若年失業率、金融危機前より改善
―非正規率4割に懸念の声も
連邦統計局によると、今年6月のドイツの若年失業率は9.1%で、EU諸国の中でオランダ(7.1%)、オーストリア(8.2%)に次いで3番目に低い水準だった。10.7%だった08年4月と比較すると1.6ポイント低下しており、金融危機前より改善したことも判明した。しかし、若年労働者の約4割は不安定な非正規職に就いており、労組からは懸念の声が上がっている。
他の年齢層より高い失業率
多くのEU諸国では、金融危機で雇用状況が急速に悪化したが、特に専門知識や経験に乏しい若年者がその影響を強く受け、他の年齢層より失業率が悪化した。
ドイツでも、若年者(15~24歳)の失業率(注1)が09年7月に11.5%まで悪化したが、政府はデュアル・システムや操短手当(注2)等を活用しながら、失業悪化の緩和に努めた。その後、ドイツ経済は外需に牽引される格好でいち早く景気が回復し、それとともに全体失業率が低下、若年失業の改善も進んだ。
しかし、多くのEU諸国では現在でも金融危機の影響が残っており、過去3年間でEUの平均若年失業率は15.1%から20.5%に上昇。こうした中、危機前より若年失業率が改善したのはドイツ(1.6ポイント改善)とルクセンブルク(3.3ポイント改善)の2カ国のみとなっている。
だが、この9.1%という若年失業率も、ドイツ就業者全体の失業率(6.1%)と比較すると1.5倍ほど高く、若年者は依然として労働市場で不利な立場に置かれていることが分かる。
多い非正規
統計局では若年失業が改善した理由として、景気回復によるフルタイム正規職の増加に加えて、パートタイム、派遣、有期などの非正規職が増加し、そうした職に就く若者が多かったためと分析している。非正規雇用は、正規と比較すると、賃金が低く、社内再訓練の機会も少ないなど高い雇用リスクを伴うが、2010年は若年労働者の36.8%が非正規として働いていた(主として学生をしている者は除外)。
このような現状について、労組(ドイツ労働総同盟)は「EUの中でドイツの若年失業率が低く、金融危機前より改善したのは、政労使が一体となって若年問題に取り組んできた証だ」と評価しつつも、若年労働者の4割弱が非正規という不安定な職に就いていることについて、「今後一層の教育訓練の機会と場を提供する必要がある」として、政府の対応を求めた。
注
- 連邦統計局の上記発表数値は、EU 労働力調査(EU-wide Labour Force Survey)を利用し、ILOの国際基準に準拠している。失業率はすべて季節調整値。
- 「デュアル・システム」とは、義務教育終了後に職業学校に通いながら主に企業内で職業訓練を受ける二元的制度のことで、「操短手当(操業短縮手当)」とは、事業主が操業短縮を行う際に、短縮に伴う賃金の目減り分を独連邦雇用エージェンシーが一部を補償する制度のこと。操短手当の補償額は子どもが1人以上いる場合、最大で賃金の67%、それ以外の労働者は60%が支給される。
参考資料
- Statistisches Bundesamt(Pressemitteilung Nr.293 vom 11.08.2011), eurostat(last modified on 31 August 2011), Deutsche Welle(08.07.2011), Deutscher Gewerkschaftsbund(Pressebereich 25.08.2011, 12.08.2011)
関連情報
- 海外労働情報(2010年8月)「世界の若者の失業、史上最悪―ILO報告」
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