金融危機で差別リスク高まる
―ILO「仕事における平等」報告

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2011年6月

国際労働機関(ILO)は5月16日、「仕事における平等:続く課題」と題する報告書を発表した。同報告書は6月1日から17日にかけてスイス・ジュネーブで開催する第100回総会の討議資料として使用される。それによると、差別を是正する法制度は継続的な発展が見られたものの、世界的な金融・社会危機が移民労働者など特定層に対する差別リスクを助長したとしている。

「差別」に焦点を当てて一連の措置を提案

1998年の総会で採択された「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」のフォローアップとして、ILOは毎年「結社の自由・団体交渉権の承認」、「強制労働の禁止」、「児童労働の撤廃」、「雇用・職業における差別の排除」の四つの労働基本権について調査した結果を順にまとめて発表し、総会の討議資料としている。

今回は「差別」に焦点を当てて、(1)平等と差別禁止に関するILO基本条約(第100号・第111号条約)の加盟国の批准・適用促進、(2)雇用・職業上の差別撤廃に関する啓蒙活動と情報共有、(3)効果的な差別禁止に向けた政労使の取り組み強化、(4)関連主要団体の国際連帯の強化、を優先分野として、差別撤廃に向けた一連の措置を提案している。

日本の男女所得差、30%超

日本の現状については、男女の平均所得差が大きい点を指摘している。図1は、フルタイム労働者の男女間の平均所得格差を示したものだが、日本は韓国に次いで30%と高く、OECD加盟国の平均(17.6%)を大きく上回っている。

図1.男女の平均所得差 (フルタイム労働者、2006年、%)

図1

出典:ILO報告書「仕事における平等:続く課題」(原典OECD Family Database 2010)

注:OECD加盟国全体の平均格差は17.6% 。

このほか、経済危機の影響で2008年11月から2009年3月にかけて障害を有する労働者の雇い止めが増加した点や、ILO第111号条約(雇用及び職業についての差別待遇に関する条約)が未批准である点も指摘。その一方で、日本が2010年6月30日に施行した改正育児・介護休業法(PDF:670.4 KB)については、子育て期の労働者支援や父親の育児参加促進の観点から、関連法の進展として好意的に評価している。

取り組みの維持・強化を加盟国に要請

報告書では総括として、不況期には差別を是正するための政策の優先度が引き下げられる傾向があると指摘。関連政策や監督業務に関する予算削減や差別是正に取り組む専門機関の資金削減は、仕事における差別の助長や不平等の拡大を抑制する機能を損なう危険性があると警告している。また、平等政策の効果を測るための基礎データも不十分であるとして、今後は信頼できる基礎データの充実化、人的資源の強化、関連予算の確保などを加盟各国に求めている。

参考資料

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