就業率75%・貧困層2000万人削減など新たな目標を設定
―新たな10カ年計画「Europe 2020」

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2010年6月

EU加盟国は6月17~18日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)で、雇用と成長に関する今後10年の政策方針を定めた「Europe 2020」に合意した。「知的、持続可能かつ包摂的な成長」をスローガンに、就業率75%の達成を始め、教育水準の向上、貧困層の削減、研究開発投資の促進、環境への配慮に関する数値目標を掲げている。

新たな政策方針は、2000年に初めて導入された10カ年の政策方針である「リスボン戦略」を引き継ぐものだ。欧州委員会は、関係者を含む一般からの意見聴取などを経て、今年3月3日に原案を発表、大枠では加盟国の合意を得ていたが、具体的な数値目標の設定などをめぐり、加盟国の間で意見の食い違いが生じていた。

現地メディアの報道によれば、最も加盟国の立場が分かれたのは貧困層の削減に関する数値目標だ。欧州委員会の当初案は、各国における可処分所得の中央値の6割を下回る所得層を貧困層として定義、EU全体で2000万人の削減を目標としていたが、ルーマニアなど旧東欧諸国がこれに難色を示していた。今回合意された内容は、こうした意見に配慮して貧困層の定義を柔軟化、新たに物的欠乏、就業者のいない家庭(jobless household)の二つの指標を追加して、各国が自国に適したものを選択することを認めた。また、教育水準の向上に関しても、加盟各国が独自に政策を実施すべき領域であるとの配慮から、各国の状況に合わせた指標・手法を設定することができるとしている。

最終的に合意された5点は以下のとおり。

  1. 若者・高齢者・非熟練労働者の労働市場への参加、合法的移民の統合の促進などにより、男女の20~64歳層の就業率を75%に引き上げる(現在は69%)
  2. 官民による研究開発投資と技術革新にGDPの3%相当を充てる(欧州委員会は、これに関する指標を開発する)
  3. 温室効果ガスの排出量を対1990年比で20%削減、エネルギー消費にしめる再生可能エネルギーの比率ならびにエネルギー効率を20%引き上げる
  4. 学校教育中退者を10%未満に抑制(現在は15%)と、30~34歳層の高等教育終了率を40%(同31%)まで引き上げる
  5. 社会的包摂を促進、貧困層を2000万人削減する

参考資料

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