、留学生が帰国して起業する際に税制優遇を行ったり、海外の大学で博士を取得し、かつ著名な業績を上げた者に対して研究費用を援助するなどの措置を図っている。その結果、2010年の帰国留学生の総数は13.5万人となり、前年比24.7%の上昇であった。また、高度な能力を持つポスドクの活用にも取り組んでいる。経営工学や材料学などの、研究成果を実際のビジネスに繋げるための研究を行うポスドク科学研究工作ステーションを2158カ所、数学や歴史などのアカデミックな内容を研究するポスドク科学研究流動ステーションは2146カ所設置している。2010年において両機関に招致したポスドク研究員は約1万人に上る。

また、上記のような高度人材向けの対策だけでなく、裾野の広い職業能力開発支援も行っている。農村部出身で中学、高校卒業後に進学しなかった若者に対する労働予備訓練には126万人が、農村から都市部への出稼ぎ労働者向けの技能研修には704万人が参加した。他方、都市部失業者向け技能研修には384万人が、登録求職大卒者向けの技能研修には40万人が、起業研修には119万人が、それぞれ参加した。また就業対策の一環である「三支一扶(教育支援、農業支援、医療支援、貧困援助)」(注3)事業に従事するため、大学・専門学校の卒業生3.3万人が農村部へと移動した。

賃金は引き続き上昇傾向

労働者の賃金は一貫して上昇傾向にある。2010年における都市部の非民間企業の年平均賃金は3万7147元であり、前年比13.5%の上昇であった(図2)。一方、都市部の民間企業の年平均賃金は2万0759元であり、前年比14.1%の上昇であった。最低賃金についても各省で引き上げが行われている。例えば広東省では、昨年最低賃金を22.8%引き上げたが、今年の3月にも再び18.6%引き上げており、賃金は引き続き上昇傾向にある。

図2

出所:中国統計局

労働争議はやや減少

中国では2008年に労働契約法と労働争議調停仲裁法が施行されて以後、労働争議の件数が大幅に増加したが、その後若干の減少傾向を示している。仲裁機関が有効に受理した労働争議は60.1万件で、前年比12.2%の減少となった(図3)。

労働保障主管機関が173万社に対して監査を行い、約38万件の賃金未払い等違反事案に処分を課した。これは前年比12.6%の減少である。また企業に対して502.1万人分、99.5億元の賃金未払いについての追加支給を命じた(図4)。賃金未払いの追加支給命令は、総額については増加しているものの、対象人数は減少傾向にある。

図3

出所:中国統計局・人的資源社会保障部の資料より作成

図4

出所:人的資源社会保障部

各統計データは、いずれも香港特別行政区、マカオ特別行政区及び台湾のデータを含まない

参考資料

  • 海外委託調査員 中国統計局 中国人的資源社会保障部

関連情報