雇用創出、5年ぶりにマイナスへ
―労働部5兆4000億ウォン規模の雇用対策を発表

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2009年2月

金融危機の影響による雇用情勢の一層の悪化が懸念される中、労働部はこのほど2009年の事業運営計画において、企業に対する雇用維持支援や失業者対策を柱とする総額5兆4000億ウォンに上る雇用対策の実施を盛り込んだことを発表した。

「雇用創出」の政府目標、達成できず

統計庁が発表した2008年12月の「経済活動人口調査」では、対前年比の就業者数の増減で示す「雇用創出」が2003年10月以来の約5年ぶりとなるマイナス(1.2万人減)となった。2008年の雇用創出数は第1四半期に20万人台で推移したものの、第2四半期からは10万人台に減少し、10月は9.7万人、11月は7.7万人と10万人を割り込み、ついに12月は1.2万人の減少となった(表1参照)。また、12月の失業率は3.3%(前年同月比0.2ポイント上昇)、失業者数は78.7万人と前年同月比5.1万人増となった。なお、失業者の前年同月比の増加数はすべて男性失業者となっている。なお、同調査結果で併せて公表された2008年の年間「雇用創出」数は14.5万人となり、政府目標として掲げた年間20万人の雇用創出を達成できなかったことが判明した。

近年低迷を続ける韓国経済にさらなる追い打ちをかけたのが昨年発生した金融危機であるが、その影響がまさに具体的な数字を伴って表れてきた形である。

表1 2008年の雇用失業情勢(万人)
  1~3月 4~6月 7~9月 10月 11月 12月
就業者数
(対前年比%)
2,305.1
(0.9)
2,387.1
(0.7)
2,375.2
(0.6)
2,384.7
(0.4)
2,381.6
(0.3)
2324.5
(-0.1)
雇用創出数 21.0 17.3 14.2 9.7 7.8 -1.2
失業率
(対前年比ポイント)
3.4%
(-0.2)
3.1%
(0.1)
3.1%
(0.0)
3.0%
(0.0)
3.1%
(0.1)
3.3%
(0.2)
失業者数
(対前年比%)
80.1
(-5.9)
76.7
(-3.0)
75.2
(-0.5)
73.6
(0.4)
75.0
(2.3)
78.7
(6.9)

出所:統計庁

就業者の内訳では、賃金労働者が前年同月比8.5万人増(0.5%増)であるのに対し、非賃金労働者数(自営業者、無賃金家族従業員など)は同9.8万人減(1.4%減)となっている。さらに賃金労働者の内訳をみると、正規労働者数が同31.8万人増(3.6%増)であるに対し、非正規労働者(日雇除く)は同9.4万人減(1.8%減)、日雇労働者は同13.8万人減(6.3%減)と、対照的な動きとなった。
こうした就業者の状況変化の背景には、非正規労働者保護法に基づき非正規労働者の一部に正社員化が進む一方で、非正規労働者の雇用調整も進んでいることがあげられる。また、非賃金就業者数の減少の背景には、景気悪化のため自営業者の廃業も加速していることが指摘される。

賃金助成や失業手当支給期間の延長

今後も雇用情勢の悪化に一層拍車がかかることが懸念されるため、政府は先に公共投資を中心とした約14兆ウォンに上る緊急経済対策の実施を発表したが、今般、労働部は2009年の事業運営計画において、総額5兆4000億ウォンに達する積極的な雇用対策を実施していくことを明らかにした。

今回具体的に示された雇用対策は、以下を内容とする雇用安定対策、失業者支援強化が柱となっている。

  1. 企業における雇用維持支援
    • 事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者の解雇をすることなく、雇用維持に努める場合支給される賃金助成金の助成率の引き上げ(中小企業:2/3 →3/4、大企業:1/2→ 2/3)。
    • 職業訓練を実施する事業主に対する支援拡充(対象14万社)。
  2. 失業者対策
    • 就職や生活の困難に応じた失業手当支給期間の延長措置(対象121万人)。そのほか、失業者の職業訓練の拡充(9万人→15万人)。2009年上半期に雇用情勢がさらに悪化した場合には、「非常事態対応策(contingent plan)」として失業給付期間の2ヵ月延長措置。
    • 失業保険の適用を受けない失業状態の貧困層に対しては、職業カウンセリング→就業意欲・能力の向上→職業紹介からなる「特別支援プログラム」を実施。このプログラムにより就職した場合1人あたり100万ウォンの奨励金支給。(対象1万人)。
    • 中小自営業者への失業保険の適用を検討。

これらのほか、特に非正規労働者関連では、正規化前の解雇が増加していることから、現在の正規化前2年間の期間延長や現在32業種に限定されている派遣業種の拡充などの法改正のほか、非正規労働者を正規雇用化した中小企業に対する支援措置や非正規労働者が在職しながら高度な職業訓練を受けられるなどの施策を実施していくとしている。

資料出所

  • 統計庁Web、NNA関連記事等

参考レート

  • 100韓国ウォン(KRW)=6.70円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年2月9日現在)

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