UAW、1月から米国内の外国自動車工場の組織化に着手

カテゴリー:労使関係

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2011年1月

2010年12月22日付オートモーティブ・ニュース紙は、UAW(全米自動車労組)が米国内のアジア、欧州の自動車メーカー(トヨタ、本田、日産、現代、BMW、ベンツなど)の未組織工場の組織化に着手するとするボブ・キング会長のインタビュー記事を発表した。

UAWはGM、フォード、クライスラー3社と3年もしくは4年ごとに労働協約を結んでいる。この協約が11年9月に期限切れを迎えるため、新たに労働協約を結び直す。今回の外国自動車メーカーの組織化は、この労働協約改定交渉と歩調を合わせる。

UAWの経営協力姿勢表明と経営側への組織化協力要請

10年12月23日付のウォール・ストリート・ジャーナル、デトロイトに本社を置くデトロイト・フリープレス紙によれば、ボブ・キング会長は米国に工場を有する外国自動車メーカーの経営幹部宛に10年夏前に手紙を出した。

その内容は大きく2つに分かれている。

1つ目は、組織化の可否にかかわらず、UAWは生産性と品質の向上について従来と変わらない姿勢であること。

2つ目は、組織化のための運動や選挙活動、投票の場面で不正行為や干渉を行わないよう経営側に求めたことである。

これまでは、NLRA(全国労働関係法)が定める規則にしたがって、組織化のための運動や選挙が行われてきた。しかし、経営側による妨害や干渉について、労働組合側が事後に訴えることが後を絶たない。審議の結果によっては選挙のやり直しが行われる。

たとえ、選挙のやり直しが認められたとしても、選挙期間が長引けば経営側が組織化を防ぐために従業員を説得する時間が長くなり、ますます労働組合側に不利になると労働組合側は主張する。

今回は、経営側への手紙を通じて、労働組合側の姿勢を表明するとともに、経営側に信義則違反をしないように求めている。

NLRAを上回る基準や原則を成文化

これに加えて、UAWは信義則違反となる基準や労使が守るべき原則の成文化作業をすすめている。これらはNLRAの定める規則の範囲にとどまらない。

成文化後は、広く一般に公開して支持を集め、経営側が行う不正行為の抑止力となることを期待している。これは、事後的に対処していた従来までの方法を変えて、不正行為や干渉を防ぐために先手を打つ労働組合の新しい戦略である。

労働運動再活性化へむけて

UAWの組合員数は全盛期だった1970年代から半減している。しかも、この5年間だけでもおよそ20万人程度も減少し、現在39万人となっている。

米国内の外国自動車メーカー工場に対する組織化はことごとく失敗に終わってきた。これまでの組織化にはUAW組合員の労働条件を維持するために産業別組織を強化するという意味があった。

すでに産業別組織は弱体化している。UAWはGM、フォード、クライスラーといった組織化している企業の競争力を向上させるために、労働条件低下と現場での経営協力とを受け入れ、産業別のまとまりよりも、個別企業における協調関係を重視してきた。それにも関わらず、労働組合員数の減少も労働条件の低下にも歯止めがかかっていない。

今回の組織化宣言には2つの意味が込められている。一つには2011年のGM、フォード、クライスラーに対する労働協約改定交渉を有利に進める材料として。もう一つは、労働組合の再生としての意味である。UAWは2010年にボブ・キングが新会長に就任して以降、移民グループ、コミュニティグループなどと密接な交流を行っている。今回の組織化では、これらのグループを巻き込んだ運動となる。

ボブ・キングが会長に就任して、UAWはワーカーズ・センター(労働組合ではない労働者権利擁護組織)のなかで影響力の大きいROC(Restaurant Opportunities United)デトロイト支部が行ったイタリアンレストランの組織化運動に参加した。このような動きは会長が交代して初めて見られたことである。その一方で、生産性や品質の向上といった点で、経営側のパートナーであり続ける姿勢は崩していない。

これまでのように、GM、フォード、クライスラーの3社との交渉を有利に進めて労働条件向上を獲得することを目的としたものとは傾向が異なっていると言えるだろう。

参考

  • UAW's King says organizing at transplants begins in January, Automotive News, Dec.22, 2010
  • UAW to Target Foreign-Owned Car Plants in U.S, Wall Street Journal, Dec.23, 2010
  • UAW eyes Asian, German plants, Detroit Free Press, Dec.23, 2010

2011年1月 アメリカの記事一覧

関連情報