労働部、若年者のための雇用促進プログラムを発表

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2008年10月

韓国労働部はこのほど、若年者を重点にした雇用改善を目的とした特別プログラムを発表した。その目的は近年の景気低迷により就職活動に大きな打撃を受け、厳しい求職活動を強いられている者や長期失業状態にある若年者の雇用促進にあると述べている。また、若年者の雇用問題の根本的な解決を図るためには、中長期的に学校教育の改革と経済産業構造の高度化を進めていく必要があるため、それら関連の対策も盛り込まれたものとなっている。

韓国の雇用情勢は物価高と景気減速の進展を受け依然厳しい状況が続いている。李大統領が重要な政策指標の一つとして掲げる「雇用創出」も就任当初の目標である50万人からその後35万人に、7月には20万人とさらに下方修正された。雇用創出数を最近の数値でみると、6月は14.7万人(前年比0.6ポイント上昇)、7月15.3万人(同0.6ポイント上昇)、8月15.9万人(同0.7ポイント上昇)とわずかずつだが増加傾向にあるものの年間目標20万人をかなり下回る状況で推移している。李大統領が特に注力することを公約した若年者(15~29歳)の雇用問題については、状況はさらに厳しく改善の見込みは立っていない。表1のとおり、若年者の失業率は6月7.8%、7月7.4%、8月7.1%と見かけは低下しているが、対前年比でみるとそれぞれ0.6ポイント上昇、0.2ポイント低下、0.4ポイント上昇となっている。さらに先にあげた雇用創出の状況でみると、表2のとおり、年齢全体では前年を上回る基調で推移しているのに対し、若年層は前年を下回る状況にあり「雇用喪失」状態が続いている。これは若年者の雇用情勢が厳しいため、これが好転するまで求職活動をやめる者や学業を継続する者など労働市場から「撤退」する者が増加していることをあらわしているとみられる。実際、表3のとおり労働力率の状況をみると、年齢全体でも低下傾向にあるが、若年層ではそれが顕著にあらわれている。なお、現在失業中や就職準備中の若年者の数は100万人に上るとみられている。

表1:失業率の推移(単位:%)
  2007 2008
6月 7月 8月
3.6 3.2 3.1 3.0 3.4 3.1 3.1 3.1 3.1
  対前年差(ポイント) -0.3 -0.2 -0.2 -0.2 -0.2 -0.1 -0.1 -0.1 0.0
15~29歳 7.6 7.3 7.1 7.0 7.3 7.4 7.8 7.4 7.1
  対前年差(ポイント) -0.8 -0.4 -0.4 -0.8 -0.3 0.1 0.6 -0.2 0.4

表2:就業者数の推移 (単位:千人)
  2007 2008
6月 7月 8月
22,841 23,698 23,610 23,582 23,051 23,871 23,963 23,903 23,617
  対前年差(ポイント) 1.2 1.2 1.3 1.2 0.9 0.7 0.6 0.6 0.7
15~29歳 4,237 4,204 4,218 4,150 4,130 4,117 4,106 4,202 4,091
  対前年差(ポイント) -2.1 -1.6 -1.4 -1.2 -2.5 -2.1 -2.7 -3.2 -2.8

表3:労働力率の推移(単位:%)
  2007 2008
6月 7月 8月
60.8 62.6 62.1 61.8 60.5 62.3 62.5 62.3 61.5
  対前年差(ポイント) -0.1 0.1 0.0 -0.1 -0.3 -0.3 -0.3 -0.3 -0.2
15~29歳 46.5 46.0 46.0 45.3 45.3 45.3 45.4 46.2 44.9
  対前年差(ポイント) -1.5 -1.0 -1.0 -1.0 -1.2 -0.7 -0.7 -1.4 -0.9

出所:表1~3の数値はいずれも韓国統計庁の資料からのもの。

こうした状況の改善を目指して、韓国労働部が発表した特別対策の概要は以下のとおりである。

1.若年者向けの雇用創出支援

  1. 若年者起業支援

    若年者が起業した高い成長性を有する事業に対する政府の債務保証を2008年下半期の全体1000億ウォンから2009年に3000億ウォンへ引き上げ。

  2. 中小企業インターンシップの拡充

    中小企業がインターンシップにより若年者を雇用する場合、その賃金の50%を6ヵ月間助成。さらにインターンシップにより雇用された若年者が正規雇用になった場合、助成をさらに6ヵ月延長。これにより2009年中に約5000人の雇用創出を目標とする。

2.産業需要にマッチした労働力の養成

  1. 韓国流「マイスター」養成機関の充実

    産業の発展に必須となる熟練工の養成機関を2008年の20か所から2010年に50か所へ拡充。これら養成機関は企業や地方自治体及び学校などと連携を密にし運営されるものとする。なお在学中の学生は、徴兵を延期するなどの措置が講じられる。

  2. 若年指導者の養成

    将来の基幹産業となる成長性及び雇用創出力のある業種(IT、環境、カルチャア、高度医療など)において、リーダーとなる若年者を今後10万人養成。

  3. 職業訓練と雇用のワンストップサポート

    各産業レベルにおいて、当該経営者団体がその産業のニーズに合い、かつ雇用につながるような職業訓練の実施を支援。また、各産業や地域で不足している技能労働者を養成していくため、政府は産業及び地域ごとの職業訓練コンテストを実施。

3.若年者雇用のためのインフラ整備によるミスマッチの解消

  1. 就職困難な若年者のための雇用促進

    低学歴や無技能、長期失業状態などの就職困難な若年者向けに1年間の集中的な職業指導を実施。その内容は個別カウンセリング→職業訓練・職業経験→職業紹介を一連のプログラムとし、2009年に1万人、その後2万人のプログラム実施を計画。

  2. 求人情報などの雇用情報提供システムの強化

    様々な職業分野についての雇用情報を入手し易くした「雇用情報ポータルサイト」を構築。

  3. 総合的職業経験センターの運営

    若年者が様々な職業を総合的に体験できる施設「ジョブワールド」(2011年に完成予定)の年間利用120万人(100万人は小学生、20万人は中高生)を目標。

さらに、これらのほか、中長期的課題への対応として、産業ごとの雇用対策の実施や、供給サイドである教育機関(特に大学等)の統廃合を行っていく。また、公共サービスの民間委託の推進や有料職業紹介部門の規制緩和などによる、民間部門の職業紹介サービスの活性化を行う。

出所

  • 韓国労働部Web、韓国統計庁Web

参考レート

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