雇用情勢に好転の兆し
―失業者の減少傾向続く

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2011年6月

フランスにも雇用情勢改善の兆しがでてきた。INSEE(フランス国立統計経済研究所)が発表したところによると、第1四半期の失業率は9.2%(フランス本土)で、昨年第4四半期と比べて0.1ポイント低下した。また、政府が発表したカテゴリーAの求職者(無職状態で積極的な求職活動を義務づけられる)数も4カ月連続で減少を続けている。

若年者の失業が減少

フランス労働・雇用・保健省 (Ministère du Travail, de l'Emploi et de la Santé)の発表によると、4月末時点でのカテゴリーAの求職者(積極的に就職活動を行なっている求職者のうち、今年4月の1カ月間に就業活動を一切行なわなかった者、注1参照)数は266万9100人(フランス本土)で、前月末時点と比べて1万900人(0.4 %)減少した。カテゴリーAの求職者数は、今年に入って、4カ月連続で僅かずつではあるが減少を続けており、4カ月間で5万3400人の減少となった。同様に、カテゴリーA+B+Cの求職者 (積極的に就職活動を行っている求職者、就業時間は問わない)数も前月から6300人減少した403万9100人であった。このようにカテゴリーAとカテゴリーA+B+Cという2つの指標に同様の傾向が見られるのは、久しぶりのことである。

特に改善傾向が色濃く見られるのは若年層だ。カテゴリーAの求職者のうち25歳未満の求職者数は前月比0.6ポイント減少した42万3,700人となり、2009年初頭の水準にまで回復した。1年で7.1%の減少となっている。

こうした推移にグザヴィエ・ベルトラン労働・雇用・保健相は、「これらの状況は2008年初頭の水準であり、つまり経済危機以来の見るべき改善と言える。若年者雇用が好ましい傾向にあること、管理職の雇用が改善していること、超過勤務が増えていることなどを加味すると、危機の出口がはっきりと見えてきた」と喜びを抑えることなくコメントした。しかし雇用市場には一方で複数の懸念材料も存在しており、情勢の先行きは不透明と見る向きもある。

中高年、長期失業者数は増加

全体的な求職者数減少傾向の陰で、カテゴリーBの求職者(月78時間未満就労しており積極的な求職活動を義務づけられる者)数は増加しており、1カ月で0.9%、1年で5%増加して54万8100人に達した。これは失業予備軍が未だ市場内に存在することを示唆している。

2つ目の懸念材料は中高年の失業。50歳以上の失業者数は4月さらに増加して52万9100人になった。1カ月で0.7%、1年で12.9%の増加である。この増加は、2008年8月1日の法律で求職活動免除の適用が段階的に厳しくなったことが背景の一因にあるのではないかと見られている。政府の発表によると、昨年この求職活動免除措置の適用を受けた(そのため求職登録していない)失業者数は5万8700人であり、2009年と比較すると約4分の1減少、2008年と比較すると半減している。

3つ目の懸念材料は長期失業者である。長期失業者数は依然増加を続けている。今年4月、長期失業者(1年以上の失業者)数は前月比で0.1ポイント増加して153万2300人に達した。長期失業者が労働市場に戻るのは依然として容易なことではなさそうである。 

経済成長に期待も

政府は成長の回復が労働市場に良い影響を及ぼし、今後数カ月で失業の減少は確実なものになると期待している。2011年に成長が2%を超えるというOECDの予測も、このシナリオを後押ししているようだ。しかし、2009年6月1日から積極的連帯所得手当(RSA)の受益者に新たに課せられた求職義務の影響で、登録求職者数が大幅に増加する可能性も一部で指摘されている。経済成長が実現すれば、失業率のわずかな低下が可能になるであろうが、市場に残るいくつかの懸念材料は先行きの不安感を完全に払しょくするまでには至っていない。

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