東欧からの移民労働者の流入、最低水準に減少

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  • 国別労働トピック:2008年9月

内務省は8月、東欧諸国からの移民労働者を対象とした「労働者登録制度」の申請件数が、四半期ベースで2004年以降最低の水準に落ち込んだことを明らかにした。このところの景気停滞に伴う求人の減少などに加え、東欧諸国で好況が続き雇用状況や賃金水準が改善していることが影響しているとみられる。

国内の雇用減少が影響か

「労働者登録制度」は、2004年からの新規EU加盟国であるポーランドやチェコなど8カ国(A8)からの単純労働者を対象に実施されている管理制度。2004年の実施以降、毎年20万人強(四半期ベースでは5~6万人)、累計で88万人の労働者を受け入れてきたが、2007年の第3四半期から申請件数が減少傾向にあった。内務省が公表した4~6月期の申請件数は4万件(うち実際の承認数は3万8000件)で、前年同期比で1万4000件、また1~3月からは9000件の減。また、2007年からのEU加盟国であるルーマニアとブルガリアについては、EU域外からの労働者と同様の労働許可制度(Work Permit System)を基本とする限定的な受け入れを実施しているが、申請件数はやはり2007年以降で最低レベルにある。

大きな原因は、イギリス国内の景気停滞による雇用の低迷とみられる。国内の求人数は、今年3月の68万7300件をピークに、7月には63万4900件と前年3月を下回る水準に急速に落ち込んでおり、大方の見方では、この状況は少なくとも今年中は続くとみられている。加えて、A8からの労働者の多くを占めるポーランドなどで、高い経済成長を背景に雇用状況や賃金水準が改善していること、さらには、このところのポンド安と高インフレがイギリスで得られる収入の実質的な価値を低めている点などが、東欧諸国の労働者の流入を鈍化させているといわれる。

現在、国内で就業している東欧からの労働者の数は必ずしも明らかではないが、民間シンクタンクのIPPRが今年初めに公表した報告書によれば、2004年以降に東欧の新規EU加盟国から流入した100万人のうち、約半数の50万人は既に帰国したとみられる。短期の就業を前提とした移民が多数を占めるためだ(本ウェブサイト6月の記事参照)。

有識者の間には、今後減少が危惧される移民労働者に対する企業の需要は依然として大きいことから獲得競争が激しくなるとの見方や、社会の多様性を高めるといった観点から政府は移民労働者の受け入れ・定着に向けて努力すべきとの意見などもみられる。一方で、景気拡大期には人手不足の解消に貢献し、停滞期には失業者として滞留することなくイギリスを離れる、いわば労働需要の増減に柔軟に応える移民労働者を歓迎する論調もある。

参考

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