特別経済区で雇用拡大も貧困層は改善されず

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2007年2月

最近のインドの経済成長はきわめて堅調で、毎年5%以上の成長を記録している。中でも特別経済区(SEZ:Special Economic Zone)(注1)の開設は工業部門での雇用拡大に大きく寄与してきた。

経済特別区とは、外資の100%出資が認められ、資本財・原材料の調達に関して、輸入の場合は輸入関税、国内調達の場合は物品税が免除されるという優遇措置が適用されるという制度で2000年11月に開始された。(注2)

同制度は経済発展に成功した中国の沿岸地域の経済特別区をモデルにしており、いずれも余剰労働力の多いところに計画され、マンモハン・シン首相も工業部門での雇用拡大が特に必要であるとして、経済特別区での雇用拡大に大きな期待を寄せている。

しかし特別経済区での雇用拡大にもかかわらず、貧困層は経済成長の恩恵から取り残されているとアルプ・ミトラ(デリー大学教授)は指摘する。全国標本調査機構(National Sample Survey Organization: NSSO)の調査によると、1999-00年期から2004-05年期の雇用成長率は大きく上昇(年率3%弱)しているにもかかわらず、貧困率の低下の度合いは大きく鈍化している。このことから、SEZでの雇用の拡大も貧困層ではなく教育を受けた労働者層のために創出されたものだといえ、格差拡大をもたらす要因となっている。(注3)

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