大統領、持論を欧州条約に提案
―選択的移民政策が重点
不法移民を徹底的に排除し、フランスの経済・社会的発展への貢献度が高い移民のみを受け入れる「選択的移民政策への転換」と、移民の「社会統合の促進」を一貫して主張してきたサルコジ大統領は、これを「移民及び亡命に関するヨーロッパ条約」というかたちで、欧州諸国全体に広めたいとし、その条約案を発表した。
条約の前文では、「ヨーロッパは人口的にも経済的にも移民を必要としている。しかし、ヨーロッパの受け入れる能力に限界があることも事実である。移民フローは必然的に、労働市場や居住環境、医療サービスや教育・社会サービスの面からみても、ヨーロッパの受け入れ能力に見合ったものでなければならない」とし、移民及び亡命に関するEU加盟国の相互依存関係の必要性を強調している。
条約は、EU加盟27カ国に対して、(1)ヨーロッパをよりよく守るために団結し、国境の警備に努める、(2)各国の事情を考慮した上で、その受け入れ能力に見合った方法で合法的移民を受け入れる、(3)不法滞在者の国外退去を保障する、(4)2010年までに亡命に関する共通の保障事項を設け、亡命者としての身分も単一化する、(5)移民送りだし国の開発支援及び共同開発の促進――の5つの目的の達成を求めるものだ。
さらに上記の5つの目的を達成するためにEU加盟国は、(1)2011年から指紋認証ビザのみとする、(2)「選択的及び協議された移民」を優先するために、既に入国・滞在している非合法移民の身分の大量正規化は行わない、(3)新規移民には、その国の言語やアイデンティティ、ヨーロッパ的価値観の習得などを約束する「社会参入契約」に署名させる、(4)不法滞在者の国外退去を徹底し、不法滞在者を雇用する雇用主や住まいを提供する不動産屋の罰則規定を強化する、(5)今から5年以内に亡命申請の共通基準に関して協議する、(6)移民の出身国の発展なしには、移民問題は解決できないという共通認識に立つ――など、具体的な政策案も提案している。
こうした政策案は、サルコジ大統領が内務相時代から一貫して主張してきた移民政策をそのまま反映しているといっても過言ではない。03年に不法労働の取り締まりの強化に重きをおいた法律を成立させ、06年の移民法改正では10年以上の滞在を証明できる不法滞在者への正規滞在許可の自動交付を廃止し、家族呼び寄せの権利については制限を強め、フランス人との婚姻に基づく滞在許可申請についても条件を厳格化した。07年にはさらに家族呼び寄せの条件を厳格化する移民法改正を行っている。
移民の社会統合については、07年の移民法改正で、新規移民全員に「受け入れ・統合契約(CAI)」を義務化した。これは移民とフランス共和国で交わされる契約であり、移民はフランス語や市民講座に出席することを約束し、それに対して国家は就職や生活・教育等に関する情報の提供や支援を保障するというものである。
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