建設労組による未組織労働者からの管理費徴収問題

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2007年3月

2007年2月13日、欧州人権裁判所は建設労組による未組織労働者からの管理費徴収問題に関してスウェーデンの建設労働者の訴えを指示する判決をくだした。

スウェーデンの建設業では労働協約に基づいて、労働組合は労働者から管理費として賃金の1.5%を徴収している。経営者は労働者の賃金から相当する額をチェックオフしている。これは、組合に加盟している労働者のみならず、未組織の労働者に関しても同様の措置がとられてきた。この件に関して、未組織労働者の5人が不当であると訴えた。

事の発端は1999年まで遡る。5人のスウェーデン建設労働者が労働組合に加入していないにもかかわらず管理費が天引きされることに異を唱え、裁判所に提訴した。スウェーデン国内の三者構成による労働裁判所は、全国団体協約に基づいて徴収されている管理費は、組織労働者であろうと未組織労働者であろうと等しく徴収されるべきものと判断した。さらに、欧州司法裁判所でも争われ、その結果もスウェーデン国内の判決に沿うものであった。

ところで、徴収されている「管理費」に関しては、その使途についての疑義が生じている。本来の目的では賃金管理、すなわち、各企業において適正な賃金が支払われることを保障するために使われるものとされている。だが、ある調査によれば実際には他の一般的な目的や政治活動のためにも使われているという。

今回の欧州人権裁判所の判断は、原告側である未組織労働者の勝訴であった。それぞれの労働者に5000ユーロを支払うこと及び、裁判に要した8万7000ユーロを支払うように命じている。ただ、組合による管理費徴収自体を否定するものではない。管理費の使途を明確にする説明責任が組合側にはあるという判決である。

5人の労働者は建設経営者連盟(BI)によって支援されている。判決を受けて、BIの法務アドバイザーは建設業界として組合への管理費のチェックオフを中止すべきであると言明した。だが、BI自身は、現在、次期賃金交渉の過程にあることを踏まえ、この問題を妥結後に議論するべき課題であるとしている。

参考

  • Christian Brat (2007), ”Report for JILPT on Sweden―February 2007”
  • Birger Viklund (2007)”JILPT February Report 2007”
  • The Local, Sweden’s News in English, 13 February 2007

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