OECD・TUAC、金融危機で公開状
―G7会合に向け

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2008年11月

OECD労働組合諮問委員会(OECD・TUAC)は10月8日、国際労連(ITUC)、欧州労連(ETUC)との連名で、10月10日開催のG7財務相中央銀行総裁会合に向けた提言を盛り込んだ公開状を公表した。公開状は、「ここ20年間の金融革新によってグローバル経済は窮地に追い詰められている」と批判。そのうえで、世界資本市場を安定化し、世界的景気低迷のリスクを回避し、ディーセントワークを生み出すための復興計画に着手する必要があると訴えた。以下に、その骨子を紹介する。

金融分野の規制緩和を批判

ここ20年間G7や国際金融機関が規制緩和による「新たな金融構造」を推進してきたが、金融革新の行きついた先が、信用度の低い担保に基づく複雑な金融商品を生み出した結果の金融システムの破綻だった。米国初のサブプライムローン危機が引き金になり、膨大な社会・経済コストを伴う世界金融危機を招いた。

アメリカでは金融不安の影響が実体経済に波及しはじめ、雇用が大きく落ち込み、世界的な景気低迷に拡大しつつある。G7財務相・中銀総裁はG7諸国その他の諸国の実体経済を活性化するための協調的な回復計画を実施しなければならない。具体的には、さらなる協調利下げ、インフラ投資、代替エネルギー開発や省エネを通じた「グリーン・ジョブ」の創出措置、中・低所得者の購買力を維持するための減税や支出措置――などを講じる必要がある。

新たなシステムの構築提唱

こうした緊急措置に加え、G7諸国政府は協調して、大規模な危機が二度と起こらないよう、銀行のみならずヘッジファンドやプライヴェートエクイティなどにとどまらず金融制度全体をカバーする新たな規制体制の再構築に向けて取り組まなければならない。経営幹部の報酬には上限が必要だ。経営人の報酬やインセンティブが、実体経済の利益にリンクし、かつ全体として従業員との合理的なバランスのとれたものになるよう見直さなければならない。端的に言えば、新たな規制構造は、金融体制が実体経済に資することを保証するものでなければならないということだ。

会議の公開と労組の関与求める

規制アービトレージ(ある国の規制が厳しい場合、グローバルな金融機関等がより規制が緩い国に移動することで規制を回避すること)を防ぐには、G7、G8、欧州、EU、OECDや国際金融機関などあらゆるレベルでの協調が必要だ。G8の緊急復興計画の詳細を策定する前に、G8首脳と労働相および財務相との会議を設けるべきだ。労働組合はこうしたフォーラでの関与を要求する。労働者は銀行や政府による非公開の会議をあまり信用していない。これを契機に、完全な透明性、情報開示、協議が行われるよう是正すべきだ。グローバルユニオンはこのプロセスに関与する準備がある。

出所

2008年11月 OECDの記事一覧

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